2004年11〜12月頃のギリシャの音楽に関する一連の発言の抜粋です。 古い発言ほど上になっています。 リンク先のURLの維持更新は行っていませんので、 リンク先が失われている場合もありますが、ご了承ください。 コメントは談話室へお願いします。
少し前に届いたギリシャ (Greece) のCD (フォトログ) の話を。旧譜ということもあって、レビューを書くほどではないですが、 軽く紹介しておこうかしらんということで。
Theodosii Spassov - Kostas Theodorou & Friends, Echotopia (FM, FM1578, 2003, CD) がとても良かったので聴いてみたいと思っていた Kostas Theodorou, Notos (Lyra, CD0667, 1999, CD)。 Echotopia での doublebass のカッコよさを期待したところもあったので、 前半 (A Part) では lyra や guitar を弾いていて、意外でした。 インストゥルメンタルな folk を貴重とした展開で、 lyra のせいか島嶼地方の音楽っぽく聞こえますが、 "Circular Dance" のようにいかにもバルカン (Balkan) な曲もあります。 後半 (B Part) では doublebass を弾いていて、 周囲も piano や saxophone の音が目立ち、ぐっと jazz っぽくなります。 どちらの展開も最近の Libra Music のリリースに繋がるような端正な仕上がりで悪くはないのですが、 前半と後半で曲を棲み分けている感があるのはちょっと残念。
Kostas Theodorou がらみで見付け物だったのが、 Thanasis Papakonstantinou / Melina Kana / Ashkhabad, Loot (Lafyra) (Lyra, CD4919, 1998, CD)。 Kostas Theodorou, Notos でも1曲で歌っているギリシャの女性歌手 Melina Kana が トルクメニスタン (Turkmenistan) のバンド Ashkhabad (レビュー) をバックに歌うというアルバムです。 Melina Kana の歌声は Elefthelia Arvanitaki を ちょっと低めにした感じで、軽くメリスマを効かせた歌唱も雰囲気あります。 以前レビューに書いたように、 Ashkhabad の演奏する音楽は、中央アジアのトルクメニスタンといって バルカン〜トルコ (Turkey) の音楽と似ていて、 Kana の歌声との組み合わせもごく自然な感じです。 作曲・制作の Papakonstantinou も 「Ashkhabad の町は、近所の村々と同じくらい近くにあるように思える」と、 ライナーノーツに書いてありますし。 Ashkhabad だけでなくギリシャのミュージシャンも参加していて、 Kostas Theodorou はほぼ全曲で曲を引き締めるような bass を聴かせてくれているのです。 他にも Mode Plagal (レビュー) の Takis Kanellos が drums で参加してたりと、 ギリシャ勢も良い面子揃えてます。 演奏ではなくて録音のキレが悪いような気がしないではないですが、 なかなか良い作品だと思います。 ギリシャ物といっても、Ara Dinkjian 制作で東地中海指向の強い Arvanitaki の名作 The Bodies And The Knives (Ta Kormia Kai Ta Mahairia) (Polydor (Greece), 527069-2, 1994, CD) とかが好きな人や、バルカン〜トルコの音楽が好きな人なら、気に入るのではないかと。
先日のギリシャ (Greece) のCDの話の続きを。 そもそも、ギリシャに注文をしたのは、以前に問い合わせていた Ano Kato / Rei (Ρει) レーベルの バックカタログが入荷したというメールが届いたからでした。
Ano Kato は 1984年に活動を始めた テッサロニキ (Thessaloniki; ギリシャ領マケドニアの主邑) のレーベルで、そのサブレーベル Rei (Ρει) は、jazz / improv をリリースするレーベルとして1991年にスタートし、 Floros Floridis や Sakis Papadimitriou など、 テッサロニキを拠点に活動するミュージシャンを主にリリースしていました。 ちなみに、Ano Kato / Rei を含む、 1980年前後から今に至るギリシャの jazz / improv. の流れについては、 過去の関連発言 (1, 2) で触れています。
今回、やっと入手できたうちの一枚は、 Kostas Vomvolos, The Girls' Bedroom (To Domatio Ton Koritsion) (Ano Kato / Rei, rei2010, 1995, CD)。 Vomvolos は、現在は Savina Yannatou & Primavera En Salonika (レビュー) のバンドの中心人物として、その編曲等を手がけているミュージシャンです。 The Girls' Bedroom は1993年から1995年にかけて舞台のために作曲した音楽を集めたものです。 4つの作品を集めたもので、 Michalis Siganidis (doublebass; Primavera En Salonica のメンバー) を含む弦楽四重奏 (Aki Domou, ... And Juliet, 1995)、 Georgia Sylleou (vocals; Sakis Papadimitriou の伴奏での録音が多い) を含む女性4人スキャット (Charlotte Keatly, My Mother Said I Never Should, 1995)、 Floros Floridis (bass clarinet) と自身の accordion との duo (Yianni Ritsos, The Dead House, 1995)、 自身の piano solo (Catherine Ann, Tita Lou, 1993) となっています。 ここでは folk 色は薄く、弦楽四重奏や piano solo など特に室内楽的。 こういうこともできる人なのだなぁ、と感慨深かったです。 個人的には Wutu - Wupatu と共通する bass clarinet + accordion の音世界が最も好きです。 ちなみに、Vomvolos は Floridis、Siganidis のトリオに Okay Temiz (drums) をゲストで加えて Wutu - Wupatu (Ano Kato / Rei, rei2002, 1991, CD) という作品も残しています。こちらは、以前に入手済みですが、 バルカン (Balkan) 〜 トルコ (Turkey) らしい節回し (モードですね) と変拍子から free 的な外れた演奏に突入したりもする所も楽しい folk-oriented jazz / improv. の佳作です。 ここらは、後の Primavera En Salonika に繋がるような所も大きいと思います。
あと、ギリシャの jazz rock バンド Mode Plagal のデビュー作 Mode Plagal (Ano Kato / Rei, rei2003, 1995, CD) も入手。 Mode Plagal II (Lyra, ML0668, 1998, CD) と Mode Plagal III (Lyra, ML0715, 2001, CD) も入手済みなので、 以前にレビューした Bosphorus & Mode Plagal, Tou Vosporou To Pera (Beyond The Bosphorus) (Hitch-Hyke, LIFT089, 2003, CD) も含め、Mode Plagal 全作品揃いました。 初期の作品は、節回しや音色もバルカン 〜 トルコ的な要素も控えめで、 ちょっとアウトな展開になる所も合せて、 変拍子もバルカン的というより M-Base 的に聴こえたりもします。 アフリカっぽかったりするところもあるし。 軽快な guitar のフレーズが気持ちよい曲もあったり。 Yiota Vei、Savina Yannatou、Eleni Tsaligopoulou、Theodosia Tsatsou といった歌手をフィーチャーした Mode Plagal III (2001) が転機だったのかしらん。