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Review: Meitei, Chihei Hatakeyama, Nathan Fake, Actress, Michiyo Yagi, William Basinski, Actress & Suzanne Ciani, etc (live) in NU Festival @ Takanawa Gateway City, Tokyo
2026/07/05
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)

NU Festival は、 高輪ゲートウェイ駅に2026年3月28日にグランドオープンしたばかりの大型商業施設 高輪ゲートウェイシティを会場として、今年初めて6月26〜28日に開催された都市型の音楽フェスです。 1994年から開催されているバルセロナの音楽フェス Sónar と かつて六本木にあり現在は鴨川のオルタナティブスペース SuperDeluxe をコラボレーターに迎えて、 実験的な電子音楽を核にしつつ音楽、アート、テクノロジーを横断するフェスティバルとして企画されました。 ダンスを強く志向せずむしろ実験的なミュージシャンが多いラインナップに惹かれて、 また、高輪ゲートウェイシティにオープンしたミュージアム/多目的ホール MoN Takanawa: The Museum of Narrative の様子を観に行く良い機会かと、 6月27日、28日の土日に足を運んでみました。観たものについて簡単な鑑賞メモを。

NU Live × Sónar Sound, Takanawa Gateway Convention Center B2 / Link Pillar Hall
2026/06/27, 16:00-17:00.

コンベンションセンターのメインホール (Link Pillar Hall) 前で受付して、 まずは、冥丁 [Meitei]。 『恵比寿映像祭2026』でのインスタレーション [鑑賞メモ] の印象もあってアンビエントなセットを予想していましたが、 会場に合わせたかそうでもなく、かといって、ダンス志向でもなく、会場に音楽が合っていないようでした。

早々に会場を後にして MoN Takanawa へ。 しかし、高輪ゲートウェイシティの南端にあるコンベンションセンターから北端にある MoN まで遠かった。 普通に歩いて10分はあります。最初は少々迷ったので20分はかかったでしょうか。

NU Art × SuperDeluxe, MoN Takanawa / Tatami
2026/06/27, 16:00-17:30.

MoNの4階にある約100畳の天井低目のスペース Tatami で、 中山 晃子 の alive painting [鑑賞メモ] に合わせての 畠山 地平。 畠山 はエフェクトを効かせたギターでアンビエントというよりドローンな音響を繰り出します。 Tatami のステージ後ろの白壁はかなり横長なので、中山の alive painting は描いたものをそのままではなく、反転したものも含めて横に反復延長して投影していました。 畳の上で横にながらチルアウトするように聴きましたが、 コンベンションセンターからMoNまで歩き疲れた後には、ちょうど良かったでしょうか。

演奏は終わっていませんでしたが、少し早めに退室して MoN Takanawa の他の場所もチェック。 大規模商業施設内とはいえミュージアム/ホールという位置付けのせいか、併設のカフェやキッチンもあり、 都内の多くの商業施設と違い休憩できるスペースも多め。これであれば、ゆったり過ごせそうでした。

NU Art × Sónar+D, MoN Takanawa / Box300
2026/06/27, 17:00-18:00.

MoN Takanawa 2階のスペース Box300 では、アート/テクノロジー関連の展示の他、奥のステージでライブが行われていました。 Portrait XO はベルリンを拠点とするアーティスト/ミュージシャン。 会場からしてもう少しインタラクティブなパフォーマンスかと期待しましたが、DJ & VJのライブに近いものでした。

NU Live × Sónar Sound, Takanawa Gateway Convention Center B2 / Link Pillar Hall
2026/06/27, 17:40-18:40.

Portrait XO も途中で抜けて再びコンベンションセンターへ遥々と。 イギリスの Nathan Fake のライブを後半から。 Nathan Fake というと、James Holden の Border Community 界隈、Luke Abbott や Four Tet / Caribou 系の音という20年前の印象で止まっていたので、 重めの四つ打ちも使ったフロア志向の音は意外でした。

NU Live × Sónar Sound, Takanawa Gateway Convention Center B2 / Link Pillar Hall
2026/06/27, 18:40-20:00.

自身のレーベル Werkdiscs だけでなく Honest Jons や Ninja Tune からのリリースもあるロンドンのDJ/ミュージシャン Darren J. Cunningham aka Actress による 前半は dub/minimal techno 的な音に時折 reggae 的なリズムを交える展開で、 1998年の Hard Wax のイベント (Substance, Vainqueur, Maurizio) [鑑賞メモ] を思い出しました。 後半になるとかなり重めになりましたが、フロアを踊らせるというには少し外した展開が続きました。

NU Park × Takanawa Gateway Special Live, Takanawa Gateway City 2F Gateway Park
2026/06/27, 18:00-20:30.

Actress が終わりコンベンションセンターから上がると駅前の広場 (Gateway Park) が野外のダンスフロアになっていました。 この時にかかっていたのは、日本のDJ Shingo Nakamura による華やかな house のセット。 禁欲的というか実験色濃いセットを聴き続けていたせいか、 野外でビールを飲みながらこういう音楽に体を揺らすのも、また楽しいものだなあ、と。 結局、20時半の NU Park 終了まで聴いて、土曜は会場を後にしました。

ぽんぽこ山 [Ponpoko Yama] × onnacodomo
NU Art × SuperDeluxe, MoN Takanawa / Tatami
2026/06/28, 13:10-14:30.
幻の名盤解放同盟 [Maboroshi-No-Meiban-Kaiho-Domei]
NU Art × SuperDeluxe, MoN Takanawa / Tatami
2026/06/28, 14:30-15:30.

日曜は実家方面の用事を済ませてから高輪へ。14時頃に泉岳寺駅から MoN Takanawa へ入って、Tatami へ直行。 onnacodomo のVJ付きで テンテンコによるイベントというかユニット ぽんぽこ山 によるライブをやっていました。 脱力するような音と動画のライブに続いて、幻の名盤解放同盟による昭和歌謡をかけながらのトーク。 畳の上で寛ぎ体力を温存しながら、眺めるように聴いていました。

NU Art × SuperDeluxe, MoN Takanawa / Tatami
2026/06/28, 15:30-16:30.

続いて、八木 美知依 [鑑賞メモ] のライブ。 エレクトリック21絃箏、17絃ベース箏の音をループで静かに波打つように重ねていきます。 ノンクレジットでしたが青みがかったライブのビデオプロジェクションもあり、浅い海の底を漂うよう。 畳の上でリラックスして聴くのにちょうど良く、もう暫く聴いていたかったですが、William Basinski と時間が丸かぶりだったので、早めに中座しました。

NU Live × Sónar Sound, Takanawa Gateway Convention Center B2 / Link Pillar Hall
2026/06/28, 15:30-16:30.

1980年代から活動するものの2000年前後からアンビエントの文脈で注目されるようになったアメリカ・ロサンジェルスのミュージシャン William Basinski のライブは、 “Passing the cup of sorrows” と題されたグラウンドピアノ (Shigeru Kawai SK-5) を使うもの。 コンベンションセンターへ遥々移動してホールに入ると、中央のステージでグラウンドピアノを疎に弾きつつそれがエレクトロニックに操作されていきます。 そんなアンビエントに寄った音を、多くの人がカーペット敷きのフロアに横になって聴いているのも印象的でした。 暫くすると、ピアノは弾き終わり、よりノイジーな電子音の世界へ。 ピアノ演奏に間に合って良かったでしょうか。

NU Live × Sónar Sound, Takanawa Gateway Convention Center B2 / Link Pillar Hall
2026/06/28, 16:30-17:30.

続いて、東京を拠点に活動する 鶴田さくら のDJセット。 予備知識は全くなかったのですが、前後の William Basinski, Actress × Suzanne Ciani に比べてフロア志向だったかとは思いますが、トリッキーな展開のエレクトロニカ。 DJブースの隣、部屋角に置かれた椅子に座って、ゆったり聴きました。

NU Live × Sónar Sound, Takanawa Gateway Convention Center B2 / Link Pillar Hall
2026/06/28, 18:00-19:00.

27日は単独でDJしたイギリスのDJ Actress と1960年代末からアナログシンセサイザーを駆使して活動するアメリカの先駆的な作曲家・電子音楽のパイオニア Suzanne Ciani による、 London Barbican Centre と Sónar による2025年の共同コミッションプロジェクト “Concrete Waves” のライブです。 中央に置かれたステージの上で、 Buchla 社のモジュラーシセサイザーと会場の四隅に置かれたスピーカーを制御しての Quadraphonic 音響システムを Ciani が操り、 Actress が都市、工業地帯フィールドレコーディングを再構築する “R&B Concrète” を重ねます。

鶴田さくらから引き続きDJブースのある側 (Suzanne Ciani の側) の奥の角のスピーカーの前の椅子に座って聴いていたのですが、 遠くで響くようなビートの上で飛び交う立体音響という聴こえ方。 ステージを挟んで会場の反対の Actress 側ではビートが大音響で鳴り響いているんだろうか、と、時々フロアを歩き回ってみるものの、 立体音響的な変化はあれと遠くで鳴り響いているような音響が近づいて来ることはありませんでした。 そんな不思議な没入型の音響空間を体験しました。

Satoshi Otsuki × VJ Misola (野村 海蒼)
NU Park × Takanawa Gateway Special Live, Takanawa Gateway City 2F Gateway Park
2026/06/27, 18:00-20:30.

Actress × Suzanne Ciani の後は土曜に引き続き駅前の広場 (Gateway Park) が野外のダンスフロアを楽しもうかと思っていたのですが、生憎の雨。 昨日とは色が変わって、日本のDJ Satoshi Otsuki によるミニマル気味の techno がかかっていました。 雨と2日間の疲れに負けて、早々に会場を後にしました。

遠ざかってしまっているライブ、クラブイベントのリハビリという面もあり、 とても良かったという程のセットがあったわけではなく、がっつり聴くというより雰囲気を楽しんだ感もありましたが、期待より楽しめたでしょうか。 週末の大規模商業施設という点の人の多さはありましたが、 フェス初回の知名度の低さや、ラインナップが実験的なものに寄っているということもあってか、 フェスの会場は空いていて、人混みに揉まれることなくマイペースに楽しめたというのも良かったでしょうか。

NU Festival にラインナップされていた Chloé Juliette が開幕直前に出演を辞退するということがありました。 NU Festival は Sónar との共催イベントで、Sónar の親会社 Superstruct が2024年に米大手投資ファンド KKR (Kohlberg Kravis Roberts & Co.) の傘下に入ったこと、 KKR はイスラエルによるパレスチナの違法な入植やカナダ先住民 Wet'suwet'en の領土を占拠するガスパイプライン建設で利益を上げており、 2025年には50組を超えるアーティストがSónar への出演を取りやめ、ボイコットが呼びかけられ、彼女がレジデント DJを務めるコレクティブ WAIFU もこのアクションに積極的に参加して来たということもあり、辞退を決めたとのこと。 大手資本からインでペンデントであろうとする志向はわからないではないものの、 資本はポピュラー音楽の使い道を決めることはできるが、その意味を決めるのは聴衆だとも考えているので、 ディレクションに影響しない限りは資本を利用するのもありとは思っています。 むしろ、1990年代に The Wire 誌などを通して知った当時の Sónar はまだまだ知る人ぞ知るという程度のものだったので、 Sónar も大手投資ファンドの対象となるほどのものになったのかと感慨深いものがありました。 NU Festival も主催は実行委員会であるものの、JR東日本の後援で、その大規模商業施設を盛り上げるイベントとして成立していたわけです。 そういうことを考えると、この手の文化もすっかり主流に近いものとなったのだなあ、と。