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Alison Statton (Weekend) のドレスアップについて

[2059] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Dec 7 2:00:52 2007

「Rough Trade の女性派閥」の一人、 Alison Statton (ex-Young Marble Giants) のグループ Weekend"Woman's Eyes" のライブ映像です。 フランスのテレビ局 Antenne 2 がおそらく1983年に収録・放送したものです。 音質も良いとは言い難いですし、終り近くに画像が乱れる所があるのが残念。

Young Marble Giants 〜 Weekend の頃の Alison Statton というと 当時のプレス用の写真 のようなちょっと垢抜けない女の子というイメージが強いのですが、 このライブでの、 黒の細身のワンピースにワンレングスのショートボブというスタイルでキメてる Statton に思わず目が釘付け。く〜(激萌)。 1980年代初頭という時代を感じるスタイルではありますが……。 どうやら、1983年のヨーロッパツアーではこういう髪型だったようですね (Amsterdam でのライブの写真)。 ああ、生で観てみたかったなぁ……。

ちなみに、"Woman's Eyes" を収録したアルバム La Varieté (Rough Trade, ROUGH39, 1983, LP) は、 現在は Cherry Red から CD再発 されています。 ボーナストラックは、The '81 Demos (Vinyl Japan, TASKCD47, 1995, CDS) の4曲と、 当時のシングル全3枚6曲中アルバム収録の "Weekend Off" を除いた5曲です。

[2068] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Dec 13 1:41:50 2007

再訪。前のコメントがあまりにアレなので、 Alison Statton の Young Marble Giants から Weekend へのドレスアップの意味について、 徒然と。

この頃というのは、Alison Statton に限らず post-punk の中から出てきた女性ミュージシャンがDIYな装いからドレスアップした頃でした。 Tracey Thorn の Marine Girls から Everything But The Girl への変化も同様です。 この変化は、単に売れるようになった/売ろうとした反映、というか、 Rob Young が Rough Trade: Labels Unlimited の第5章 (関連発言) で比較的否定的に指摘した 「きれいで耳当たりの良い」新世代への変化の 服装等のスタイルの面での反映という面もあると思います。

「Rough Trade の女性派閥」の中心的なグループ The Raincoats も1980年代前半には活動停止、 メンバー2人は Dorothy として「ドレスアップ」するのですが、 Simon Reynolds, Rip It Up And Start Again: Post-Punk 1978-1984 (関連発言) の サポートブログに この変化に関連するこんな記述があります (FOOTNOTE #12 の "FURTHER WRITING BY ME ON THE RAINCOATS, THIS HEAT, YOUNG MARBLE GIANTS, ET AL" / "WHAT THE RAINCOATS DID NEXT" にある過去の自著 The Sex Revolts からの引用)。

Finally, in the late '80s, two members of the band regrouped as the pop band Dorothy, and [influenced by the work of Cindy Sherman, says Gina Birch] this time they were in synch with the latest 'post-feminist' ideas about using traditional feminine imagery as a strategy of empowerment. They dressed like glamorous '40s film stars, wore lots of make-up, and made glossy, opulent music reminiscent of Diana Ross.

このように、1980年代の postpunk の女性ミュージシャンのドレスアップは ポストフェミニズムの戦略として評価することも可能かもしれません。

これは、Pipilotti Rist の作品における "Girlish" な要素の賛否とも同じ話であるよなぁ、と Jane Harris, "Psychedelic, Baby: An Interview with Pipilotti Rist" (Art Journal, Winter 2000) を読みつつ思ったり。 ここで "Girlish" という言葉が議論になってますが、1990年代後半の Riot Grrrl vs Girl Power (関連レビュー) のことが思い出いされます (遠い目)。 そういう時代だったなぁ、と。 ふと「抵抗のポストフェミニズム」「反動のポストフェミニズム」という言葉を思いついたけど、 書きだすとまた長くなりそうなので忘れておきます……。

ちなみに、この Simon Reynolds の Rip It Up And Start Again もそうしているように、 Young Marble Giants は The Raincoats と一緒に語られることが多いのですが、 The Raincoats をはじめとする「Rough Trade の女性派閥」や その近傍の女性グループ/男女混成グループの多く (例えば Delta 5、Au Pairs や Ludus) が 明らかにフェミニズムな歌詞を歌ったのに対し、 Alison Statton が歌う歌詞はもっと抽象的というか曖昧な印象を受けるもので、 フェミニズムを思わせる主題を歌ったものはほとんどありませんでした。 (そんな中で、Weekend の "Woman's Eyes" は 彼女の歌にしては珍しくちょっとフェミニズム入ってるかもしれないと感じさせる所があるかも。 ちなみに、Weekend の後、Statton は Ludus の Ian Devine と Devine & Statton として活動します。) これについて、 "Reviews: CD: Young Marble Giants, Colossal Youth" (The Guardian, 2007/6/22) もこう指摘しています。

While their peers earnestly debated cultural hegemony or furthered the cause of radical feminism by being as tuneless as possible, Young Marble Giants released the Testcard EP, "six instrumentals in praise and celebration of mid-morning television" (included here on the appended CD of single tracks and muffled demos).

にもかかわらず、Alison Statton が pre-Riot Grrrl な女性ミュージシャンとしてみなされがち (例えば、TypicalGirls の挙げているリスト) なのは、 やはり、Kurt Cobain's 50 favorite LPs の中に The Raincoats などと一緒に Young Marble Giants が挙げられたことが大きいのかな、と、 "Death And The Maiden" (The End Times, 2007/8/17) を読みながら思ったりもしました。 ま、TypicalGirls のリストも、Kirsty MacColl ("Sexuality" のビデオで Billy Bragg の後で "Kinsey report" を広げてる女性 (笑)) ですら挙がってるのに、Tracey Thorn が挙がってないとか、ちょっと変なところがあるんですが。

ドレスアップして "Woman's Eyes" を歌う Alison Statton のビデオは、 そんなことを考えさせられるものでもあったのでした。