ヘブンアーティストとは 2002年に創設された東京都の大道芸人公認制度。 この制度によって公認された大道芸人に海外招聘パフォーマーを加え、 毎年10月半ばの週末に上野恩賜公園で開催されている大道芸フェスティバルが、 ヘブンアーティスト TOKYO だ。 制度が創設された翌年2003年 [写真集] から、 このようなフェスティバルの形で開催されるようになっている。 今年は、海外招聘パフォーマー4組を含む114組のパフォーマーが参加した。
ヘブンアーティスト TOKYO で招聘される海外パフォーマーは、 その前後いずれかの週末に三軒茶屋で開催される 三茶 de 大道芸 と共通となっている。 たいていは自宅に近い三軒茶屋の方で観ているのだが、 たまには気分を変えて広い公園で観るのも良いだろう、と、今年は上野へ足を運んでみた。
斬新な演出や空間使いで強く印象を残すパフォーマーには出会えなかったが、 少々SF的な衣装を着て高足上で音楽を演奏する Celestroï など充分に楽しむことができた。 何より、三軒茶屋に比べ遥かに開放感のある公園のゆったりめの空間で、 のんびりと大道芸を楽しんだ。
以下に写真を撮ったカンパニー/パフォーマを、個別にコメント付き写真で簡単に紹介。 パフォーマー名演目名については、自分で調べられる限り、 パフォーマーの公式サイトや海外の大道芸関係のフェスティヴァルのプログラムなどで 一般的に用いられている表記に従っている。 調べがつけられなかったものについてのみ、 会場で配布されていたパンフレットに用いられていたものを用いている。
丸一仙翁社中による江戸太神楽の大道芸。 仙次による一つ鞠の曲。
丸一仙翁社中を含む写真集: 野毛大道芸 2003、 みなとみらい21大道芸 2006、 ヨコハマ大道芸 2007。
フランス・ミディ=ピレネー地方トゥールーズ (Toulouse, Midi-Pyrénées, FR) のアクロバット2人組 La Famille Goldini。 Marvelous Mambo は、 マンボのリズムに乗って、大柄な女性にちょっと尻に敷かれた感じの小柄な男性を演じる、 コミカルなショーでした。
この二人はまだ小さな子供を連れて来ていて、 ショーが始まる前に子供も交えて客寄せのパフォーマンスをしていました。 それも可愛いらしくて、面白かった。
日本を拠点に活動する 徐領民雑技団 (在日中国雑技芸術団とも)。 東京近辺の大道芸フェスティバルの常連です。 いつも 張 海輪 がやっている椅子倒立、今回は違う女性パフォーマーがやっていました。 この女性パフォーマーがやっているのを観たのは初めて。それも6脚。 他にもこれが出来るパフォーマーがいるというのが凄い。
徐領民雑技団を含む写真集: 三茶 de 大道芸 2000、 2003年秋の上野恩賜公園、 野毛大道芸 2004、 三茶 de 大道芸 2004、 三茶 de 大道芸 2005、 みなとみらい21大道芸 2006、 よこはま大道芸 2007、 三茶 de 大道芸 2007、 よこはま大道芸 2008、 三茶 de 大道芸 2008。
トゥールーズ (Toulouse, Midi-Pyrénées, FR) のサーカス・カンパニー Compagnie Sacékripa の一員として活動する ジャグラー (jongleur) Morgan Cosquer のソロ。 jazz/improv 風のアブストラクト clarinet の演奏に乗って、足も駆使したジャグリング。 そういう音楽使いからも判るように、大技ではなく、繊細な動きでみせるタイプ。 身のこなしがぬめっとしてシュールな印象でした。
Christian Taguet 率いるフランス (France) のカンパニー Cirque Baroque。 こちらも、東京近辺の大道芸フェスティバルの常連です。 今回来ていたのは座長 Christian と息子 Benoît Taguet、 あと女性パフォーマー Karen Bourre。 春に Jean-Baptiste Taguet と Céline Dupuis が演じた筋立てのあるショー [写真集] のようなものでは無く、それぞれの芸を見せるミニサーカスでした。 Benoît Taguet は2003年の時 [写真集] と同じくベルトを使ったパフォーマンス。 女性はたいていエアリアルの人を連れてくるのですが、今回は違いました。 Karen Bourre は初めて観ましたが、まずは、コミカルに jaggling と hoop を。
そして、Christian がマジックをしている間に着替えて、bounce jaggling を。 こちらは、身のこなしも優雅で美しく。 後で知ったのですが、彼女は、 Compagnie Jérôme Thomas にもよく参加しているようです。
Cirque Baroque を含む写真集: 三茶 de 大道芸 2000、 三茶 de 大道芸 2002、 2003年秋の上野恩賜公園、 三茶 de 大道芸 2003、 野毛大道芸 2004、 三茶 de 大道芸 2004、 三茶 de 大道芸 2005、 三茶 de 大道芸 2007、 Open The Park (Midpark Project 2009)。
海外でも活躍する日本の大道芸人 雪竹 太郎 の、 彼を有名ならしめた作品『人間美術館』。 この作品の様子は、 野毛大道芸 2003 の写真 がお勧め。そういえば、その時に「考える人」を撮らなかったな、と。
雪竹 太郎 を含む写真集: Avignon, France 2001、 野毛大道芸 2003、 ヘブンアーティスト TOKYO 2003。
フランスのスティルト・カンパニー Celestroï。 14時頃、前が押して Cirque Baroque の開始を待っていた時に、登場。 スティルトの上にバンド・デシネのファンタジー作品に出てきそうな衣装を着た3人組。 少し練り歩いては立ち止まり、向かい合ったり、身体を揺らしながら、 tárogató (ハンガリーの single reed 管楽器)、 bombarde (ブルターニュの double reed 管楽器)、 accordéon diatonique という編成で folk/roots 風の音楽を演奏する、 というスタイルのパフォーマンスでした。 tárogató の人は時々 chalemie (チャルメラ。oboe の元になった double reed 管楽器) に持ち替えるときもありました。 曲が終わって観客から拍手が出ると、回るように踊ったりもしました。 bombarde の強烈な音色からブルターニュのカンパニーなのかなと思っていたのですが、 ローヌ=アルプ地方サン=テティエンヌ (Saint-Étienne, Rhône-Alpes, FR) を 拠点とするカンパニーです。
夕方は17時近く、日が暮れ始めた頃に登場。 東京文化会館と国立西洋美術館の間の路上でパフォーマンスしました。
夜のパフォーマンスでは、頭上に吊り下げた笠付きの白熱灯が点灯。 緑多い公園の薄闇の中、自身の明かりで浮かび上がる様は、その衣装や音楽もあいまって、 彼らの周囲にファンタジー的な世界を作り出していました。 昼観たときはちょっと衣装が変わったスティルト音楽隊という程度の印象でしたが、 夕暮れまで待った甲斐がありました。 日暮れ後の闇の中のパフォーマンスの方が格段に良かった。
l'Éléphant Vert [写真集] などを連想させられる所もありますが、 フランスのカンパニーにはビジュアルからして雰囲気作りが巧い所が多いと、つくづく思います。