TFJ's Sidewalk Cafe > Cahiers des Disuqes >
Review: Pet Bottle Ningen (Nonoko Yoshida / Dave Scanlon / Dave Miller) (live) in Jazz Art Sengawa 2012 @ Sengawa Theater, Tokyo
2012/07/22
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
JAZZ ART せんがわ 2012
せんがわ劇場, 仙川
2012/07/21, 17:00-17:45
Nonoko Yoshida [吉田 野乃子] (alto saxophone), Dave Scanlon (electric guitar), Dave Miller (drums).

Pet Bottle Ningen [ペットボトル人間] は New York を拠点として活動するトリオ。 まだ全員20代で2009年の結成と若いグループだ。 今回で3度目の日本ツアーで、 昨年 Pet Bottle Ningen (Tzadik, 2011) をリリース。 評判も良く気になっていたのだが、やっとライブ初観戦。期待以上にライブが楽しめた。

演奏はコンポジションの要素も大きいもの。 複雑な拍子、不規則に飛び回るような旋律のテーマをユニゾンでばしっと決たりする一方、 その繰り返しからフリーな演奏になだれ込み、そこから戻ってきたり。 編成は bass なしで、 抜けた低音を補うのは guitar か sax のいずれかというわけではなく、自在だ。 ソロを回すように役割を入れ替えていくだけでなく、 高音部と低音部を一人で持っていくときすらある。 だらっとした即興セッションには無いメリハリのある急加速急旋回するような展開が、 そしてそれを支える切れ味のいい演奏が良かった。 たいていCDよりライブで聴いた方がラフで即興的要素を強く感じるものだけれども、 CDで聴いていたよりクールでかっちり決めた演奏という印象を受けた。

比較的即興的な展開での演奏でも、sax が高音でキーキーとフリーキー音で連続的に吹きつつも その合間にまるでベースラインを取るかのようにブゥと短い低音も丁寧に刻んで出して行くような演奏が、印象に残った。 もちろん、どうやって音を出しているのだろうと不思議に感じられたということもあるが、 フリーキー音を低音が異化し、 単に感性に任せて吹きまくっているというのとは違い、構成を感じられた。 そして、そんな演奏が彼らの音楽性を象徴しているようにも感じられた。

全体の印象として新しい何かを聴いたという程では無かったが、 NY の bass-less trio の正統な新世代後継者かもしれないと感じた。 1990年代位から bass-less guitar trio やそこから派生した編成は一つの大きな流れになっているわけだが、 [関連資料]、 彼らの演奏で特に連想させられたのは、Tim Berne の bass-less のグループ、 例えば Marc Ducret (guitar) - Tom Rainey (drums) との Big Satan や これに Craig Taborn (key) を加えた Science Friction、 guitar ではなく cello を入れた Miniature といったところだ。 もしくは、guitar ではなく accordion だが Ellery Eskelin / Andrea Parker / Jim Black のトリオにも近く感じられる。 Pet Bottle Ningen は、そういった流れから出て来た最も若い世代のグループとも言えるだろう。

ちなみに、このライブは JAZZ ART せんがわ 2012 の中の1ステージとして開催された。 日本の jazz/improv 文脈のミュージシャンが集まるこのフェスティバルも今年で5年目。 他の用事との兼ね合いで今回は ペットボトル人間 しか観ませんでしたが、今年もプログラムは充実。 この調子で続けていって欲しい。

今年は一日券を買い逃してしまいかなり行く気を削がれてしまったのですが、 結局、5年続けて足を運ぶことに。 今回の日本ツアー日程で ペットボトル人間 を観ることができるのはこの日だけだったので。 できれば 7/26 の新宿 Pit Inn でも観たいものなのだけれども。