麻布台ヒルズでは、開業した11日24日から3日間、 『AZABUDAI HILLS Opening Performance Events』と題して、 中央広場やアリーナを使い、街中・野外で上演される演劇、ダンス、サーカスなどのパフォーマンス (フランス語で “Arts de la rue” と呼ばれる) のイベントを繰り広げていました。 商業施設での大道芸イベントはかなり定着ましたが、 欧米のパフォーマーを中心としたこのレベルと規模のイベントはさすがに稀です。 2000年代の六本木ヒルズで開催していた World Street Performance [写真集 2004年, 2005年, 2006年] の豪華版のようです。 コロナ禍前であれば『大道芸ワールドカップin静岡』のワールドカップ部門もそうでしたが [2019年の写真集]、現在はディレクションが変わってしまいました。 このタイプのパフォーマンスを最後に観たのは2019年です。 久しぶりに観られるということで、26日の午後、13時半から15時にかけて観てきました。
2009年にも三茶de大道芸/ヘブンアーティストTOKYOで来日したことのあるフランスのカンパニーです [写真集]。 バンド・デシネのスチームパンクなファンタジー作品に出てきそうな衣装に高足 (stilt) 履いて、音楽を演奏しながら練り歩きます。 楽器編成は2009年から少々変わって、アコーディオン (accordéon)、タラゴット (taragot/tárogató) (シングルリード木管)、ダヴル (davul) (太鼓) とバルカン風の楽器で、 Klezmer 風の節回しの音楽を演奏します。 聞き取れないセリフの言葉の響きもスラブ語風ということで、その世界観は東ヨーロッパでしょうか。 今回は、単に演奏して練り歩くだけでなく、観客のおでこなどに印をスタンプしたりと客弄りもしました。
イタリア・ヴェネチアのヴァーティカル・ダンス (壁面をフロアに見立ててのエアリアル・ダンス) のカンパニーです。 ヴェネチア・リアルト橋近くの Teatro Goldoni (1622年オープン時はTeatro San Luca) の400周年記念のプロジェクトで、 劇場名となった18世紀ヴェネチアの劇作家 Carlo Goldoni の作品 “La Bottega del Caffè” (コーヒーショップ) に基づく作品です。 といっても、原作を知らずに観たので、女性2人男性1人の少々三角関係的なドラマのような印象を受けました。 劇伴の音楽に、エレクトロニカ的な音処理も使ったソプラノサックスの生演奏を使っていました。
ヴァーティカル・ダンスは好きで、イベントに出演している時は優先的に観るようにしています。 今回のカンパニーも生演奏を使うなど見どころはあったのですが、 ワイヤーで吊られている範囲でしか動けないという動きの制約が大きく、 衣装と音楽以外でカンパニーや演目の個性を見出すのが難しいです。 2006年に六本木で観た Compagnie Les Passagers のダイナミックな動きは [写真集]、 かなり独創的だったのだなと改めて思います。
ブラックタイ、燕尾服、ボーラーハットという Erik Satie か上品な Chaplin かという出たちで、自走ピアノで動き回りながらソロピアノ演奏します。 (演目によっては女性ヴァイオリニストが付くこともあるようです。) ジブリ映画音楽弾いたりと、親しみやすい選曲でした。
送風機で膨らませた高さ3〜4 mにはなる白いバルーンのパペットを使ったパフォーマンスで知られるフランスのカンパニー Cie des Quidams。 六本木ヒルズ関連のイベントでも度々登場していましたが [写真集]、麻布台ヒルズにも登場。 「トーテム」の頭部は、Rêve d’Herbert にも似た球状ですが、 ボディは少々スリムで、長いストールのようなものを羽織っています。 2体の「トーテム」とそれを操る人1名というミニマムな編成でした。 2体が格闘するような動きをしたり、踊ったり、池の辺りで佇んんだり。 日没後であれば頭部とボディが光ってもっと幻想的に見えたかもしれません。
オーストラリアに、sway-pole (弾性のある高さ4〜5 mのポールの上でポールを大きくたわめ揺らせてのパフォーマンス) で知られる Strange Fruit というカンパニーがあって、 六本木ヒルズのイベントにも度々登場していたのですが [写真集]、2020年で活動を停止。 その Strange Fruit のディレクターだった Phillip Gleeson やパフォーマーだった Emily Ryan らが新たに結成したカンパニーが SWAY です。 その新作 Bloom! は、 アメリカ・テネシー州ドリーウッド (Dollywood) の Flower & Food Festival のために作られた、 近くのグレート・スモーキー山脈 (Great Smoky Mountains) の花々をモチーフにした作品とのこと。 ストーリーというほどのものは感じられませんでしたが、衣装を閉じた蕾の状態でポールに上り、花を咲かせて揺れ踊り、花粉を思わす紙吹雪を散らせました。
霧雨混じりの天気でsway-poleが濡れてしまい、 しばらく上演できずに様子見の状態だったのですが、なんとか上演できたのでした。よかった。
オーストラリアのローヴィング・アクト (roving act) (回遊型のパフォーマンス)の2人組です。 ベルギーのシュルレアリスト René Magritte の絵に着想した服装で、 麻布台ヒルズ マーケット (といっても、店はほとんどオープンしておらず、通路状態でしたが) で、 通りがかりの客と記念写真を撮ったりしていました。
人間彫刻 (living statue) を専門とするイギリスのカンパニーによる、人間彫刻です。 いろんなタイプの人間彫刻が出ていたようですが、自分が観かけることができたのは、これ。 クラッシックなカメラを構えたカメラマンの銅像のような姿で静かに立っていますが、 観客の様子を見ながら、時々動いて、観客を驚かせたり。
ビルの高層階が隠れるほど雲が低く垂れ込め、最高気温が10℃にもならない霧雨混じりの天気という、 野外イベントを向けとは言い難い天気でした。 おかげで中央広場に出ている人が少なめで観やすかったのですが、 さすがに1時間以上外にいると、暖かく着込んでいても手先足先から凍えてきて、辛いものがありました。 しかし、屋内で神出鬼没でやっていたローヴィング・アクトこそ全て観られなかったものの、 中央広場でのパフォーマンスは一通り観ることができ、十分に楽しめました。 悪天をおして観に行ったかいがありました。