土曜の晩、ふじのくに⇄せかい演劇祭 2016 で観る最後の演目として、この舞台を観てきました。
元 Théâtre de l'Odéon 芸術監督で、2014年より Festival d'Avignon のディレクターを務めるフランスの演出家による、 グリム童話の『手なしむすめ』 (Das Mädchen ohne Hände) に基づく作品。 1995年出版1997年上演の作品を、2014年に再演出したもの。 元の演出のヴァージョンは、「Shizukoka春の芸術祭2009」のプログラムとして 『グリム童話』に基づく Py の他2作品と共に上演されているが [公園情報]、 この頃はまだSPACまで足を運ぶようになる以前で、それらは観ていない。
旅回りの道化芝居の一座が上演しているかのようなシンブルな舞台装置と演出で、 俳優自ら楽器を演奏しつつ、歌い、踊り、時には手品の技も見せたり。 俳優の佇まいから雰囲気があって、アコーディオン、クラリネット、太鼓などによる音楽もぴったり。 そんな演技・演出におとぎ話に着想した物語がぴったりはまって、その世界にぐっと引き込まれた。 子供向けのお芝居のようで、実際に子供の歓声も上がっていたけど、 脚本テキストも演技も変に子供向けに分かりやすくと媚びたところは感じられなかった。 野外劇場という場所も旅回りの一座という雰囲気を盛り上げてくれた。 マルチメディアを駆使するというわけでなく奇を衒わない比較的オーソドックスな演出だと思うが、 芝居と踊りと音楽が自然に一体になった、というか、それらが分化する前とも感じられる素敵な舞台を楽しむことができた。
良質なサーカスや大道芸を観たような楽しさ面白さを感じた一方で、 最近観にいくことが増えたオペラ、バレエでも、 例えば、Alban Berg: Wozzeck [鑑賞メモ] や Igor Stravinsky: L'Histoire du Soldat [鑑賞メモ] などは、 このスタイルの演出でも面白くなりそうだ。 サーカスとかオペラ、バレエとかに限らず、様々な舞台作品を観に行く際に自分が期待しているものの一つの形が、 この作品に凝縮されていたようにも感じた。
今年の ふじのくに⇄せかい演劇祭 2016 は、 静岡へ日帰りで三回行って、全7演目を観た [他演目の鑑賞メモ 1, 2, 3, 4]。 La Jeune Fille, le Diable et le Moulin, d'après les frères Grimm はフェスティバルの最後を締めくくるのにもうってつけの、楽しい作品だった。 残念な演目もあったけれども、最後にこれを観て、フェスティバル全体として楽しかったな、と。 確かに It's Dark Outside も良かったけれども、 全7演目の中のベストは La Jeune Fille, le Diable et le Moulin, d'après les frères Grimm だ。