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Polish tango と klezmer について

2005年12月の Polish tango と klezmer に関する発言の抜粋です。 リンク先のURLの維持更新は行っていませんので、 古い発言ではリンク先が失われている場合もありますが、ご了承ください。 コメントは談話室へお願いします。

[1485] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Dec 19 23:07:16 2005

日曜の晩は寒くて散索気分というわけにはいかなかったですが、下北沢まで。 jazz bar Lady Jane大熊 ワタル (clarinets) + 佐藤 芳明 (accordion) のライヴを観てきました。去年の9月にプライベートなパーティ (フォトログ) で観て以来です。格段にパワーアップ (?) していたような印象を受けました。 演奏のテンションは高いのに、力みが感じられるような所はなく、 妙にリラックスして楽しめたライブでした。 しかし、女性客の多さにびっくり。そうなのかー。 楽しいライブでしたし、 大熊さんから台湾土産話を聞いたり、 佐藤さんにコパニツァ (Kopanica。ブルガリア (Bulgaria) の11/16拍子の民俗舞踊のリズム) のステップを 教えてもらったりしたい気分でもあったのですが、 それなりに遅い時間でしたし、月曜に備えて、挨拶だけして帰りました。残念。 また次のライブも是非行きたいものです。 というか、コパニッツア選手権実現の曉には、是非観に/踊りに行きたいものです。 そんなわけで、レビューを書いておきました。 しかし、2人とも面識があるミュージシャンだけに、 レビューが書き辛いです……。

ところで、演奏した曲の中で気になった曲に、 ロシア (Russia) のアニメーション Yuri Norstein (dir.), Skazka Skazok (Tale Of Tale, 1979; 『話の話』) で使われいた tango の曲があったので、少し調べてみました。 ロシアでは "Utomlennoe Solntse" (aka "Weary Sun", 「疲れた太陽」) として 知られる曲のようですが、オリジナルはポーランド (Poland) の曲で Jerzy Petersburski, "To Ostatnia Niedziela" (1935; aka "This Is the Last Sunday")。 Polish tango の代表曲とも言える曲のようで、Jerzy Placzkiewicz, "Tango in Poland, 1913 - 1939" (in Todotango.com; 1999〜2001年にベスト・サイトとして選ばれていたアルゼンチン (Argentine) のタンゴのサイト) という解説記事でもこんな歌詞が引用されています。男女の別れの歌だったのですね。

This is the last Sunday / today we shall part with each other / today we shall go away from each other / for the rest of our life / This is the last Sunday / so don't stint it to me / look tenderly at me / for it's the last time.

ちょっと klezmer っぽく聴こえるのは 大熊 ワタル の資質かな、と思ったのですが、 この曲を作った Jerzy Petersburski はユダヤ人 (Jewish)。なるほどー。 Marian Fuks, "Musical Traditions of Polish Jews" (Polish Music Journal, Vol. 6, No. 1, Summer 2003) によると、 大戦間のポーランドの映画プロデューサ、ポピュラー音楽や映画音楽の作曲家にはユダヤ人が多かったようです。

The so-called "entertainment industry" was, until the onset of World War II, dominated by Polish Jews. Along with the film producers, most composers of popular music and film scores were also Jewish. The names of Henryk Gold, Artur Gold, Jerzy Petersburski, Henryk Wars, Zygmunt Białostocki, Szymon Kataszek, Fred Melodysta, and Ada Rosner appear among the credits in films produced in Poland during the 1920s-30s.

僕の好きなポーランドのバンドの一つに The Cracow Klezmer Band がいます。レビューは書いてないのですが……、 以前にこの談話室で言及したときに 「klezmer というより tango って感じではありますが」 と書いたわけですが、 実は、戦前のポーランドでは klezmer と tango は近いものだったのかもしれないなぁ、 と思ったりしました。ふむふむ。 その一方で、Klezmer En Buenos Aires みたいなバンド (レビュー 1, 2) もいて "Klezmer Tango" なんて曲もやっているわけで、 音楽の繋がりというのもいろいろ面白いものだなぁ、と思ったり。

そう、Klezmer En Buenos Aires も大好きなバンドなわけですが、 大熊 ワタル + 佐藤 芳明 と同じ clarinet + accordion duo という点でも、 つい対比したくなる所があるんですよね。 Klezmer En Buenos Aires が「静」で大熊 ワタル + 佐藤 芳明 が「動」 という感じで方向性は反対のようにも思いますが。

しかし、『話の話』 かぁ……。 ロシアやチェコ (Czech rep.) のアニメを観るために 阿佐谷ラピュタや中野武蔵野座やユーロスペースによくいっていた1990年代後半 をちょっと思い出してしまいましたよ (遠い目)。