TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 柴田 敏雄 と 鈴木 理策 『写真と絵画——セザンヌより』 @ アーティゾン美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/05/29
柴田 敏雄 と 鈴木 理策
Shibata Toshio & Suzuki Risaku: Photography and Painting––From Cézanne
アーティゾン美術館 6階展示室
2022/04/29-2022/07/10 (月休), 10:00-18:00 (金[除4/29] -20:00).

写真家の 柴田 敏雄 [鑑賞メモ, 鑑賞メモ] と 鈴木 理策 [鑑賞メモ, 鑑賞メモ] の2人展です。 今まで作品を観る機会はそれなりにあり、抽象的な画面作りが特徴的で、いずれも好みの写真家ということで足を運びました。

抽象的な画面作りとはいえ、並置されることにより、その差異が際立つのが面白く感じられました。 単純に言えば、柴田の写真が人工的な構造物などをパンフォーカスで撮ってフラットでシャープな画面なのに対し、 鈴木の写真は自然 (水面や雪景色, 花や果実の樹) を焦点深度浅く撮って柔らかく多層的な画面を作ります。 柴田の写真では、遠近短縮法的なアングルや、奥の構造物を手前の構造物が横切るような構図もあるのですが、 それでもパンフォーカスで撮っているこだわりが、鈴木の写真と並置されることで際立っていました。 鈴木の写真は、柴田に比べて作風が多様で、 カメラマンを意識させないようハーフミラー越しで撮ったポートレートのシリーズ “Mirror Portrait” (2016) は、こんなものも撮っていたのかと新鮮でした。 しかし、やはり、焦点深度浅く水面や花,果実をとらえたシリーズの画面の多層感の良さを実感しました。

この展覧会は、アーティゾン美術館のコレクションも交えて展示する「ジャムセッション」の企画でもあり、 印象派〜後期印象派の絵画を中心に選び印象派からモダニズムの抽象絵画へ向かう動きを、 2人の写真の抽象的な画面へのアプローチの手がかりとして示すようでした。 しかし、むしろ、柴田のシャープな白黒画面と、鈴木の焦点深度浅くあちこちボケた雪面を、 雪舟の水墨画という中間的な共通項で繋いだ4階展示室での展示の方が、そこから外れた面白さを感じました。

アーティゾン美術館5階展示室では収蔵作品に基づく展覧会 『Transformation 越境から生まれるアート』。 中でも印象に残ったのは、中国出身で第二次世界大戦後、フランスのアンフォルメル (L'Art Informel) [鑑賞メモ] や アメリカの抽象表現主義 [関連する鑑賞メモ] に近い文脈で活動した Zao Wou-Ki [赵无极/趙無極]。 以前に見た時も色使いの良さを感じたのですが、色使いに透明感があり風景を見ているような立体感があるのが良いと気付かされました。