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Review: Nils Wogram and The NDR Bigband, Portrait Of A Band
2007/09/02
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(ENJA HW, 9178, 2007, CD)
1)Hogwarts 2)Portrait Of A Band 3)You're My Everything 4)Recycle Or Die 5)Thinking Of Air
Recorded 2006/8/14-18.
Dieter Glawischnig (conductor), Nils Wogram (trombone), Simon Nabatov (piano, Fender Rhodes), Matt Penman (bass), Tom Rainey (drums), Stefan Dietz (guitar), Marcio Doctor (percussion); trumpets: Thorsten Benkenstein (lead trumpet), Ingolf Burkhard, Reiner Winterschladen, Claus Stötter; trombones: Dan Gottshall (lead trombone), Nils Landgren, Stefan Lottermann, Ingo Lame; reeds: Fiete Felsch (lead alto, flute), Peter Bolte (alto, flute), Christoph Lauer (tenor), Lutz Büchner (tenor, clarinet), Frank Delle (bari, bassclarinet).

Nils Wogram は ドイツのケルン (Köln, NW, DE) の jazz/improv シーンで活動する (最近はスイスに住んでいるという話も聞く) trombone 奏者、 最近は、自身のグループ Root 70 (レビュー) をはじめ、 Lucas Niggli の Zoom、 Sebastian Gramss の Underkarl といった グループで活動している。 そんな Wogram がハンブルグ (Hamburg, DE) に本部を置く公共放送局 NDR (Norddeutscher Rundfunk, 北ドイツ放送協会) の jazz bigband と共演した CDをリリースした。

編成は、かつての Nils Wogram Quartet (レビュー) を思わせる Nils Wogram / Simon Navatov / Matt Penman / Tom Rainey の 4tet を核に、 bigband で厚みを加えたものだ。 bigband の中には Act レーベルからリーダー作をリリースしている Nils Landgren や Christof Lauer の名も見える。 そして、この 4tet の核が、演奏のキレの良さを作りだしている。 特に、Tim Berne のグループでの活動で知られる Tom Reiney (関連レビュー 1, 2, 3) の drums が、まったりしがちな bigband の演奏をぐっと引き締めている。

特に、最初の "Hogwarts" や、最後の "Thinking Of Air" は 4tet 色が濃い。 Reiney のギクシャクしたタテノリ気味のリズムを強く叩き出すソロの回りに brass と reeds の反覆フレーズによるテクスチャが沸き上がり、 その中から 4tet 的な演奏が浮かびあがって来るような展開がかっこいい。 ここがこの作品の中で最も気に入った所だ。 ちなみに、Nabatov の強い piano の音色は好きなのだが、 この bigband の中では Fender Rhodes の方が良いように思う。

一方、残りの3曲は bigband 色濃い。 しかし、ソロ回しに多くの時間が取られており、音はかなり整理されている。 全体としてテンション高めだが、 そんな中、スタンダード曲 "You're My Everything" では、 ソフトな演奏でほっと一息つかせてくれる。

voice はフィーチャーしていないが、 Wogram も参加している Lucus Niggli Zoom Ensemble の Sweet (Intakt, CD093, 2004, CD) (レビュー) や、 John Hollenbeck と Jazz Bigband Graz が共演した Joys & Desire (Intuition, INT3386-2, 2005, CD) (レビュー) とも共通する、キレの良いコンテンポラリな jazz big band が楽しめる作品だ。

ところで、ドイツのコンテンポラリ物に強い jazz bigband というと、 ケルンに本部を置く WDR (Westdeutscher Rundfunk, 西ドイツ放送協会) の The WDR Big Band を最初に思い浮かべる。 もちろん様々なスタイルのリリースがあるが、コンテンポラリ寄りのものでは Bob Brookmeyer, Electricity (Act, 9219-2, 1996, CD) や Tom Rainey が drums を叩いている Peter Herborn, Traces Of Trane (JMT, 514 002-2, 1992, CD) がある。 それに、Nils Wogram はケルンのシーンで活躍している。 そんなこともあり、共演しているのが The WDR Big Band ではなく The NDR Bigband だったのは、 少々意外だった。 もちろん、The NDR Bigband にも Colin Towns & The NDR Bigband, The Theatre Of Kurt Weill (Act, 9234-2, 2000, CD) のようなコンテンポラリ寄りの作品がある。

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