ドイツ/スイスを拠点に活動する jazz/improv の trombone 奏者 Nils Wogram の最新作は、 弦楽器抜きで管楽器6本に drums という brass band 的な編成によるもの。 この編成では以前にも Swing Moral (ENJA HW, CD 9166-2, 2005, CD) という録音があるが、 それに比べて展開に変化に富んだアルバムになっている。 もちろん、管楽器の重ねが織りなすテクスチャも良い。 しかし、このほぼ管楽器の7人編成で まるで trombone/guitar/drums tiro (Wogram も参加した Lucas Niggli Zoom のような) かと思うような小回りの効いた演奏で 変化の富んだ曲を聴かせるところが、楽しいアルバムだ。
そういう点では、オープニングの “Complete Soul” や “Karnagangi”、“Motivation”、“External Wind” のようアップテンポな曲が楽しめた。 複合拍子や変則的な強拍のビートにのって飛び回るようなフレーズをユニゾンしたり、 カノンのようにずらせて重ねていったり。 その一方で、フラットな長音で音を響かせたりもし、 それを速い展開とレイヤーで重ねたり、ギクシャクと繋げて展開したり、緩急のメリハリもある。 そして、それをばっちりと決める切れ味の良い演奏が気持ちよい。 もちろん、個々の管楽器の鳴りも良いので、ゆったりしたダウンテンポの曲も気持ち良い。
ソロで耳を捉えるのは、trombone と clarinet の組合わせの良さもあると思うが、 Nils Wogram の trombone と、Claudio Puntin の clarinet。 そんなこともあって、この2人が2管としてフロントを取る5tet Lucas Niggli Big Zoom [レビュー] を連想させられた。 Wogram のグループであれば、clarinet ではなくソフトな音の sax (Hayden Chisholm) だけれども、Root 70。 新展開を聴いたというより、今まで Root 70 や Zoom やってきている音楽の brass band 的な拡大編成でのバリエーションを楽しんだという感じだ。