ケルンを拠点に活動を始め、2009年以降拠点をベルリンに居を移した electronica のミュージシャン Burnt Friedman の、久々のソロ名義でのアルバムだ。 ソロ名義とはいえ、 最近精力的に活動している Jaki Liebezeit (ex-Can) との duo で聴かれる音に近い、 手製パーカッション等のアコースティックな音と複合拍子のポリリズミックなビートが楽しめる。
Hayden Chisholm をはじめとする馴染みのミュージシャンが参加し、 Friedman & Liebezeit の Secret Rhythms 3 (Nonplace, NON25, 2008, CD) や Secret Rhythms 4 (Nonplace, NON30, 2011, CD) [レビュー] 延長ともいえるアルバムだ。 しかし、よく聴けば、Friedman & Liebezeit と比べて 低く締まった drums の音が無い分だけ、音色が軽く緩い印象を受ける。 冒頭をはじめ各所に入る緩んだ弦のようなサワリ入りの音や、 時折ソロのようにかき鳴らされるように連続的に鳴らされる鈍い弦の音なども、緩さの印象を与えている。 最近技術的なブレークスルーがあったというゴムバンドを張った自作楽器 (rubber band guitar もしくは rubberbox) [公式サイトでの先行シングルの解説] も新作の特徴だ。 緩い音色ながらアップテンポで迫ってくる “Uzu” や “Tom Tom Keppo” のような曲が特に気に入っている。
今回初参加のゲストに、ベルリン在住の Takeshi Nishimoto がいる。 John Tejada との duo I'm Not A Gun で知られる guitar 奏者だが、 ここでは2曲で北インド古典音楽の弦楽器 sarod を弾いている。 guitar より緩い音色ということで、このアルバムに合っている。
このアルバムに半年ほど先行して、以下のシングルがリリースされている。
全曲アルバム Bokoboko 未収曲だが、 “Nin'Nin Keppo” はアルバムの “Tom Tom Keppo” のオリジナルヴァージョン、 “Rimuse” は アルバムの “Rimuse 2”、“Rimuse 3” のオリジナルヴァージョンであり、 音作りはほぼ同じ。 Bokoboko の先行予告編と言えるシングルだ。
併せて、関連シングルをいくつか紹介。
去年末にリリースされた Friedman & Liebezeit の Secret Rhythms の Remix Series の第一弾に、 Shackleton [レビュー] がいきなり登場。 オリジナルは Secret Rhythms 4 (Nonplace, NON30, 2011, CD) 所収だ。 Shackleton というと percussion 乱れ飛び交う dubstep という印象が強いが、 この9分近い長さのリミックスは、全体としてビート感を抑えた静めな展開も多いうえ、 途中で曲の雰囲気が変わり、少々ストーリー性を感じるもの。 これはこれで悪くないが、Secret Rhythms を よりトライバルに強化したものを期待したところもあったので、肩透かし感もあった。 B面は Nonplace 10th Anniversary Edition (Nonplace, NON28, 2010, CD) 所収。DLでは Shackleton Remix のみで売られている。
ちなみに、アルバム Secret Rhythms 4 の先行シングルにも、 アルバム収録曲のミックス違いが収録されていた。 よく聴くと少々 dubwise だったり、強調する音色に違いが聴かれるが、 Remix という程大きな改変はされていない。