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Review: Nils Wogram & Simon Nabatov (live) @ Pit Inn, Shinjuku, Tokyo
2013/08/20
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Pit Inn, 新宿
2013/08/19, 20:00-22:30.
Simon Nabatov (piano), Nils Wogram (trombone).

Simon Nabatov はモスクワ出身ながら1979年以降ニューヨークへ、 さらに1989年からドイツ・ケルンを拠点に活動する jazz/improv の piano 奏者。 Nils Wogram もドイツ/スイスを拠点に活動する jazz/improv の trombone 奏者で、 1990年代半ばに Nabatov らと 4tet を結成して以来、20年近く共演を続けている。 2人は様々な編成で共演をしているが、この初来日は最小編成の duo で。 1990年代後半にCDで聴いて以来長年、この2人を生で観たいと思っていただけに、待望の来日だった。 来日初日のこのライブは、休憩を1回挟み、アンコールは1回と、トータルで約2時間程のステージで、 演奏した曲はコンポジションに基づく jazz のイデオム強いもの。 特殊奏法は多用しない2人だけれども、 足でリズムを刻みながら細かく刻んだ複雑なフレーズをがんがんと繰り出してくる Wogram の trombone に、 トレモロを多用して細かく鳴らしてくる Nabatov の piano も息が合っており、 びしっと決まるアクロバチックなユニゾンも気持ち良い。 期待を裏切らず、ライブ演奏を堪能することができた。

オープニングは “The Essence”、まずは、Wogram の細かい trombone プレイで顔見せ。 続いて、duo での最新アルバム Moods And Modes (nwog, 2010) の タイトル曲。 明るく軽快なテーマで、2人のソロも楽しめる展開に。 巨体のせいか見た目は細かく軽そうながら、明るく強い音を繰り出してくる Nabatov のプレイも引き立つ。 続いては Nils Wogram Septet の曲を2曲。 1960年前後に多くの録音を残しているニューヨークの jazz bass/oud 奏者 Ahmed Abdul-Malik に捧げた “Song For Ahmed” (Complete Soul (nwog, 2012) 所収) では中近東風もしくは東欧風のテーマを気持ち良く。 “Time Machine” (Swing Moral (ENJA, 2005) 所収) では、 ゆったりした曲調ながら、plunger mute を駆使して trombone の柔らかく籠った音色の変化を楽しませた。 前半最後は Nabatov の曲 “Dança Nova” (Moods And Modes 所収)。 Luiz Gonzaga の名曲 “Asa Branca” を思わせるテーマを持つ forro 風の曲で、 ノリ良くバシッと複雑なフレーズを決めいくのも楽しい演奏だった。

後半は、まず Moods And Modes から3曲。 細かくフレーズを刻んでいく “Split The Difference” から、 CDよりも朗々と吹いたゆったりした曲 “Moving In”。 “Full Stop” は、trombone の細かいフレーズに piano がポツポツと音を合わせて始まるが、 次第に役割が入れ替わり、最後は piano の細かいフレーズに trombone が断片的な音で合わせるようになる曲。 その入れ替わっていく展開も面白いのだが、CDで聴いているときは判らなかったのだが、 ポツポツと断片的に出されている音が一音一音ニュアンスが込められている所もユーモラスだった。 続く Simon Nabatov の曲 (曲名を聴き取れなかった) は、 Nabatov の free jazz 色濃いドシャメシャ演奏に煽られるかのよう、Nils Wogram もアウトな演奏を。 ベルを叩いたり外したり、マウスピースだけで音を鳴らしたり、は、いかにもありがちと思ったが、 スライドを勢いよく抜いてポンと大きな音を出したときは、そんな音の出し方もあったか、と。 そして、最後は Harbie Nichols のカバー “House Party Starting” で、 複雑化されているもののこのライブの中では和やかめの演奏で締めた。 アンコールでは、Wogram が循環呼吸を使って通奏低音的の上で、 Nabatov の細かいフレーズが舞うように聴かせた。

期待に違わず充分に楽しめたライブだったが、 特殊奏法は多用せずに細かく複雑な曲で聴かせてくるような彼らの演奏を観ていて、 もう少し大きな編成でそのテクニックや息の合い具合を楽しみたいという気持ちにもなった。 また、duo ではあまりリズムが際立たず、2人の旋律の細かさに耳が行ったが、 リズム隊を入れて複雑な複合拍子をしっかり刻ませたほうが、Wogram の面白さが出そうだ。 NDR Big Band とまでは言わないが、 やはり、Nils Wogram Root 70 や Simon Nabatov 5tet のような編成、 もしくは、Wogram の参加した Lucas Niggli Big Zoom のようなグループも生で観たいと つくづく思ったライブでもあった。