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Review: The Music Of Toshi Ichiyanagi (concert) @ Tokyo Opera City Concert Hall: Takemitsu Memorial, Tokyo
2016/05/29
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
The Music Of Toshi Ichiyanagi
東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル, 初台
2016/05/25, 19:00-20:50
1)Between Space and Time for chamber orchestra 『ビトゥイーン・スペース・アンド・タイム』 (2001) 2)Piano Concerto No. 6 “ZEN” 『ピアノ協奏曲第6番《禅—ZEN》』 (2016) 3)Symphony “Berlin Renshi” for soprano, baritone and orchestra 『交響曲《ベルリン連詩》』 (1988) - 連詩: 大岡 信 [Makoto Ooka], Karin Kiwus, 川崎 洋 [Hiroshi Kawasaki], Guntram Vasper
秋山 和慶 [Kazuyoshi Akiama] (conductor), 一柳 慧 [Toshi Ichiyanagi] (piano) on 2, 天羽 明惠 [Akie Amou] (soprano) on 3, 松平 敬 [Takashi Matsudaira] (baritone) on 3, 東京都交響楽団 [Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra].

現代音楽 (contemporary classical) の作曲コンペに合わせて開催されるコンサート『コンポージアム』。 今年の審査員は 一柳 慧。 1960年代の日本への John Cage への紹介者として (そして 小野 洋子 の最初の夫として) 名を知るものの、 その音楽をちゃんと聴いたことがなかったので、聴く良い機会かと足を運んでみました。

『コンポージアム』の審査員をフィーチャーしたコンサートというと、 ondes Martenot を使った Tristan Murail (2010) [鑑賞メモ] flute / saxophone 200人のオーケストラを使った Salvatore Sciarrino (2011) [鑑賞メモ]、 和楽器の笙 [sho] を使った 細川 俊夫 (2012) [鑑賞メモ]、 percusshon 奏者のパフォーマンスも楽しかった Peter Eötvös (2014) [鑑賞メモ]、 マルチメディアアーティストの映像を伴う演奏会形式オペラだった Kaija Saariaho (2015) [鑑賞メモ] と、 通常の classical なコンサートとは一味違うものになることが多く、 それも楽しみの一つです。 今回は目に見えて特殊な楽器や編成は無く、比較的普通のコンサートでした。 Symphony “Berlin Renshi” では指揮者が時々紙を掲げつつ指揮をしていたので、 ゲームピースなのかと見ていたら、単に数字が1から順に増えていくだけでした。 これも作曲家の指示なのでしょうか。

John Cage の紹介者というイメージから、モダニスト的な抽象的な曲調を予想していたのですが、 とっつきやすいフレーズが聴こえるときもありました。 むしろ、2曲目の piano concerto での内部奏法も使った倍音成分も上手く使った piano の響きや、 Symphony “Berlin Renshi” での厚めの contrabass を使った orchestra の響きなど、 サウンドの面白さが印象に残りました。 これは、『コンポージアム』の Murail や Sciarrino を聴いたときにも感じたことですが、 特にオーケストラを使った作曲の場合、 オーケストラの響かせ方というのも重要なイシューなのだろうと。 そんなことに気付かされたコンサートでした。