1990年代後半からベルリン (Berlin, DE) を拠点に活動する現代美術作家 塩田 千春 の、
パフォーマンス的な面も強い最初期1990年代の作品から、最近の舞台作品の舞台美術家としてのコラボレーションの記録まで、
作家の歩みと作風の変化をたどる回顧展です。
2001年のヨコハマトリエンナーレ以来、美術館での展覧会だけでなく、ケンジタキギャラリーでの個展
[関連する鑑賞メモ] も含めてそれなりに観てきているので、
初期の泥をモチーフにした作品 (泥水が流れる巨大なドレスのインスタレーションやバスタブの泥水に浸かるビデオ) などは観たことがありました。
その当時はほとんど意識しませんでしたが、当時の作品の記録の展示を観ていると、Marina Abramović [関連する鑑賞メモ] などのパフォーマンスの影響を強く感じました。
そんな初期のドキュメントから、赤糸や黒糸を特徴的な素材とするギャラリー空間をいっぱいに使うインスタレーション作品を経て [関連する鑑賞メモ]、
近年の舞台美術の仕事 [関連する鑑賞メモ] を続けて見ると、
表現衝動をコントロールせずに造形作品というよりパフォーマンスとして作品になっていたものが、
糸のような素材と出会うことにより表現衝動を他のジャンルのアーティストとコラボレーション可能な造形作品に落とし込む作家なりの方法論ができ、
舞台美術のような仕事が可能となったのだなあ、と。そんな制作のあり方の変遷を見るようでした。
展示されていたインスタレーション作品については、会場が明るく綺麗という森美術館という会場の癖もあるかと思いますが、小綺麗で良くも悪くも薄まったような印象を受けました。
例えば、黒焦げのピアノや椅子に黒糸が絡みついたインスタレーションは
2007年の神奈川県民ホールで観ていますが [鑑賞メモ]、
その時の印象に比べて不安を引き起こすようなものが感じられませんでした。
しかし、回顧展での作品展示ですし、そうなってしまうのも仕方ないでしょうか。