ニューヨーク (New York, NY, USA) を拠点に活動し Pi Recordings から主にリリースしている alto saxophone 奏者2人による双頭 5tet のライブ録音が、 ポルトガルの jazz/improv レーベル Clean Feed からリリースされた。 Rudresh Mahanthappa はインド系でそのルーツを意識した録音を多くリリースしている [レビュー]。 一方、Steve Lehman は Quintet や Octet での切れ味良いIDM的な変則リズムに 平板だったり刻むようなフレーズを乗せる演奏が印象深い [レビュー]。 このライブ録音は今まで録音で聴かれる音とは違う新展開ではないが、 今までの良さはそのままに、異なる個性の2人の alto saxophone が堪能できる作品だ。
どちらかといえば Mahanthappa よりも Lehman の色を強く感じるのは、 IDMを思わせるギクシャクしたリズムを多用しているせいだろうか。 Lehman 作の “Foster Brothers” など Steve Lehman Quintet/Octet で 演奏してもおかしくないような曲だし、 “RudreshM” は Octet で演奏していた曲だ。 しかし、Mahanthappa 作曲の “The General” や “Circus” など を聴いていると、Mahanthappa にも同様の指向があったのだろうとも思う。 Brewer (bass) と Reid (drums) は界隈の録音ではあまり見ないミュージシャンだが、 Lehman の他の作品に負けずシャープに複雑なリズムを刻んでいる。 そんなリズムにのって、同じ alto sax ながら 平板なフレーズや飛び回るようなフレーズを多用する Lehman に オリエンタルな節回しや free jazz 的な熱いブロウも聴かせる Mahanthappa が、 お互いを対比させるようにフレーズを絡めていく。 そんな展開の演奏が楽しめた。
このアルバムのもう一つのポイントは、 Henry Threadgill のグループ Zooid でも知られる guitar 奏者 Liberty Ellman の参加だ。 細かくフレーズを刻まなない平板なフレーズを聴かせるところなど、 Steve Lehman Quintet における vibraphone (Chris Dingman) の代わりの位置に ぴったりはまっているし、 “The General” や “Circus” でのソロも印象的だ。 フレーズにクールさを保ちつつも、 electric guitar の軽く濁った音色で vibes よりも濃い音色をアンサンブルに加えている。