Michael Moore はアメリカ (US) 出身ながらオランダ・アムステルダム (Amsterdam, NL) を 拠点に活動する clarinet/saxophone 奏者。 遅ればせながら入手した2008年にリリースしたリーダー作2作 (いずれも自身のレーベル Ramboy Recordings からのリリース) が良かったので、併せて紹介。
ニューヨーク (New York, US) を拠点に活動する2人のミュージシャンとの trio での2004年の録音だ。 (ちなみに、現在はこの trio ではライブをしてはいないようだ。) リズム隊のいない accordion、cello との trio という変則的な編成による、 静かにゆったりと聴かせる室内楽的な jazz だ。 しかし、piano ではなく accordion のおかげか classical に感じられる展開は多くない。 むしろ、さほど抽象的にならずメロディを生かした展開も多いせいか、 Guy Klucevsek や Erik Friedlander の資質のせいか、folk 的に感じる曲調が印象に残る。
実際は全曲 Michael Moore 作だが、 Jewels & Binoculars [レビュー] のように 歌うように吹く “Trouble House” など、 こういう Bob Dylan の歌があっただろうか、と、思ってしまう程だ。 可愛らしい旋律を優しく吹く “Jodi Jones” もそう。 そして、これがこのアルバムの最も気に入った所だ。 ちなみに、タイトルの Holocene (完新世。最後の氷河期から現代までを指す地質年代) というのは、 Bob Dylan: World Gone Wrong (1990) の Dylan 自身によるライナーノーツから撮られているという。
piano - bass - drums を従えた quartet による2007年録音で、現時点での最新リーダー作だ。 北米西海岸で作曲した曲とのことだが、 オランダを拠点とするミュージシャンたちとアムステルダムで録音している。 2曲で ICP 仲間の Ab Baars がゲスト参加している。 drums がしっかり4ビートを刻むような曲も無いわけではないが、 むしろそれは控えめ、Jimmy Giuffre 3 のようにゆったりした展開で聴かせる曲がほどんどだ。 編成からして Holocene に比べて普通で、 大きく外れる展開もなく、そこが少々物足りないが、 優しい音色のゆったりとした clarinet/saxophone が楽しめる。
まだCDのリリースは無いけれども、最近の Michael Moore は、 ニューヨークの accordion 奏者 Will Holshouser (David Krakauer Klezmer Madness, Will Holshouser Trio)、 ICP 仲間の Han Bennink との trio Holshouser, Bennink & Moore [MySpace] で活動している。 Holocene、 Fragile や Jewels & Binoculars などメロディアスな2000年代の Moore だが、 MySpace で聴かれるこの trio のちょっとドタバタしたユーモラスな演奏は それらとは違い、1990年代の Clusone 3 のようで楽しそう。 これも、Bennink の drums のおかげか。 Ernst Reijseger の cello が Holshouser の accordion となって、 少々 klezmer 色が入ったようにも感じられる。 この Holshouser, Bennink & Moore でCDがリリースされることを期待したい。