アサヒビールのメセナ事業アート・コラボレーションの今年の展覧会。 今年の 木村 崇人 は どこかで見覚えがあるなと思ったら、 10年近く前に取手や水戸で自転車なジャイロを体験したことのある作家だった (レビュー 1, 2)。 といっても、そういう作品は無かった。 森さんのお宅を訪ねるという形式での展示の導入部、 「玄関から飾り棚」、「コンセプト盆栽」、「神聖なる戦い」といった展示 を観たときは、いやな予感すらした。 しかし、最後の2間「静の間」と「動の間」は力業とは思ったけれども、 妙にツボにはまる所のあるインスタレーションだった。
「静の間」は杉の枝葉が小山と盛られた中に、 樹皮を剥されて白い木肌を晒した杉の小木が林立しているというもの。 枝葉は枯れて赤茶色に変色していたが、それがむしろ冬の裏山のよう。 しかし、ツボにハマったのは、その枝葉を踏みしめる感覚というより、 微妙に配置された金網のフェンス。 小学生時代を過ごした団地に似たようなエリアがあったな、と、 そのフェンスが逆にリアルさを感じさせた所が面白かった。 「動の間」は広葉樹の枯葉を敷き詰めたなか、 黒く木の幹をプリントした薄い白い布をかきわけて歩くインスタレーション。 こちらが気に入ったのは、すこし長めの間隔でライトの部分的に点滅する所。 時折陽が差す濃い霧のかかった冬の広葉樹の林の中を歩くような イメージを巧く作り出していた。
以前に、違う作家の展示を観て、 「部分日蝕のときに木漏れ日が地面に欠けた太陽の三日月形を描くことが知られている。 これこそ植物カメラではないかと思う。こういう効果を使ったインスタレーションを期待したい」 みたいなことを書いたことがあるのだが、 「光の間」はまさにそういうインスタレーションだった。 しかし、実際に形となったものを観てみるそんなに面白いと思う程でななかった。 自分ですらすぐに思い付くようなアイデアではそうまともな作品にならない、 ということか。