ふじのくに⇄せかい演劇祭 2023 のプログラムで、これらの舞台を観ました。
劇団や演出家のバックグラウンド等は中国を拠点にしているという事以外はほとんど知らずに、 物理学者 Albert Einstein の会話や手紙、 Franz Kafka の Ein Landarzt 『田舎医者』、 Das Schloss 『城』の引用などからなる作品という程度の予備知識で観ました。 ダンスやマイムを思わせるフィジカルな演技や、照明や映像の使い方も、視覚的な洗練を感じる演出でした。 しかし、セリフが字幕経由になるせいか、背景知識不足か、『田舎医者』を参照したセリフや場面はなんとかわかるものの、 不条理と言っても、社会の不透明感や閉塞感の類はほとんど感じられず、 せいぜい男女関係における相手のままならさという程度のように感じられてしまいました。 日本の1990年前後のトレンディドラマの類も外から見たらこのように見えたのかな、とか、 こういった点も経済が発展していて将来が楽観できる社会ならでは表現なのかもしれない、などど、 観ながら考えてしまいました。
Festival d'Avignon の芸術監督を務めるフランスの演出家による、 William Shakespeare: Hamlet を、 それ以降、現代に至る哲学、評論の分野での様々な解釈を俎上に上げて上演するというメタな作品です。 元々、野外 (公園 Jardin Ceccano) での無料公演という形で上演されたとのことで、今回も公園という程ではないものの野外劇場での公演でした。 本棚が並ぶ書斎を思わせる舞台装置の前で、 Hamlet にまつわる10のエピソードを、そのポイントとなる名場面はもちろん、 Hamlet へ言及した思想家等の物真似なども交えつつ、4人の俳優と1人のミュージシャンで上演していきます。 特に役を固定することもなく、衣装や演技もリアリズム的ではなく、書斎での議論のよう。 といっても、思慮深く語り合うようなものではなく、グリム童話に基づく La Jeune Fille, le Diable et le Moulin『少女と悪魔と風車小屋』 [鑑賞メモ] や L'Amour vainqueur『愛が勝つおはなし 〜マレーヌ姫〜』 [鑑賞メモ] を思い出すようなドタバタな茶番劇風のスタイル。 自分の好みですし、風刺も効いていて、おかげで題材のわりに最後まで飽きずに観られました。 しかし、さすがに Hamlet はそれなりに接する機会はあるとはいえ [関連する鑑賞メモ1, 2]、 その解釈なども含めるとそこまで馴染みはなく、面白かったと思える程には付いていけませんでした。
こういう茶番劇、道化芝居のようなスタイルも好きなのですが、 Olivier Py の演出といえば、Francis Poulenc のオペラ Dialogues des Carmélites『カルメル会修道女の対話』が素晴らしかったですし [鑑賞メモ]、 最近も Jean Cocteau 脚本の Poulenc: La voix humaine 『人間の声』 [関連する鑑賞メモ] を演出しているようですし、 是非、こういうオペラを日本でも上演して欲しいものです。
遅くに天気が崩れるという予報はあったのですが、 終演20時前なら降ってもぱらつく程度だろうと楽観して、雨の備えをしていませんでした。 しかし、ラスト30分は舞台に水が浮くくらいの本降りの雨。 フライヤの袋に入ってた約1m四方の透明なビニールシートを被り、フライヤのビニール袋を膝に乗せて、雨を凌ぐことになってしまいました。 しかし、濡れたのはシートを持つ手から雨が伝ってくる袖口周りと、ビニール袋では覆いきれない膝の一部くらいで済みました。 じっと座って観てるだけなら、意外と凌げるものです。 今回はなんとかなりましたが、野外公演での天気を侮ってはいけないと、反省しました。