ゴールデンウィーク中は今年も3、4日に静岡で一泊。 去年 [鑑賞メモ] に引き続き、 ストリートシアターフェス『ストレンジシード静岡2025』と、 駿府城公園で開催された『SHIZUOKAせかい演劇祭2025』のプログラムを観てきました。
3日昼前に静岡入りして、まずは、呉服町商店街方面へ。
岩手県盛岡市を拠点に活動する劇団による街の歴史に取材した作品で、
観客に街歩きガイドしつつ、歴史的エピソードを関連する場所で上演する作品です。
出発点は青葉シンボルロードの市庁舎側、そこから呉服町商店街を札の辻へ、七間町商店街を進んで、
青葉シンボルロードのもう一方の端の常磐公園がツアーの終点でした。
静岡は1995年に大道芸を観に初めて来て以来、秋の大道芸と春の演劇祭で何度となく通ってきた街で、 七間町に映画街がまだ残っていた頃をかろうじて知っていたものの、 老舗の婦人服店トンボヤ、十返舎 一九 の生家や、大火や戦災を生き延びた蔵など、この作品で気付いたことも多く、 演出としては少々ベタかとは思いましたが、新鮮に街歩きとそこでの寸劇を楽しみました。
終演後、常盤公園から長駆、駿府城公園 PARKエリアへ移動。
ホワイトアスパラガス [鑑賞メモ] としても活動する 長岡 岳大 (ex-ハチロウ) と、
人形劇団ねむり鳥主宰でサーカスアーティストとの共演も多い 長井 望美 [鑑賞メモ] の移動型のパフォーマンスです。
作・演出にゼロコの 濱口 啓介 が加わっています。
二の丸橋からスタートし二の丸御門跡広場を経由して富士見芝生広場の西側へ。 前半は「落とし物」 (といっても仕込みですが) を拾いつつ移動つつの 長岡 のジャグリングに時折 長井 が絡む展開でしたが、 富士見芝生広場の着いてからは木立の間に張った紐を使った人形劇的な展開へ。 長岡 を追いかける子供たちのリアクションが良くて、それ込みで楽しみました。
森尾 拓斗 × 演劇空間ロッカクナット の立体音響作品『naraka』を用いたパフォーマンスです。 『naraka』はセンサとホーン型のスピーカーを付けた立方体の金属枠で、そこにマイムのパフォーマンスが絡みます。 自分の耳の調子が悪かったこともあってか、立体音響の機微が野外では判りづらかったのが残念でした。
普段は劇場で公演している関西拠点のジャグリング・カンパニーで、野外はほぼ初めてとのこと。
タイトルから予想されるような借景を活用したサイトスペシフィックな演出というほどのものはなく、
かつての大道芸フェスティバルin静岡でオフ部門のパフォーマーを観ているような気分になりました。
しかし、男女混成でかつ3人組という編成や、台詞というか音楽に合わせてのラップのような語りを使う所など、
他の大道芸でのジャグリング芸ではあまりなさそうな特徴もあるパフォーマンスでした。
去年 [鑑賞メモ] に引き続いて出場の京都のエアリアル/ヴァーティカルダンスのカンパニーですが、
今年は街中でのウォーキングアクトではなく、駿府城公園の児童広場にある大樹を櫓として活かしてのエアリアルをメインにしたプログラムでした。
もちろん、アコーディオンとトライアングルの生伴奏付き。
街中でのウォーキングアクトは異化作用の方が大きいのですが、
新緑の大樹はむしろ白いモコモコ姿と相性良く、まるで樹の精が現れたかのようなファンタジックな印象を受けました。
スケジュールに載った児童公園での上演だけでなく、 去年同様街中の方でも白いモコモコ姿でゲリラ的にパフォーマンスをし、 今年はそれに加えて呉服町商店街のビル壁でのヴァーティカルダンスもやったようでした。 行き交う人をグリーティングする様子は目撃できたのですが、 ヴァーティカルダンスを目撃できなかったのは、残念でした。
この後、ホテルへチェックインして荷物を置いたあと、再び駿府城公園へ。 『SHIZUOKAせかい演劇祭2025』かつ 『ふじのくに野外芸術フェスタ2025』のプログラムの公演を観ました。
恒例になっているSPACの駿府城公園での野外公演は今年も新作で、 ク・ナウカ時代の作品でSPACで再演した『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』 [鑑賞メモ] に続きインド古典の叙事詩から。 予習不足で物語に付いていけるか不安がありましたが、 『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』よりもシンプルな英雄の冒険譚で、 ヴァールミーキの講談調のナビゲーションもあって、とてもわかりやすく感じました。 様式的ながらアイデア満載のアクションシーン、小型トラックの荷台に載せて大きく移動する楽隊などの演出も楽しみました。 しかし、その一方で、去年の『白狐伝』 [鑑賞メモ] のようなメロドラマ的な物語の方が冒険譚より好みだとも、気付かされてしまいました。
ここ数年、せかい演劇祭でのSPACの公演は駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場が続いています。 特設会場の方が小型トラック使用等の自由度がありそうですが、 『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』を思い出しつつ、 美しい夜の静岡県舞台芸術公園 野外劇場「有度」での上演で観てみたかったとも思いました。
3日はここまで。一泊後、4日も午前から青葉シンボルロードで 『ストレンジシード静岡2025』の続きを観ました。
劇場公演も多いのですが、大道芸フェスティバルにも度々出演している、フィジカルコメディの2人組です。
その名は度々目にしていたのですが、タイミングが合わず、今回初めて観ました。
言葉を用いないパントマイム劇ですが、自身の動きを使って空間を変容させたり状況を描くことではなく、 客弄りというか観客を巻き込んで笑いを作り出す要素の強いクラウン芸的なもの。 と言っても、わかりやすくクラウン的な化粧服装をしていない所は現代的です。 状況に応じた即興的な対応が求められるパフォーマンスですが、 少なからず大道芸フェスティバル等の野外上演をしてきているだけあって、その捌きも巧みでした。
福岡を拠点に活動する 乗松 薫 と 鉄田 えみ のダンスカンパニーです。
コンテンポラリー・ダンスの文脈で名を知ってはいましたが、観るのは初めてです。
彼女たちが街中でダンスながら移動する様子を観ながら追いかけるという展開を想像していたのですが、
彼女たちのダンスの見せ場はありましたが、むしろ、願いを書いた大きなしわくちゃの紙を観客の皆で持って移動する (パレードする) という、
観客参加型のパフォーマンスという面が強いものでした。
去年に引き続いての [鑑賞メモ] の出場ですが、
今年は駿府城公園ではなく呉服町と七間町という賑やかな商店街が舞台です。
時々動きを止めつつ何十人ものパフォーマーが踊りながら移動するという点は去年と同様ですが、
タイトルにも「音のある」とあるように、パフォーマーの中にミュージシャン (ヴァイオリン) が入り、生演奏が作くようになりました。
賑やかな街中を舞台としたこともあって大人数で風景を変えるという面はより穏やかになった一方で、
特にラストのARTIEなど音楽使いも観客の巻き込み具合も祝祭的な面がグッと出ていました。
呉服町での昼食の後、駿府城公園へ移動。
「なんだ?ワークショップ」のコアプログラムは、
フランスの作家によるその地の象徴的な建築物の段ボールと梱包用OPPテープで作った模型を、
ワークショップの参加者らと制作、建築、展示そして解体するプロジェクトです。
今回の静岡で制作したのは駿府城天守閣で、4月28日から5月2日の5日間のワークショップでパーツを制作し、
5月3日に現地で建築、4日、5日と展示した後、5日の15時から解体するというものでした。
作業の流れを把握して建築に参加するには、合間だけでは難しそうで、 3日は建築している様子をパフォーマンスを観る合間に見ていました。 4日に通りがかった時には完成していました。
『SHIZUOKAせかい演劇祭2025』関連企画として、 駿府城公園の堀を一周する葵船を使い、 堀を一周しつつSPAC俳優が『ラーマーヤナ物語』にちなんだパフォーマンスをする、というものです。 3人の俳優が1人ずつ交代でパフォーマンスしました。 定員11名の小さな舟ですので、パフォーマンスと言っても動き回るようなものではなく、腰を下ろしての語り聞かせに近いものでした。 水面の風に吹かれつつ (少々強い時もありましたが)、インドの物語に耳を傾けたり、マントラ唱えたり。 テンション高めな『ストレンジシード静岡』などのパフォーマンスと対照的な、穏やかで優しい語りで、40分ほど異世界へ連れて行かれました。
『ストレンジシード静岡』等を観るのはこれでおしまい。駿府城公園を後にして、静岡芸術劇場へ向かいました。