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Review: Jazz Art Sengawa 2013, Tokyo
2013/07/24
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
せんがわ劇場 + 仙川周辺 (調布市仙川)
2013/07/19-21
総合プロデュース: 巻上 公一; プロデューサー: 坂本 弘道, 藤原 清登.

今年で6年目となる日本の jazz/improv のフェスティバル JAZZ ART せんがわ。 第1回から毎年来ているせいか、少々マンネリを感じるのは否めない。 しかし、このようなフェスティバルは継続するのも重要。 というわけで、今年も土曜の夕方から3ステージを観た。

Superterz + Koho Mori-Newton & Simon Berns
せんがわ劇場
2012/07/20, 17:30-18:10.
Superterz: Marcel Vaid (guitar, drums, electronics), Ravi Vaid (electronics, analog synthesizer); Koho Mori-Newton [森ニュートン 幸峰] (DIY instruments), Simon Berns (drums, DIY instruments).

Superterz はチューリヒを拠点とする Marcel & Ravi Vaid によるプロジェクト。 ビート感のあるエレクトロノイズを演奏した。 客入れの時から、Koho Mori-Newton が天井から引いたピアノ線様のワイヤーをスティックで擦っての演奏。 兄の Marcel が冷静に guitar や drums をループさせつつビート感あるノイズを作りつつ、 低く床座りした弟の Ravi は対称的に Simon Berns の煽る drums に反応つつ頭を振って没入してノイズを振りまいていた。 残念ながら、Koho Mori-Newton は、演奏か盛り上がると音が埋れてしまった。

せんがわ劇場
2012/07/20, 19:30-20:10.
藤原 清登 [Kiyozumi Fujiwara] (doublebass), 灰野 敬二 [Keiji Haino] (percussion, voice).

JAZZ ART せんがわ に初回からプロデューサとして参加している bass 奏者 藤原 清登。 アウトな演奏をするミュージシャンが多く集まるこのフェスティバルの中では、正統派の顔とも言えるかもしれない。 どちらかと言えばアウト側の 灰野 との顔合わせは JAZZ ART せんがわ だから実現したとは思ったが、 なかなか渋くかっこいいデュオになった。 ちなみに、この顔合わせを決めたのは総合プロデューサーの 巻上 公一 だったようだ。

清水はアブストラクトなフレーズながら、ピチカートやアルコ弾きの音の響きを聴かせる演奏。 対する灰野は、並べた4本のマイクの前で、踊るように金属音の percussion や frame drum を鳴らしたり、デス声を放ったり。 マイクまでの距離に残響処理を加え、清水の作ったベースの上に広がるデフォルメされた空間に音を散りばめるよう。 中でも特にテンション高めるのアルコ弾きの上に小型の glockenspiel の甲高い金属音を振り撒くような展開が良かった。 electric guitar の準備もしていたが、弾くことはなし。 しかし、今回は灰野が guitar を封印して良かったと思う。

せんがわ劇場
2012/07/20, 20:50-21:30.
ヒカシュー [Hikashu]: 巻上 公一 (voice, cornet, theremin), 三田 超人 (guitar, voice), 坂出 雅海 (electric bass), 清水 一登 (piano, synthesizer, bass clarinet), 佐藤 正治 (drums, percussion); with guests: Lauren Newton (voice).

トリはフェスティバルの総合プロデューサ (芸術監督) 巻上 公一 のグループ ヒカシュー。 ゲストに、アメリカ出身ながら欧州の jazz/improv の文脈で活動する女性歌手 Lauren Newton。 この共演はベルリン録音のアルバム『あっちの目 こっちの目』 (1992) 以来だ。 Newton はその時の曲を含めて3曲でゲストとして歌った。 テクノポップ/ニューウェーブのグループとして1978年に活動を始め、 その後、即興の要素を強めてきたヒカシューだが、こういう文脈で聴くとやはり rock だ。 ビート感もあるかもしれないが、空間をアンプされた音で埋めるような音使いにそれを強く感じた。 しかし、最近あまり接して無い類の音楽で、少々すれ違い感も。