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Review: Franck Tortiller / Michel Godard / Patrice Héral, impertinAnce; Michel Godard, Archangelica
2008/09/28
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Franck Tortiller / Michel Godard / Patrice Héral
impertinAnce
(CAM Jazz, CAMJ7792-2, 2006, CD)
1)Les Sorcières 2)Mona 3)La Belle Vie... 4)Impertinance 5)Mojo 6)Luiza Blanca 7)A 627 8)Do You Loveliness 2? 9)Mahleur, Mahleur 10)Archangelica 11)Claret 12)Serpent Et Sonnailles 13)Les Charmes
Recorded 2005/12/19-21.
Franck Tortiller (vibraphone, marimba, xolophone), Michel Godard (tuba, serpent), Patrice Héral (percussion, vocals, sampling, electronics).

Franck Tortiller は、1990年代は Vienna Art Orchestra のメンバーとして、 2005年以降は L'Orchestre National de Jazz のディレクターとして活動する フランス (France) 出身の vibraphone 奏者だ。 tuba/serpent 奏者 Michel Godard と percussion 奏者 Patrice Héral も、フランス出身で jazz/improv 文脈で活動しているが、 欧州各地の、それも folk/roots 寄りのミュージシャンとも多く共演を重ねて来ている。。 そんな3人による trio は弦楽器抜きの変則的なものだが、 その編成ならではの展開が楽しめる作品だ。

基本的にビート感は控えめの室内楽的な jazz なのだが、 CAM Jazz の制作のクセもあると思うが、 ENJA から出ている Godard 関連作と比べアウトな展開は控えめ。 tuba や serpent の落ち着いた響きや、 marimba や xylophone の柔らかい音色からなる、 淡々とした展開が楽しめる作品だ。 ただ、Godard の tuba/serpent は決してベースラインに留まることなく浪々とソロを取り、 むしろ vibraphone や marimba がコード進行を支えている、という展開が多い。 この高音と低音の役割がゆったりと入れ替わりつつ曲展開が進むような所が面白い。

もちろん、Héral の抽象的な voicing も生きる アップテンポな "Mona" や "Impertinance" もスリリングだし、 ドシャメシャな冒頭から brass band 的な曲調なる小曲 "Mahleur, Mahleur"、 serpent と低音 throat singing がリズミカルに絡み合う "Serpent Et Sonnailles" のような曲も楽しめる。 こういう曲が配されることにより、全体の雰囲気もしまっている。

この trio の作品は2年前のものだが、 この拡大ともいえる編成による新譜が、同じく CAM Jazz からリリースされた。

Michel Godard
Archangelica
(CAM Jazz, CAMJ7806-2, 2008, CD)
1)L'Or Des Tenèbres 2)Enfant Trouvé 3)Archangelica 4)Les Couleurs Du Désir 5)Comme Une Pluie 6)L'Ombre D'Or 7)Three Together 8)Senza Tremmore 9)In Tenebrosis 10)Entrelacs Et Tours De Bras
Recorded 2007/02.
Michel Godard (serpent), Maria Pia De Vito (vocal), Freddy Eichelberger (harpsichord), Gérard Marais (electric guitar), Franck Tortiller (marimba), Patrice Héral (percussion); L'Atelier Des Musiciens Du Louvre-Grenoble conducted by Mirella Giardelli: Bénédicte Trotereau, Geneviève Staley-Bois, Laurent Lagresle (first violins); Florence Stroesser, Simon Dariel (second violins); Françoise Couvert, Delphine Grimbert (violas); Pascal Gessi, Franck Lepinasse (cellos); André Fournier (contrabass); Mirella Giardelli (organ).

impertinAnce の3人に、 harpsichord 奏者の Freddy Eichelberger と strings と organ からなる楽団 L'Atelier Des Musiciens Du Louvre-Grenoble を加えて jazz と baroque の融合を試みた作品だ。 impertinAnce でも演っていた "Archangelica" が表題曲になっている。 electric guitar の Gérard Marais、 抽象的な voicing で知られるイタリアの女性歌手 Maria Pia De Vito も参加し、 ディレクションは Michel Godard。

シャープな drums と鋭角的な electric guitar が雰囲気をひきしめている "L'Ombre D'Or"、 De Vito - Godard - Marais の voice/serpent/guitar の落ち着いた絡みが楽しめる "Three Together" など、良いと感じる展開のところもある。 しかし、ゆったりした展開に strings が重なり旋律を中心に進行するので、 かなり classical 寄りに大仰になってしまったように思う。

impertinAnce も良かったし、 De Vito もとても好きな女性歌手なので、期待したところもあったのだが、少々残念。