夢の城

― 登場人物 ―


桜の里(三)
― 3. ―

主要登場人物

美千(みち)
 牧野郷川上村の有力な村人 村西兵庫助(ひょうごのすけ)の妻。夫は、市場町の銭屋の取り立てを逃れるために、ライバル関係にある金融業者集団の柿原党と手を結ぼうとしているが、美千はそれを快く思っていない。村人の井田小多右衛門(こだえもん)によれば、美千のほうがどうも出身身分が上らしい[桜の里(三)2.]。ふくからは「奥方様」などと呼ばれている。
ふく
 村西兵庫助の家の下女。まだ少女っぽさを残している。やはり小多右衛門によれば、ふくは美千が連れてきたらしく、村西兵庫助よりも美千に親近感を持っているようである。中原範大(のりひろ)に一方的に夜のパートナーに指名され、けっこう危ない状況にあるが、本人は意識しているのかどうか……[桜の里(三)2.]
(まり)、広沢の上の家の〜
 川上村の女の子。「広沢三家」と呼ばれるグループの家の子らしい。活発で身軽な女の子のようで、木に登ったり飛礫(つぶて)を打ったりするのが得意である[桜の里(一)]
中原範大(のりひろ)安芸守(あきのかみ)
 中原郷の名主 中原克富の息子。村西兵庫助の依頼を受けて、町の銭屋(金貸し)たちが貸した金(銭や米)を村から取り立てるのを妨害するために、中原郷中原村の地侍 長野雅一郎(まさいちろう)を引き連れて美千やふくの住む川上村に来ている。しかし、まだ元服したばかりの少年ということもあり、その任務をどこまできちんと理解しているかはよくわからない。自分の寝室にふくを呼べと言って寝室に向かった[桜の里(三)2.]。美千が言う「中原村の若いお侍さん」であり、また美千の言う「中原村の地侍」のうちの一人。
広沢葛太郎(かつたろう)
 毬と同居している男の子[桜の里(一)]
(まゆ)、広沢の〜
 毬・葛太郎と同居している小さい女の子。葛太郎の妹[桜の里(一)]
「母ちゃん」
 葛太郎・繭の母親らしい。ここでは、家の裏のほうにいるらしく、葛太郎にそう呼ばれる以外にはまったく出てこない。

話題としてのみ登場する人物

(ふくの)「旦那様」
 村西兵庫助(ひょうごのすけ)(兵庫)のこと。牧野郷川上村の村人で、美千の夫。美千が自分を「地侍の妻」と言っているのは、この村西兵庫助の妻になったことを言っている。町から借銭の取り立ての使者が来ることを予知し、柿原党と手を結んで借銭逃れを画策している[桜の里(三)2.]。同じ村人の大木戸九兵衛、井田小多右衛門と仲間になっている。
大木戸(おおきど)九兵衛(くへえ)
 川上村の村人。村西兵庫助の仲間。範大がふくを夜のパートナーに指名したとき、ふくの身代わりとしてふくの「縁者の小娘」を呼びに行った[桜の里(三)2.]
長野雅一郎(まさいちろう)(まさ)
 中原郷中原村の地侍で、中原範大に従って村に来ている。もともと範大の父(中原造酒(みき)克富(かつとみ))に頭の上がらない卑屈な男だったが[桜の里(二)上]、範大のあまりの頼りなさと、村西一党と柿原党の密約を打ち明けられたことから、急速に自信を抱きはじめている[桜の里(三)2.]。美千が「中原村の地侍」と言ったうちの一人。

 ところで、今回は、藤野の美那と春野越後守(えちごのかみ)定範(さだのり)が話題としてすら一度も登場しない最初の回である。