ハンガリー (Hungary) の jazz / improv の文脈で主に活動する violin 奏者 Zoltán Lantos のグループ Mirrorworld の3作目だ。 前作 Tiptoe Ceremony (Budapest Music Center, 2002) [レビュー] から5年あき、 saxophone が Mihály Dresch から Mihály Borbély に代わり、 cimbalom が編成に加わっている。 Shankar の影響を感じるリズムや旋法、violin の音色も相変わらず、 そして前作よりアップテンポの展開が多くテンション高い folk/roots 的な要素を感じる jazz/improv の佳作だ。お薦め。 入手が遅れてしまったので、遅ればせながらレビュー。
やはり耳を捉えるのはテンション高いアップテンポな曲、 drum'm'bass / IDM の影響ベースラインとドラムフレーズに乗る 引き攣りつっかかるような violin や saxophone のフレーズもテンション高い “Yashodaya” や “Amethyst”、 そして、速い violin、saxophone、cimbalom などの掛け合いも流麗で疾走感も感じる “Daksha” だ。
udu や cajon による丸めの音が刻むリズムの上で ゆったり electric violin が響く “Tau” など、前作に近い曲だ。 しかし、テンション高めの展開と対比をなして、前作よりも引き締まっている。 “Hang” での hang (steelpan を逆にしたような打楽器) と violin との duo の 緊張感と浮遊感が同居するかのような音空間も良い。
ちなみに、リリースしたレーベルは X-Produkció。 活動を始めた2000年前後は Boban Markovic Orkestar や Earth Wheel Sky Band など Roma (Gypsy) のリリースが目立っていたが、 2000年代後半になって、この Zoltán Lantos' Mirrorworld や Mihály Dresch、Elemér Balázs など、 2000年代前半であれば Budapest Music Center からリリースしていたような jazz/improv のリリースが増えている。
併せて X-Produkció からのリリースをもう1タイトル軽く紹介。
Zoltán Lantos' Mirrorworld での人名のクレジットが名姓の順だったのに対し、 このアルバムでの人名のクレジットが姓名の順となっている。 以下では、クレジットに倣って姓名の順とする。
Mirrorworld の drums 奏者で、 Bognár Szilvia, Herczku Ágnes, Szalóki Ági: Szájról Szájra (FolkEurópa, 2007) [レビュー] でも鍵となる演奏を聴かせていた Dés András のリーダー作だ。 編成は guitar / bass / drums の trio で、 2曲で Fender Rhodes をフィーチャーしている。 bass は Dresch Quartet の Mátyás Szandai。
その演奏は、John Abercrombie (Gateway) や Pat Metheny といった 1970年代〜1980年代前半の ECM レーベルを連想するような guitar trio だ。 ゲストの Fender Rhodes の音もそこにはまっている。 個性的な音というわけではないが、淡々としたクールに決めた演奏は悪くない。 Dés András のバックグラウンドとなる音を聴いたような興味深さもあった。