瀧口 修造 を起点に、戦間期1938年に瀧口と共に「前衛写真協会」を立ち上げた 阿部 展也、 瀧口や阿部に影響を受け戦後に瀧口が名付け親となった「実験工房」へ参加した 大辻 清司、 その、大辻の桑沢デザイン研究所での弟子 牛腸 茂雄 と、 4代に亘る師弟繋がりで20世紀日本の前衛的な写真表現の歩みを追う展覧会です。 4人を通して一貫するようなスタイルが感じられた程ではなく、 むしろ、抽象的で造形を重視した最初の3人の作風と、日常を捉えた 牛腸 の作風に、不連続面というか流れの変化を感じました。 しかし、最初の3人においても、阿部 展也 が満洲で撮った写真や、大辻の1970年代の「大辻清司写真実験室」を大きく取り上げ、 むしろ、前衛的な作風で知られる写真家も、孤高ではなく、その時々の時代の空気を呼吸していた人であったことが浮かび上がります。 結果として、師弟関係で連なる4人の写真家を通して、20世紀写真史の一面を辿るかのようでした。
「前衛写真協会」を含む戦間期前衛写真の展覧会『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』 (東京都写真美術館, 2022) [鑑賞メモ] や 『現代への扉 実験工房展 戦後芸術を切り拓く』 (神奈川県立近代美術館 鎌倉・鎌倉別館, 2013) [鑑賞メモ]、 『大辻 清司 の写真 —— 出会いとコラボレーション』 (松濤美術館, 2007) [鑑賞メモ] など、 戦間期前衛から実験工房、大辻 清司 にかけてはそれなりに好きで、関連する展覧会はそれなりに観てきていますが、 牛腸 茂雄 らのコンポラ写真はスボっと抜けてあまり観てこなかったと、反省させられた写真展でもありました。
同じ階の展示室続きで 『実験工房の造形』 という千葉市美術館のコレクションに基づく企画展も開催されていました。 点数も多くなく参考展示という感もありましたが、 平面作品ながら 福島 秀子 [関連する鑑賞メモ] の作品を数点見られたのは収穫。 この展示もあったせいか『「前衛」写真の精神』の企画のアクセントも実験工房の2人、瀧口と大辻に置かれていたように感じられました。