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「桑野塾」について

[2502] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Oct 12 1:51:48 2009

金曜晩の疲れもあって、土曜は少々腰の調子が不良。 しかし、昼過ぎ遅めに家を出て早稲田大学へ。 ロシア・アヴァンギャルド等のロシア文化研究で知られる 桑野 隆 先生を囲んで ロシアをテーマに話題を持ち寄る会「桑野塾」の第一回会合に出席してきました。 発起人の一人 大島 幹雄 さんが声をかけて下さったのでした。 偉い研究者の方々に混じるというのは少々腰が引けたのですが、 Всеволод Мейерхольд (Vsevolod Meyerhold) や Синяя Блуза (Blue Blouse, 青シャツ) の動く映像が観られるという話に惹かれて、参加することにしたのでした。

最初の報告は 武隈 喜一 「ディミートリイ・ティオームキンと群衆劇、西部劇」。 ロシア、そしてアメリカで活躍したユダヤ人音楽家 Dimitri Tiomkin (Дмитрий Тёмкин) の話でした。 『真昼の決闘』 (High Noon, 1952)、 『OK牧場の決斗』(Gunfight at the O.K. Corral, 1957)、 『ローハイド』(Rawhide, 1959-1965) といった西部劇映画/TVドラマで音楽を手がけ、西部劇音楽の典型を作り上げた Tiomkin が、 1921年の亡命前、ロシア革命直後は赤軍で群衆劇を手がけていたとわ。 ポピュラーで広く馴染まれている音楽の背景にはにはユダヤ人音楽家の回路があるというような 伊東 信宏 『中東欧音楽の回路 —— ロマ・クレズマー・20世紀の前衛』 (岩波書店, 2009) の話なども、連想させられて、とてもエキサイティングでした。

後半も 武隈 喜一 氏の報告で、2004年から2006年にかけてロシアで放送されたTV歴史番組 Исторические Хроники [ru.wikipedia.org] から、 “1923 год — Всеволод Мейерхольд” (“Year 1923 - Vsevolod Mayerhold”) の回を観ました。断片的ながら当時の映像が多く使われていて、興味深かったです。 主要な所は 武隈氏 が通訳して下さったのも、理解の助けになりましあ。 Mayerhold 以外の回も面白そうですが、ロシア語がわからないので、 もしDVDが入手できても、自分だけで観るのは辛いなあ、と。

Dimitri Tiomkin という話題の選択も絶妙で、 話が専門的に掘り下げられていくというよりも、 様々な方面に広がっていくような所があって、とても面白かったです。 呑みながらの二次会もとても盛り上がりましたし。 酔った勢いで、偉い先生に絡んでしまい、反省……。 次回、次々回の発表もおおよそ決まり、3ヶ月に一回くらいの頻度で続きそう。 これからも是非参加し続けたいものです。 本格的な発表は難しいだろうけど、自分なりのネタ探しもしたいものです。

[2567] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 31 20:28:05 2010

土曜は昼過ぎに家を出て早稲田大学へ。 「桑野塾」の第二回に参加してきました。 桑野 隆 先生を囲んで ロシアをテーマに話題を持ち寄るカジュアルな勉強会のようなものです。 去年の10月の第一回 [関連発言] の 西部劇映画作曲家 Dimitri Tiomkin (Дмитрий Тёмкин) の話も興味深かったので、 今回も楽しみにしていました。

今回の話題の一つは、永重 法子 氏による「フォレッゲルとサーカス」。 ロシア革命直後に劇団 Мастфор (Mastfor) を拠点に活動した演劇の演出家 Николай Фореггер (Nikolai Foregger) [ru.wikipedia.org] とサーカスとの関係の話。 Всеволод Мейерхольд (Vsevolod Meyerhold) の Биомеханика (Biomekhanika) より身体性の強い、 サーカスやキャバレー、ミュージックショーの要素も取り入れた舞台作品を作っていた演出家です。 写真もあまり残っておらず、動画も無かったのは、少々残念でした。 ちなみに、Baku: Symphony Of Sirens: Sound Experiments In The Russian Avant Garde (ReR Megacorp, 2008) [レビュー] に、Nikolai Foregger & His Orchestra Of Noises: “Mechanical Dances” という、 “Механические танцы” (1922) のための音楽の再演が収録されています。 検索したら、北海道大学スラブ研究センターのサイトに 村山 久美子 「革命後のモダン・ダンスの波 - ニコライ・フォレッゲル(1892-1939)の芸術」 というテキストがあることに気付きました。こちらはダンスとの関係の話ですが。 これは、村山 久美子 『知られざるロシア・バレエ史』 (ユーラシア・ブックレット No.15, 東洋書店, ISBN 4-88595-337-5, 2001) の第5章に相当するものなのでしょうか。

二つ目の話題は、武田 清 氏の「メイエルホリド劇場の名優エラスト・ガーリンの世界」。 Театр им. Мейерхольда (the Meyerhold Theatre) で活躍した男優 Эраст Гарин (Erast Garin) [ru.wikipedia.org]。 そういえば、俳優に焦点が当てられるとこはあまりなかったなあ、と。 歌舞伎の型と Биомеханика (Biomekhanika) との接点というか、 1928年に松竹の市川左團次一座がソビエト公演した際のエピソードが、興味深かったです。 ビデオの紹介もあったのですが、ロシア語字幕無しということで、全くついて行かれませんでした……。

で、最後に自分も、Лев Кулешов (Lev Kureshov) の映画 По закону (By The Law, 1926) の紹介を簡単にしました。 前回の西部劇映画音楽の話の流れで、アメリカの開拓地 (アラスカ) を舞台とした映画、として紹介したのでした。 この映画は Виктор Шкловский (Viktor Shklovsky) が脚本ということもありますし、 最後の裁判と処刑のシーンでのモンタージュを駆使した心理描写がとても良い映画です。 人を裁くこと、死刑にすること、というテーマもきわめて現代的です。 正直、研究者も多く参加している場で自分がこういう話をするのも釈迦に説法かもしれない……、と かなり腰が引けました。 しかし、こういう場で受動的に話を聴いているだけではいかんと、自分が何に興味あるのか自己紹介代わりのつもりで。 いろいろ興味深いコメントも頂けたし、やってよかったかな、と。

終わった後は、懇親会。 早稲田の居酒屋で呑みながら、昼の話の続き、というか、そこから発展していろいろ。 結局18時半頃から22時半ころまで。話が弾んで楽しかったけれども、呑み過ぎました……。

ちなみに、桑野塾の告知は 『デラシネ通信』 で行われています。次回は3月末〜4月頭頃の予定。 今のところ話題はロシア・アヴァンギャルドばかりですが、 これに限らずロシアについてのディープな話を楽しみたい、という方は是非ご参加下さい。 次回は、日程等が決まったら、ここでも紹介したいと思います。

桑野塾でフライヤを頂いたのですが、3/1から4/28まで、 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館『メイエルホリドの演劇と生涯展 没後70年・復権55年』 という展覧会が開催されます。 まだ、公式サイトには情報がほとんど上がっていないようですが……。 もう暫くすれば関連企画情報も含めて載るのではないかと思いますので、詳しくはそちらをどうぞ。 フライヤに載っているワークショップ、シンポジウム、上映会等の関連企画も興味深いのですが、 どれも平日のみで行かれそうもないのが、ちょっと残念……。

話は少し変わりますが、桑野塾で、 『アート・タイムズ』 の最新号 Vol.5 を入手。 特集は「野毛版・平岡正明 葬送パレード」。 これは力作です。平岡 正明 ファンや野毛のファンは必読ではないでしょうか。

[2602] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Apr 12 0:20:27 2010

土曜は午後に早稲田大学へ。 「桑野塾」に参加してきました。 今回で第三回。前二回 [関連発言] が充実していたので、今回も楽しみにしていました。 前二回に比べて人も増えて、少しずつ盛り上がってきているのでしょうか。 そういえば、談話室でも事前告知するつもりでいて、忘れてしまいました。 Twitter では告知したのですが……。

今回の報告は 大島幹雄 「タカシマの行方 —— 海を渡ったサーカス芸人のその後」。 幕末開国後から20世紀初頭にかけて日本からロシアに渡ったサーカス芸人、そしてその子孫が、 ロシア革命やその大粛清を越えてどういう足跡を辿ったのかについての報告でした。 20世紀初頭にロシアで活動したヤマダサーカスと、それに参加してロシアに残った イシヤマ・マツァウラ、タカシマ、パントシ・シマダの3人のサーカス芸人を追った内容。 限られた資料の中に垣間見る20世紀初頭ロシアでの日本人芸人の活躍ももちろん興味深いものがありました。

しかし、最も強烈な印象を残したのは、 パントシ・シマダの子供たちシマダ・ファミリーによるパフォーマンス映像 (1950年代)。 いわゆる指物と呼ばれるバランスアクロバットを中心とする芸なのですが、 10mはあろう竿を頭の上に立て、その竿の上でもう一人の芸人が倒立などをするというものでした。 それだけでなく、その状態のまま、ハシゴを上り下りしたり、二本ワイヤの上を渡ったり。 この指物の芸については、絵巻のようなものの絵では見たことがあったのですが、 ムービーの映像はもちろんスチルの写真でも観たことが無く、 その長い竿はある程度誇張があるのだろうと思っていました。 しかし、この映像を観て、全く誇張ではないと判りました。 それにしても凄過ぎる技です。映像で観てもそうなのだから、生で観たらなおさらだろう、と。

江戸太神楽を観ているとダイナミックさより繊細な技巧でみせる芸が中心で、 これが日本の芸の芸風なのかと思っていたのですが、 この映像を観て、このようなダイナミックな芸もあったのだな、と。 むしろ、江戸太神楽が繊細なのは、 寄席芸となったため小屋の中で出来る芸に特化していったという面もあるとか。 そういえば、1月に観た伊勢大神楽 [関連発言] も江戸太神楽と違い、 高さのあるアクロバティックな芸もやっていましたし。

また、『ボリショイ・サーカス初来日』 (1958) という45分の白黒映画の DVD上映がありました。 タカシマ・ファミリーほどではないですか、 それでも、現在のサーカスや大道芸ではほとんど観ることが無いような高度な芸の連続。 確かに最近のコンテンポラリー・ダンス的なサーカスに比べると演出は非常に素朴ですが、 技の高度さがそれを補って余りあります。 というか、技のレベルが落ちてきたから、演出で補うようになったのではないか、と思いたくなる程。 もしろん、コンテンポラリー・サーカスにも、それにはそれの良さがあると思っていますが。

報告の他に、武隈 喜一 の本のコレクションの展示もありました。 いかにもロシア・アヴァンギャルドな組版の冊子を実際に手に取ってみることができる貴重な機会でした。 1928年ソ連での歌舞伎公演のパンフレットなんてものまであったり。

桑野塾でせっかく早稲田大学に行くのであればそのついでにと、少し早めに行って、 坪内博士記念演劇博物館に寄って、 『メイエルホリドの演劇と生涯展 没後70年・復権55年』 (4/28まで) を観てきました。展示自体は小さな部屋一室のみのこじんまりとしたものでしたが、 充実した図録 (演劇博物館のみでの販売) が入手できましたし、寄った甲斐はありました。

[2638] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Jul 5 23:31:05 2010

土曜の午後は早稲田大学へ。 「桑野塾」 [関連発言] の第四回に参加してきました。 東京藝術大学大学美術館で始った展覧会 『シャガール —— ロシア・アヴァンギャルドとの出会い』 に便乗して、というわけで、今回のテーマは「シャガール」。 20世紀初頭のアヴァンギャルド期に登場したロシア・ユダヤ人画家 Marc Chagall がお題でした。 今回は遂に 桑野 隆 先生が発表される、ということで、楽しみにしていました。

前半は、桑野 隆 『シャガールの祝祭と演劇』。 ロシア・アヴァンギャルドとの関係というよりも、 ロシア民衆芸術やユダヤ教などとの関係から用いて、 Chagall の作品にあるサーカス的祝祭性を読み取る話が刺激的でした。 Chagall のユダヤ的な面はさすがに知っていましたが、 ハシディスム (Hasidism, ユダヤ教神秘主義) だったとは。 しかし、ユダヤ劇場の壁画の図版とか見ると、納得させられる所も。 もう一つ、印象に残ったキーワードは Михаил Бахтин (Mikhail Bakhtin) の「民衆的グロテスク」「グロテスク・リアリズム」。 フランスでの活動が長かったこともあり、 Chagall の絵はフォーヴィズム 〜 シュルレアリズムの文脈で捉えていたのですが、 Freud 的な無意識というより、民衆芸術や宗教との関連性という点でも マジック・リアリズムに近しい表現だったんだな、と納得。 読み解く参考となるキーワードを得られたという点で、 『シャガール —— ロシア・アヴァンギャルドとの出会い』展の 良い予習にもなりました。

後半は、井上 徹 「シャガールとロシア・アヴァンギャルド映画との距離」。 しかし、メインの話は Фабрике Эксцентрического Актера (ФЭКС; エキセントリック俳優工房) でした。 ФЭКС は、1920年代にレニングラード (Ленинград) を拠点に活動した Григорий Козинцев (Grigori Kozintsev) と Леонид Трауберг (Leonid Trauberg) を中心とする演劇〜映画集団です。 Kozintsev と Trauberg が監督した映画 Чёртово колес (The Devil's Wheel, 1926) の一部を観ました。水兵 Ваня (ワーニャ) が休日に遊園地に遊びに行き、 そこで出会った女性 Валя (ワーリャ) と遊ぶうちに、門限に間に合わなくなってしまう、という場面なのですが、 ジェットコースターや「悪魔の輪」で遊ぶという、いかにもな遊園地デート。 1920年代のレニングラードにもこういう場所があったのだなあ、 当時、モダンな遊びだったんだろうなあ、と、と感慨深くもありました。 ちなみに、Валя を演じる女優は Людмила Семёнова (Lyudmila Semyonova)。 映画 Третья Мещанская (Абрам Роoм (dir.), 1927; Bed And Sofa) での主演が印象深い Semyonova ですが、ФЭКС 出身だったんですね。 Bed And Sofa での航空機デートのシーンを思い出したり。 当時のモダン最先端といういうイメージを持つ女性だったんだろうなあ、Semyonova って。 Semyonova 主演という点でも The Devil's Wheel は全編ちゃんと観てみたいものです。 というか、ФЭКС の映画は観た事無いので、The Devil's Wheel に限らずちゃんと観てみたいものです。 ちなみに、この話をした 井上 氏は、『シャガール』展関連企画 アテネ・フランセ文化センターでの特集上映 『ジガ・ヴェルトフとロシア・アヴァンギャルド映画』 (7/24-8/7) のブログラムを手がけた方です。 諸般の都合で ФЭКС の映画はかけられなかったそうですが、 Дзига Вертов (Dziga Vertov) のレアな映画もかかりますし、是非観に行きたいものです。

[2684] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Oct 18 23:53:30 2010

週末土曜の午後は早稲田大学へ。二週間前に軽く予告しましたが、 桑野塾 [関連発言] の第5回に参加してきました。 桑野 隆 先生を囲んでロシア・アヴァンギャルドに関連する話題を持ち寄るカジュアルな勉強会です。 今回の話題は、音楽ネタ2つでした。

前半は 武隈 喜一 『詩人パルナフとアヴァンギャルド—ロシア革命前後のジャズ史』。 ヴァレンティン・パルナフ (Валентин Парнах / Valentin Parnakh) の 名前は日本語で書かれたソ連のジャズに関する文章で名前をみかけたことがある程度だったので、 とても興味深く話を聴くことができました。 ロシア2月革命とジャズ初録音が同時期の出来事で、その時のニューヨークに トロツキー (Лев Троцкий) がいた、という指摘は目から鱗。 戦間期のヨーロッパにおけるジャズの影響というと big band の swing という印象が強かったのですが、 ロシア革命時期は banjo をフィーチャーした Dixieland jazz だったのだな、と。 Swing は30年代、まだ登場してなかったわけで、よく考えれば当然といえば当然なのですが。 自分の中でちゃんとリンクしていなかったジャズの歴史と第一次大戦前後のヨーロッパ史が、繋がりました。 ラプスーチン (Григорий Распутин) 暗殺時にかかっていたレコードが “Yankee Doodle Dandee” (日本では「アルプス一万尺」で知られる) だった、というトリビアも。 あと、やっぱり、 S. Frederick Starr: Red & Hot: The Fate of Jazz in the Soviet Union 1917-1991 (Update edition, Limelight Editions, 2004) は読んでおいた方がいいかな、と。

後半は、自分の報告、『レオニード・ヒョードロフとウラジミール・ヴォルコフ』。 CD音源やDVD映像を使って現在のロシアのオルタナティヴ/インデペンデントな音楽を紹介するというもので、 今回取り上げたのは、alt rock 文脈の Леонид Фёдоров (Leonid Fedorov) と jazz/improv 文脈の Владимир Волков (Vladimir Volkov) という2人のコラボレーション。 Велимир Хлебников (Velimir Khlebnikov) や Александр Введенский (Alexander Vvedensky) といった Russian Avant-Garde の詩を歌うというプロジェクト [関連レビュー] をやっているので、桑野塾向けの内容になったかなと。 しかし、Khlebnikov や Vvedensky について説明不要で話が通じてしまう、というのも、凄い場で話をしていたんだなあ、と……。 かける音源や映像については自分としてはベストのものが選べたと思うのですが、 そちらに力を入れ過ぎて、配布資料やスライド (家に帰ってから誤りに気付いたり orz)、 話の仕方の出来には、反省する所も少なくありませんでした……。 その場で頂いたコメントの半分はリップサービスが入っていたと思いますが、 次回以降の桑野塾のレギュラー企画として音楽紹介する小コーナーを担当することになりました。 期待を裏切らないよう、ロシアのオルタナティヴ/インディの音楽へのアンテナの感度を高めていきたいものです。

というか、このような発表の場があって、それなりの反応が頂けると、 ちゃんと聴こう、ちゃんと情報を集めよう、というモーチベーションが上がります。 ロシアのオルタナティヴ/インディな音楽については周囲に同好の士がおらず、 自分にとって新鮮だった2000年代前半はまだしも、 2000年代後半にもなるとフォローし続けるモーチベーションを保つのが難しくなっていました。 そんなこともあって、日曜の晩にさっそくいろいろ調べていて、 以前から気にはなっていたけれども入手できないでいたCDが ノヴォシビルスク (Новосибирск) のとあるレコード店に在庫があることに気付きました。 なんだかんだ言って、モスクワ、サンクトペテルブルグに次ぐ、ロシア第三の、そしてシベリア一番の大都市です。 で、メールでコンタクトを取ってみたら、件名 (Subject) がロシア語の返事が……。 本文は英語でなんとかなりましたが。 しかし、これ以上掘り下げるなら、やっぱりロシア語が出来た方がいいんだろうなあ……。

[2705] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Dec 12 21:22:09 2010

週末土曜の午後は早稲田大学で、 第6回 桑野塾 [関連発言] に参加してきました。 桑野 隆 先生を囲んで話題を持ち寄るカジュアルな勉強会です。 今回の報告2件は、古川 忠臣 「タルコフスキーの映像世界—空中浮遊について」と 大島 幹雄 「シマダの行方—続・海を渡ったサーカス芸人のその後」。 今回は30人近い参加と大盛況。ちょっとびっくり。

古川 忠臣 「タルコフスキーの映像世界—空中浮遊について」 は、アンドレイ・タルコフスキー (Андрей Тарковский) の映画に中にある空中浮遊のシーンに着目して、 その意味を分析するというもの。 複数の映画にわたって似たような表現技法を集めると、その意味合いの共通点や違いが浮かび上がって面白いです。 それも、空中浮遊というリアリズムから外れる表現に着目している所が良かったです。 タルコフスキーの映画を久々に観てみたくなったり。

大島 幹雄 「シマダの行方—続・海を渡ったサーカス芸人のその後」 は、第3回での発表の続編。 この半年で進展してた調査結果の報告でした。 この半年で判明したというのは、パントシ・シマダが朝鮮系だった可能性がある、というもの。 話を聞いていて、民族の違いや国境は現在の状況から想像する程高くなかったのかなあ、などと思ったりもしました。 しかし、第3回の発表の際を見た1950年代のシマダ・ファミリーによるパフォーマンス映像を 今回再び見る事ができましたが、何回見ても圧倒される凄いパフォーマンスです。

最後の20分程で自分の小コーナー 「ロシアのオルタナティヴ・ミュージックを聴く」。 「オルタナティヴ・ミュージック」と銘打ったのはジャンルを限定したくないから。 The Wire 誌で 取り上げられているような音楽のロシア (旧ソ連諸国) での対応物、というか、 ヒットチャートを目指しているようなポピュラー音楽とも古典的なクラッシックや民謡とも異なる 現在のロシア (旧ソ連諸国) の音楽の中から、 興味深い試みをジャンルを限定せずに毎回少しずつ紹介していこうという企画です。 今回は、先週末にこのサイトでレビューした Anton Kubikov [Антон Кубиков] と Pro-Tez レーベル の紹介をしました。 レーベルに直接コンタクト取ったときに貰った promotional use only の DJ Kubikov mix MP3 をかけ、 音だけでははなくビデオもあった方が良いかと Masha Era のライブの様子のビデオを紹介しました。 しかし、techno 等をほどんど全く聴いたことが無いと思われる聞き手を相手に、 この手の音楽の何が面白いのか紹介するのは厳しいなあ、と……。 こういうギャップを埋めて巧く興味を引くよう発表する技を身に付けなくてはいけないのかな、と、思ったり。

しかし、発表内容や方法の以前の問題として、今回はポカが多くていろいろ反省することしきり……。 Apple Mini Display Port を VGA 15ピンへ変換するアダプタを持って行き忘れたり (そのため、今回はプロジェクタ投影ができなかった)、 直前にランチに入った店に iPod を置き忘れたり……。

桑野塾の会場は早稲田大学教育学部のある16号館ですが、近くの早大西門通り商店街に友人が 開店準備の手伝いをしていた カフェがオープンしたので、桑野塾の前にランチに寄ってみました。 トナカイ小麦店という店です。 ランチにあまり金はかけられないけど、学生食堂やファーストフード、定食屋の類はちょっと、 という女子学生あたりが行きそうなカジュアルなカフェ、という雰囲気でしょうか。 留学生らしき外国人の客が多めだったのですが、国際教養学部が近くにあるからのよう。 桑野塾前のランチ処として重宝しそうです。