最近、このサイトの更新が滞っていたわけですが、その一因が、 8月5日から21日にかけて繰り広げられた リオ五輪 (Rio 2016 Olympic Games)。 家にTVも無く観まくっていた程ではなく、NHKオンデマンドで後追いながら少しずつ観ていました。 それでも、趣味への可処分時間が短くなっている分だけ、影響大。
開会式の演出は映画監督 Fernando Meirelles が手がけていましたが、 ダンスの振付が Deborah Colker [鑑賞メモ] という興味もあって観ました。 アフリカ系の人がブラジルへやってくる所を描いた場面のホイールなど Colker らしかったでしょうか。 中盤の音楽ショーとなる直前、パルクールやフリークライミングを使った場面がが気に入ったのですが、あそこは Colker が振付たのでしょうか? ハードコアなものというよりポップ寄りのものでしたが、音楽に Baile Funk や Hip Hop が使われいたのも印象的。 入場行進後に Caetano Veloso e Gilbert Gil が登場したわけですが、 一緒登場した女性歌手は Anitta という若いポップの女性歌手。 これが Gal Costa や Maria Bethania だったら、などと思ってしまいました。 ちなみに、公式サイトに開会式に出演したミュージシャンを紹介する記事 Brazilianize your playlist with seven new sounds from South America's hottest music scene が載っています。
観戦スポーツの中で特に好きという程でもないですが、ダンスやサーカスを観るのが好きなだけに、 やはり、体操競技 (体操、新体操、トランポリン) や水泳の飛込競技やシンクロナイズドスイミングはつい観てしまいます。 シンクロナイズドスイミングは、競技としての結果は別として、 “Sweet Dreams (Are Made Of This)” のカバー曲 (オリジナルは Eurythmics の曲) で演技したイタリアのデュオのフリールーティンが最も気にいりました。 グループのフリールーティンも、アップテンポなハイテンションの音楽での演技が多い中、イタリアとウクライナの演技が変化もあって楽しめました。
新体操の団体はシンクロナイズドスイミングよりも音楽使いが面白く、どれも楽しめました。 特に、ロシアのフープ・クラブ は、Prélude à “L'après-midi d'un faune” な出だしから、 前半は Le sacre du printemps。 後半に使われた音楽は判りませんでしたが、テーマは Ballets Russes だったのでしょうか? ウクライナのフープ・クラブは、Madonna: “Vogue” を音楽に使って、まさに Vogueing な動きを取り入れた演技をしたのが面白かったですね。 この二つほどじゃなかったけど、イタリアとスペインの演技も、好みでした。 こういうのを観るとシンクロナイズドスイミングやフィギュアスケートの音楽使いは新体操に比べて保守的に感じますが、 今後、シンクロナイズドスイミングやフィギュアスケートでも Le sacre du printemps で泳ぐ/滑る演技も出てくるのかもしれません。
そういえば、今回はオンデマンドには馬術競技が上がっていなかったような。けっこう好きなのですが。 あまり多くは観られなかったものの球技や陸上競技、格闘技とかも楽しんで観ましたが、 普段の談話室の話題から大きく外れますし、リオ五輪の話はこのくらいにしておきましょう。
先週末、2016 NHK杯国際フィギュアスケート競技会 が開催されていました。 そのTV中継をNHKオンデマンドに載ったのがふと目に入ったので、夕食したりしながら観ていました。 さすがに全ては観ていませんが。 家にTVが無くなってからすっかり観なくなっていたので、久しぶりです。 選手が大きく入れ替わって、知らない選手がほとんど。逆に新鮮に観ることができました。
今年夏のリオ五輪の新体操団体では [関連発言]、 Le sacre du printemps などを使った Ballets Russes テーマの演技や、 Madonna: “Vogue” を音楽に使って Vogueing な動きを取り入れた演技がありました。 それに比べると、自分が観た範囲では、全体として選曲や演出が保守的に感じられました。
そんな中で目に止まったのが、女子シングル、ロシアの Мария Сотскова [Maria Sotskova]。 ショートプログラム (SP) [YouTube]、 フリースケーティング (FS) [YouTube] 共に 音楽に Альфред Шнитке [Alfred Schnittke] の曲を使ってました。 特に SP の中盤では Concerto Grosso No. 1 (1977) が使われ、 歪みながら切り裂くような Gidon Kremer の (ものと思われる) violin の音が飛び交うなかを滑るという。 背丈があり首手足の長い Сотскова はなめらかで優美な動きも映えて、 Шнитке の音楽を使ってることを忘れさせるほどエレガントな演技になっていました。 また、同じ作曲家を使っていることからもわかるようにSPとFSで2幕物で、 第1幕が蛹からの羽化、第2幕が蝶として舞うという構成になっています。 Шнитке の音楽を使いこなし2幕物として演じることができるだけの表現力のあるスケーターだと、とても気に入ってしまいました。
しかし、ソ連時代は反体制派として迫害されていた Шнитке の曲で、 ЦСКА Москва (モスクワ中央陸軍スポーツクラブ、ex-赤軍スポーツクラブ) 所属のスケーターが滑る、 というのは感慨深いものがあります。ソ連時代は遠くになりにけり、ということでしょうか。
彼女の以前はどんな演技をしていたのだろう、と過去の映像を見てみたのですが、 去年のFS [YouTube] は Sergei Prokofiev のバレエ音楽 Romeo and Juliet で滑ったんですね。 それも、コーチではなく本人のアイデアで、「ずっと Romeo and Juliet で滑るのが夢だった」と インタビューで言っていたという話しも目にします [関連ツイート]。 バレエの素養もかなりあるんでしょうか。 エレガントな彼女の動きであれば Romeo and Juliet ではなく 19世紀ロマンチックなバレエ音楽で演技しても様になりそうです。 ちなみに、SP [YouTube] の音楽は、 Santana の “Black Magic Woman” (オリジナルは Fleetwood Mac)。 フィギュアスケートではあまり使われてこなかったような曲で、 前半はまだしも後半は曲がスピードアップして、合わせづらそうな曲をよく選んだなあ、と。 さらにその前、2013-14年のFS [YouTube] では、 映画 Pina [レビュー] のサントラを使っていました。 といっても、Pina Bausch Tanztheater Wuppertal のダンスのようにスケーティングしたわけではないですが。 やっぱり、Pina Bausch のダンスも好きだったりするのかな、と。
女子シングルに Мария Сотскова というお気に入りとなるスケーターを見つけることができましたが、 種目としてはやはりアイスダンスが好きです。 ジャンプやスピンで派手な大技があるわけではないですが、 20〜30歳代のスケーターが中心で、他の種目より表現力が感じられ、大人の美しさやユーモアが楽しめるように思います。 ペアによって持ち味の方向性が違い比較し難く、 Gabriella Papadakis - Guillaume Cizeron の美しいダンスなども好きですが、 特に、マイムも駆使してストーリー性の高い演技をするイタリアの Anna Cappellini - Luca Lanotte 組は素晴らしいです。 ほぼ道化芝居なエキシビジョン (EX) の “Tango Lesson” [YouTube] も好きですが、 フリーダンス (FD) [YouTube] が素晴らしい。 “Charlie Chaplin Medley” ということで、 音楽は Limelight (1952) のものがメインでしたが、 キャラクターとストーリーはサウンド版として作られたサイレント期の名作 City Lights (1931) に基づくプログラム。 単にコミカルなだけでなく、元の Chaplin の映画にあったロマンチックな要素や切なさまで表現していました。 2人がキャラクタを演じきっていたというだけでなく、 いかにも目が見えないという演技でではなく、前半の要所での視線の合わなさで目が見えないということを演出していました。 このような演技をエキシビジョンではなく競技でできるというのも、素晴らしいです。
競争が激しく観戦チケットを取るのが難しいと言われるフィギュアスケートですが、 アイスダンスの時の観客席には空席が目立ちました。 TVでもあまり放送されませんし、人気が無いのでしょうが、もったいないものです。 そんな人気の無さはさておき、Anna Cappellini - Luca Lanotte 組とか観ていると、 昔の日本映画の映画音楽を使って映画をオマージュするようなプログラムを作るようなフィギュアスケート選手が日本から出て来てきたらなあ、と思ってしまいます。