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text by Takawo Nishi


〜98-99シーズン編・その7〜

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2月10日
 エクストゥレマドゥーラ×バルセロナ、R・マドリード×バジャドリッド(ともにリーガ第21節)観戦。バルサのアウェー用ジャージを初めて見たが、噂に聞いていたとおりオランダ代表そっくりのオレンジ色だった。これ、昔からそうなのか? カタルーニャ人感情を逆撫でするんで、来季からはデザインを変えるらしい。ということは、逆にいうとオランダ人を減らすつもりがないということか。来週の大一番を控えて押さえ目にしているせいか、バルサもレアルも勝つには勝ったがピリッとしない。
 とくにレアルはラウールのPK2発でリードしながら、後半40分ごろにサンスのミスで同点に追いつかれる始末。ロスタイムにラウールがハットトリックを決めて事なきを得たものの、イエロとレドンドがいない上にGKイルクナーまで負傷で欠いているせいで、なんか、いくらでも点取られそうな感じ。ロスタイムが5分も過ぎてから時間稼ぎのためだけに投入されたスーケルが哀れだった。最初のボールタッチの瞬間に終了のホイッスル吹かれてやんの。マスコミどころかチーム内でもおもちゃにされてんのかよ。レアルでは唯一、サンチスがサスペンションのためにキャプテンマークをつけていたラウールが光った。勝ち越しゴールを決めた後、アシストしたロベカルが駆け寄ってくるのを差し置いて、ミスしたサンスのところへまっしぐらに走って行って頭を撫でてやったシーンには涙を誘われたね。若いのに、任侠系のキャプテンシーをお持ちとお見受けいたしやしたぜ。
 バルサもめちゃめちゃ格下のエクストゥレマドゥーラに先制される苦しい展開だったが、クライファートのゴールで勝ち越し。クライファート、第6節以来のゴールだってさ。4ヶ月も点取ってなかったのかよ。ばか。

 ま、どっちも来週の直接対決ではガッツあふれるプレイを見せてくれるんだろうけど、その4日前(つまり今日)にオランダ×ポルトガルの親善試合があるらしい。どういうスケジュール組んでんだ。バルセロナなんて、レギュラーの大半が駆り出されるじゃん。フィーゴは間違ってクライファートにパス出しちゃいそうだし、シードルフはバルサ戦で自分がどっちのチームなのかわかんなくなっちゃいそうだ。そんなに莫迦じゃねーか。あと、4月にはブラジル代表とバルサの試合があるそうで、リバウドがどっちのジャージを着るのか今から監督同士でモメているらしい。それを聞いた愚妻は、「前半と後半で着替えればいいじゃない」とのたもうた。それ、面白いじゃねーか。

 ところで、バルセロナはリトマネンにも触手を伸ばしているらしい。おまえら、アヤックスになんか恨みでもあんのか。挙げ句の果てにファンデルサールまで、「バルサに行きたい」と言い出して、ファン・ハールを困らせているとか。もう面倒くさいから、オランダ代表チームでスペインリーグに参戦すりゃいいんじゃないだろうか。

 深夜、NLL(ナショナル・ラクロス・リーグ)のロチェスター・ナイトホークス×フィラデルフィア・ウィングス観戦。そういうのが、世の中にはあるんです。俺も初めて見た。ラクロスってのは、カゴのついたスティックを使う球技である。コートはアイスホッケーみたいな感じで、ゴール裏もフィールドとして使える。GKもいる。ヘルメット着用の競技だなんて知らなかった。しかし、これほど間抜けな球技がほかにあるだろうか。ボールを奪い合う場面なんか、へたくそな剣道を見てるみたいだ。ルールの上で決定的に間違っていると思うのは、ボールを保持したまま何歩でも走れるところである。運動会の「おたまリレー」を思い出したね。バスケでもハンドボールでも移動には歩数制限があって、それ以上に移動するときは敵にボールを奪われるリスク(つまりドリブルしてボールをさらす)を負わなければいけないわけだが、ラクロスにはそれがない。自陣でボールを奪った選手は、ボールをカゴの中に入れたまま、どたどたどたっと敵陣まで走っていくのである。ぜんぜん、おもしろくない。歩数制限を設けて、パスワークを派手にしないかぎり、「見るスポーツ」としてのラクロスには未来がないと見た。なくても、ぜんぜんかまわないけど。 ところで「ナイトホークス」とは「夜鷹」という意味か。

2月9日
 同年代の編集者・ライター仲間と神保町のタイスキ屋で久々に会食。しばらく会わないあいだに編集長とかデスクとか肩書きがついた人が多く、なるほどそんなもんかと思う。そういえば就職したときの最初の上司は35歳だった。俺も今年、35である。会社、辞めといてよかった。部下なんて難儀なもんとつきあっていく自信はまるでない。

 2時半ごろ帰宅すると、BS−1でバルセロナ×A・マドリード戦(リーガ第12節)をやっていた。やはりファン・ハールはうつろだった。

2月8日
 コンサドーレ、石垣島のシロート相手に21得点。なんか意味あんのかよ、それ。といいつつ、ちょっと喜んでる自分がいたりするのだが。

 先週録画しておいたR・マドリード×バレンシア(リーガ第11節)とA・マドリード×バレンシア(第20節)を続けて見る。クラウディオ・ロペスほど、GKと向かい合ったときに落ち着き払っているストライカーが他にいるだろうか。そういえばW杯のオランダ戦でもファンデルサールの股間を憎らしいぐらい冷静に抜いていた。簡単なようで意外に入らない「GKとの1対1」だが、日本代表のFWなんか、それを練習するだけで得点数が3倍になるんじゃねーのか。それにしても岡野はアヤックスで何の練習をしてるんだろうか。

 マニエロは昨日もゴールを決めたらしい。うっほっほ。ベネツィア、どうしちゃったんでしょーか。ローマに3-1で大勝利とは。再来週のペルージャ戦が楽しみだ。だって、それぐらいしか「生マニエロ」を見る機会がないんだもん。そういう意味では、「ペルージャ戦完全放送」もありがたい話ではある。

2月7日
 昼間、家族で井の頭公園へ。平和である。野外ステージ前で、テイクアウトしたマクドナルドを食っていたら、すぐ近くにいたサラス似のギター青年が、バーボンをらっぱ飲みしながら、「情熱が足りな〜い、胸の中が燃えな〜い」という(たぶん)自作の歌を熱唱しはじめたので驚いた。ま、通過儀礼みたいなもんか。吉祥寺の街からこういう青年が消えることはない。それにしても井の頭公園、ギター青年が花盛りである。サラス似の彼を含めて、のべ10人いた。それも、お互いすぐ近くで歌ってるから、混ざってしまってよくわからん。みんなで同じ曲を歌っているようにも聞こえたけれど。

 夜はセリエAを堪能。ラツィオは予定どおりペルージャを粉砕。やっほっほ。左から読んでもSALAS、右から読んでもSALAS、どこから読んでもSALASが2ゴールである。ヴィエリもサラスも、なんて執念深いストライカーなんだ。プレッシャーがかかればかかるほど、力を発揮する感じだな。その代わりGKとの1対1が苦手なようだが。

 バティはお気の毒。痛そうだったねぇ。フィオレンティーナは、ここへ来て選手層の薄さが厳しい。それでもエジムンドはカーニバルを見に(踊りに?)リオへ帰るのか。……そういえば活字の世界では「エジムンド=エヂムンド問題」というのもあったな。どうでもいいけど。

 あと、ペルージャ戦のWOWOWのオープニングは大袈裟すぎて噴飯モノである。べつにラツィオはペルージャの前に立ちはだかったわけではない。そこにいたペルージャを蹴散らしただけだ。だいたい、日本人のマジョリティって、そんなにペルージャの勝敗に一喜一憂してるんだろうか。

 2月6日
 ラ・コルーニャ×セルタ(リーガ第20節)観戦。ジョルディ・クライフ、いつのまにセルタに来たんですか。マンチェスターUからレンタルとのことで、先発出場していた。しかし2-0で負けている後半途中で交代。先入観があるせいかもしれんが、どうもプレイに欲がなく、球ギワに弱いように見える。セルタ、ほんとに彼が必要だったんだろうか。試合は2-1でラ・コルーニャの勝ち。2位チームも食って、十分にUEFA圏内に入ってきた感じ。トゥル・フローレスとかいうアルゼンチン人FWがめちゃめちゃ巧かった。

2月5日
 息子と公園へ。平和である……はずだったのだが、転んで唇を切ってしまい大騒ぎ。ごめんよ、油断して。もうサルなんて書かないから許してくれ。ま、サルはあんなふうに転ばないと思うけど。大汗かきかき近所の外科へ連れて行き、塗り薬やら飲み薬やらをもらう。

 いま(午前0時20分)CSのWOWOwではディナモ・キエフ×パナシナイコス(CL第5節)を放送中。キエフ、すげー寒そう。雪こそ降っていないが、ボールがオレンジ色で、いつピッチが白くなってもオーケーだぜ状態。どうでもいいけど、オレンジ色のサッカーボールって、スーパーボールみたいだ。いや、NFLの優勝決定戦のことじゃなくて、昔ガチャガチャとかに入ってたビヨーンってはねるちっちゃいボールのことですけど。
 そんなことはともかく、11月下旬でこんな状態だと、3月アタマの準々決勝の時期はどんなことになってるんだろうか。逆に、少し春めいているのか? こんなとこで試合しなきゃなんないレアルは不運である。やれトーキョーだやれウクライナだと、忙しいよなー。自分がいまどこでサッカーやってんのかわかってない奴も2人や3人はいるんじゃないだろうか。

2月4日
 録画しておいたバルセロナ×R・ソシエダ(リーガ第8節)、A・ビルバオ×ベティス(リーガ第19節)、さらにR・ソシエダ×A・ビルバオ(リーガ第9節)を前半だけ観戦。どれがいつのビルバオだかソシエダだか、すでに記憶が混濁している。タイムマシンで行ったり来たりしてるみたいだ。次から次へと見りゃいいってもんじゃないですね。しかしルイス・フェルナンデス(ビルバオの名物監督)は、常に激昂していた。彼、ときどき動きがミスター・ビーンに似ている。ともかく、バルサはまだ悪くない。悪くないどころか、すばらしい。なぜか悪くなるのは、たぶん11節のマジョルカ戦からだ。いったい、この3週間に何があった。
 そういえば倉敷アナによれば、最近リバウドとクライファートは「大の仲良し」になってるとのこと。なんでそんなこと知ってるんだろう。んで、「気配りの人」であるリバウドは、親友に点を取らせようと涙ぐましい努力をしているらしい。でも結局、ゴールするのはリバウドなんだけど。一方のレアルは、トヨタカップの練習でカンポとモメていたシードルフが、このあいだはゲーム中にミヤトビッチと激しい罵り合いを展開。カランブーが慌てて止めに入っていた。こういうときに必ず浮かぶのが、いったい何語で? という疑問である。オランダ人とユーゴ人とフランス人は、どうやってコミュニケーションを図っているのであるか。ま、それはともかく、この違いが、両ビッグクラブのチーム状態を如実に表しているような気がする。プロのチームに「仲良し感覚」は不要であるとはいえ、そりゃ、やっぱりねぇ。

(愚妻による)似てる人シリーズ。
 バルセロナのリバウドと、北林谷栄。

2月3日
 昼間、家族3人で青山「こどもの城」へ行く。平和である。場所柄、外国人の親子が多かった。自分の息子が金髪の女の子とおもちゃの奪い合いをしているのを見ると、なんか不思議な気分になる。
 ついでに渋谷カンピオーネへ行ったら、選手のフィギュアの新作が出そろっていた。バッジョ、デサイー、オフェルマルスの3体を思わず買ってしまう。買うかね。こういうモノに手を出し始めると、友達が減るような気もする。だって俺、オフェルマルスの人形持ってるんだぜ。俺が俺の友達だったら、ちょっと引くね。結局、家に帰ったら、飼っているサルに奪われてしまったが。

 10節前のR・マドリード×セルタ(リーガ第10節)観戦。周回遅れのランナーの背中を見ているような気分だが、このカードを含めて見ていない試合も多いので、助かる。WOWOWのセリエAよりも、BS−1のリーガのほうが「厳選素材」で良いカードを放送してるような気がするし。……あ、この日誌で最近のリーガの結果を書くと、またBS−1を楽しみにしてる人に迷惑をかけてしまうのかな。それにしてもレアル、この時期から今にいたるまでイエロ不在時の不安定な戦いぶりを修正できていないわけか。ヒディンク、3ヶ月も何やってたんだ。途中で不覚にも寝入ってしまい、スーケルのPK外しを見ていなかったのが悔しい。

 CSのスペイン・リーグを見ていて、ずっと、あるアナウンサーの声が元TBSの渡辺謙太郎に似ているなーと感じていたのだが、いつも途中から見ていたので(担当アナのクレジットが番組冒頭にしか出ない)確認できず、まさかそんなことはないだろうと思っていた。ところが、今夜オビエド×エスパニョールを最初から見てビックリ。ほんとに、渡辺謙太郎だった。まだ頑張ってたんですね。なんか感動する。たぶん、もう60代後半のはずだぞ。あの声と独特のテンションは健在で、音だけ聞いてると気分はすっかり野球中継だが(シュート・シーンでは「打ったぁぁぁぁ」って言うし)、ちゃんとサッカーも勉強してるようでえらい。実はもともとサッカー好きだったんだろうか。今夜のような泡沫カードの担当ばかりだが、それでも楽しそうである。「何対何でどっちのリード」というアナウンスが多いのは、ラジオ育ちのアナウンサーに特有のクセらしいが。

2月2日
 昼間、飼っているサルと公園に行って遊ぶ。平和である。女の子の集団が「だるまさんがころんだ」に興じていた。

 夜、ビジャレアル×R・マドリード(リーガ第20節)観戦。久々のKKコンビによる放送だった。イエロが復帰したものの、レアルは退屈。バルサをカンプ・ノウで倒したビジャレアルの「夢よもう一度」的奮闘に声援を送る。しかし結果は0-2。レアルの1点目、ミヤトビッチの右からのクロスをオーバーヘッド気味に放り込んだモリエンテスのシュートは、この試合最大にして唯一の見せ場だった。またいいもの見ちゃったぜ。ロスタイムの2点目も、ロベカルのシュートがバーを叩いた後、モリエンテスのごっつぁんゴール。ひとり気を吐くモリエンテスであった。一方のラウールは、センターサークル付近から猛然とドリブルでエリア前まで攻め上がった後に放ったシュートが完全にゴールインしたにもかかわらず、ノーゴールの判定でお気の毒。しかし、ラウールがセンターサークルからドリブルで持ち込まざるを得ないあたりが、今のレアルの辛いところか。中盤が軽すぎる。

 引き続き、バルセロナ×ラシン・サンタンデール(同)観戦。こちらもKKコンビで盛り上がる。フランク・デブール、移籍後初ゴール。グアルディオラのFKをどんぴしゃのヘッドで叩き込んだもので、えらい気持ちよさそうだった。でも後半には2枚目のイエローを喰らって移籍後初退場。2週間後のレアル戦は出られるんだろうか。試合は、「2点取られたら3点取りゃいい」という典型的なスパニッシュ・スタイルになり、2-3でバルサの勝ち。点差のわりにはバルサに慌てたところは少しもなく、強さばかりが目立った。とにかくバルサの攻撃はど迫力である。たぶんBS-1では今週か来週あたりから「ファン・ハールがうつろな表情をしていたドン底状態のバルサ」が登場するんだろうが、なんであんなにダメだったのか、いま見るとよくわかるかもしれない。

 日曜日の試合で、マニエロ(ベネツィア)とソサ(ウディネーゼ)が2ゴールずつ決めたことを知る。最高の気分である。

2月1日
 昨夜、年明けから取り組んでいた高校野球本を脱稿。発熱による遅れを挽回して〆切を守ったのは、われながらエライ。きのうは1日で400字換算50枚分書いた。毎日このペースで書ければ、たった6日で終わる計算だ。そうはいくか。

 解放感の中で見るセリエAは格別であった。ペルージャはそれまでの不調がウソのような戦いぶりでサンプドリアに完勝。強化合宿の成果か。いちいち合宿してネジ巻かないとならんあたりが、このチームの限界のような気もするぞ。ところで新加入のカビエデスとかいうFW、またループ気味のシュートを決めていたが、ふつうのシュートも打てるんだろうか。

 バリ×ラツィオは、移籍してきたばかりの元アズーリ・ロンバルドに注目。にわかファンの俺は初めて見たんだけど、あんな人だったのね。どこにいてもすぐわかるのはいい。どさくさに紛れてゴールを決めるあたり、ベテランらしい妙な頼もしさを感じる。アルメイダ不在でどうなることかと思ったが、終わってみればヴィエリの2ゴールもあって逃げ切り。こういうゲームをドローに持ち込まれるといきなりリズムが崩れかねないものだが、何とか持ちこたえた感じである。勝ってはいるものの、やや中だるみの兆候もあるようなんで、来週はペルージャを粉砕して気合いを入れ直してもらいたい。どうでもいいけど、金田さんはなんであんなにバリが好きなんだ。

 今朝、原稿をバイク便で版元へ送って一件落着。送稿後、A・マドリード×セルタなど横目で見ながら、飼っているサルと遊ぶ。平和である。平和であるが、こんな日々が今月はずっと続きそうである。要するに、仕事がないのである。季節失業者とでも言おうか。ま、いっか。

1月31日
 W杯時に頑固なNHKアナウンサー陣によって提起され、サッカーファンに落ち着かない気分を味わわせていた「スーケル=シュケル問題」は、とりあえず「スーケル」で決着がつき、「シュケル」のNHKは少数派になったようである。「ソルスキア=スールシャール問題」も、たぶんソルスキアで世間は一致しているのだろう。「チラベル=チラベルト問題」は、いまだに「チラベル」派が地道なゲリラ戦を展開しているようだが、こちらはNHKが押し切って「チラベルト」の圧勝。「アーセン=アルセーヌ(ベンゲル)問題」は、世間的にはよくわからんが、たぶん「アルセーヌ」が正解である。古いところでは「フリット=グーリット問題」があり、微妙な判定にもつれ込んだ感があるが、僅差で「フリット」に軍配が上がったと見た。「バッジオ=バッジョ問題」や「ダヴィッツ=ダーヴィッツ問題」は……ま、どっちでもよろしい。

 しかし「オフェルマルス問題」は、難しすぎて解決の糸口さえ見えない。一応は「オフェルマルス」派が主流のように見えるが、反対派勢力が連立政権を組めば過半数を握られてしまうのが現状だろう。なにしろ、前半分は俺が知っているだけでも「オフェル」「オーフェル」「オファー」「オーファ」「オーベル」「オーバー」の6種類があり、後ろ半分にも「マルス」と「マース」と「マウス」の3種類があるのだ。それぞれ組み合わせると18種類もの呼び方が成立するのだから、尋常ではない。まさにミニ政党が乱立した政界のごとき状態である。放送関係者も「勝手にしてくれ」という感じなのか、同じ中継でアナウンサーと解説者が別々の呼び方をしていることも珍しくない。困ったものである。あなたは困ってませんか。ちょっとは困ってみろ。

 そして今、俺がもっとも頭を痛めているのは、「シードルフ=セードルフ問題」である。これは双方、まったく譲る気配がない。NHKはセードルフ、WOWOWはシードルフ。俺としては最初に聞いたのが「シードルフ」だったので「セードルフ」には違和感があるのだが、愛する倉敷アナが「セードルフ」派なので迷うところだ。
 ちなみに倉敷アナはマイルドな口調に似合わず強い信念の持ち主のようで、ロマーリオを「ホマーリオ」、ロナルド・デブールを「ロナルト・デブール」、クライファートを「クライフェルト」と(たぶん)現地読みに忠実に発音するのを基本姿勢にしているようである。ホマーリオ、だぜ。すげー頑固。
 だが現地読みが必ず正しいとも言えないのが難しいところだ。たとえばアルゼンチンのカニージャは、現地読みでは「カニーヒア」だが、本人が「カニージャ」と呼ばれたがっていたという。シードルフ(=セードルフ)は、どっちで呼ばれたいのだろう。会ったら訊いてみたい。でも、聞いても発音が微妙で判別できないかもしれない。オフェルマルスにいたっては、訊く気も起きない。背後から「おーい、オフェルマルスぅ」と呼んでも、きっと振り返ってもらえないと思う。

 そう言えばイタリアでは、中田が「ナーカタ」なのか「ナカータ」なのか「ナカター」なのかが論争になっているそうな。みんな悩んでいるのである。男・岩城は山田太郎のことを「ヤーマダ」と呼んでいたような気がするが、いくら何でも「ナカター」はねーだろ。ま、どれでもないんだけどさ。

1月30日
 火曜日に後半だけ見たラ・コルーニャ×レアル戦(リーガ第19節)を再放送していたので、あらためて観戦。やはりイエロとレドンドのいないレアルの布陣は、見るからに軽い感じだった。CBはサンチスとカンポ、両SBにパヌッチとロベカル、中盤の底にシードルフとカランブー、そしてラウール、モリエンテス、ミヤトビッチ、スーケルというアタッカー陣。ほらね、なんか軽いでしょ。錚々たる顔ぶれであることは間違いないが、すごく頼りない雰囲気。これだけタレントが揃ってるのに、まったく攻め手が見出せないんだから。ラウールなんか、数えるほどしかボールに触ってなかった。ラウールにとってのイエロは、柳沢におけるビスマルクみたいなもんか。ともかく、やはり野球もサッカーも「センターライン」がキモなのである。試合では完全にラ・コルーニャが呑んでかかっていて、レアル、ぜんぜんダメって感じ。あれよあれよと前半だけで3点取られて、ヒディンクはみるみる顔色を失っていた。
 ラ・コルーニャはモロッコ・トリオ(ハジィ、ナイベト、バシールの3人。この試合では一人も出てなかったけど)なんかもいて前から好感を持っていたのだが、これでバルサ、レアルの二強を倒したわけで、見事な大物イーターぶりである。とりわけGKのジャック・ソンゴーが絶好調。カベに当たって角度の変わったロベカルの猛烈なFKを咄嗟に足で止めた反応の速さは、誰にも真似できないかもしれない。

 ところで、「ブラジルのバスコ・ダ・ガマがスーケルに破格のオファー」というおちゃめな噂があるらしい。笑える。実現したらもっと笑うが、たぶんウソである。それにしてもスーケル、年上女優との熱愛報道といい、今回の怪情報といい、イエロー・ジャーナリズムのおもちゃにされている感じだ。ま、いじられやすいキャラクターではあるかもしれん。ラ・コルーニャ戦では相手FKを避けて先制点を許し、ディフェンス感覚ゼロをさらけ出していたが、だんだん憎めなくなってきた。元気出せよ、スーケル。

1月29日
 一昨日、デ・ブール兄弟が「海外」に出たことがないと書いたが、これはまるっきり島国的言辞だった。「外国のクラブでプレイしたことがない」が正しい。

 ところで、あなたは最近、転んだことがありますか。
 俺は昨日、道を歩いていて何の理由もなく転びそうになったのである。すんでのところで態勢を立て直したが、なんかすごく怖かった。「転ぶ」という動詞はわりとよく使うし、ドラマなどではケンカの怪我を「ちょっと転んじゃって……」と言い訳する場面が多いが、現実の生活の中で「転ぶ」ことって、ほとんどない。ふつう、少なくとも成人して以降は、転んだ回数よりも飛行機に乗った回数のほうが多いと思う。船に乗った回数だって、転んだ回数よりは多いんじゃないだろうか。
 だから転びそうになると、やけに怖いのだ。何年か前にデパートのエスカレーターで転んだことがあるが、精神的にもひどいダメージを受けた。だって一人だったんだもん。へらへら笑って誤魔化すしかなかったが、俺の心はとても傷ついたのであった。そういえば、草野球でホームインする際、足がもつれて転倒したときも、言いようのない敗北感があったな。得点したのに、負けたって感じ。
 何が言いたいかというと、いつも転んでいるサッカー選手は大変だなー、ということである。フィーゴなんか、たぶん8分おきぐらいに転ばされていると思う。
 アナウンサーは「おっと、倒されました」などと簡単に言うが、あなた、人に蹴り倒されたことがありますか。俺は、たぶん、ない。もし街を歩いていていきなり蹴り倒されたら、ものすごくショックだと思う。ま、もちろんサッカーの選手が倒されるのは当たり前だし、それが仕事っていえばそれまでだし、オルテガみたいに自分から倒れるのが好きな奴もいるわけだが、それでもやっぱり転んだり倒れたりするのは、ハタで見ている以上に大変なことなんじゃないかと思った次第。ヘディングだって、もし俺がロベカルのクロスに合わせたら、気を失うほど痛いぞ、きっと。たぶん合わせられないと思うが。
 だから何なんだと言われると困るんだけど、要するに、サッカーというのはそういう身体的なリアリズムの蓄積であるはずなのだが、それを自分がどれだけリアルに感じているのかが心許ない、ということを、転びそうになった後、つらつらと考えたわけである。むろん、そんなことより深刻なのは、何の理由もなく転びそうになった俺の足腰であることは言うまでもない。

1月28日
 全豪オープン女子準々決勝、モニカ・セレス×シュティフィ・グラフ観戦。すでに「往年の黄金カード」的な雰囲気が漂っていて悲しい。「相撲で言えば、貴乃花が横綱になった頃の霧島×小錦戦みたいなもんか」と言ったら、「そこまで落ちぶれてないでしょ、まだ」と妻にたしなめられた。おっしゃるとおり。何かにたとえてみたかったけど、うまくいかなかっただけだ。試合はストレートで、「いま世界で2番目に有名なモニカ」の圧勝。グラフ、もはやこれまでか。それにしても、女子スポーツの中ではやはりテニスがいちばん面白い。

1月27日
 ラ・コルーニャ×R・マドリードを途中から横目で観戦。見始めたときはすでに3-0でレアルが負けていた。驚いた。結局、4-0でディポルティボの大勝利。ムスタファ・ハジィは出ていなかったようだが、ジアニ(だったかな)とかいうフランス人(元ランス?)はなかなか良いプレイヤーである。レアル、先週のアトレチコ戦は悪くないと思ったんだけど、どうもはっきりしない。イエロもレドンドもいないんじゃ、それもしょうがないか。「カンプ・ノウでCL決勝を制する」という野望も、このぶんじゃ期待薄だろうな。今の状態じゃ、ディナモ・キエフに勝てる気がしない。

 バルセロナ×サラゴサでは、デ・ブール兄弟がいきなり揃ってスペイン・デビュー。フランクはCB、ロナルドは中盤の右やや下がり目(フィーゴの後ろ)。さすがの2人も、いままで海外に出たことがないせいか、えらく緊張しているように見えた。動きもなんかちぐはぐ。入ったばっかりだから無理もないと思うけど、せっかくいい感じでチームが立ち直ってきたときに、あえて2人を使う必要があるんだろうか。試合には勝ったものの、先週までの勢いが感じられなかったぞ。フランクが相手FWに振り切られて失点した場面は、まさに「アヤックスっぽい失点パターン」(by 倉敷アナ)だった。そんなもんまで持ち込んでどうする。

1月26日
 CSのWOWOWで、インテル×R・マドリード(CL第4節)をやっていたので、BSでだいぶ前に見たのに、また見てしまった。途中出場のバッジョが2ゴールを決めた試合である。こういう試合は、何度見ても楽しい。1点目(インテルの2点目)を決めたときのバッジョは、ゴール前の混戦の中、ひとりクールだった。もっともエキサイティングな場面であるにもかかわらず、ストライカーの脳を支配する一瞬の静謐。俺も、〆切で追い詰められれば追い詰められるほどクールに対処できるライターでありたい。……と言いつつ、今月もあと6日しかないのである。えらいこっちゃ。

1月25日
 セリエA後半戦突入。今後ゴールを決めてくれると俺が喜ぶ選手は以下のとおり。ヴィエリ、サラス、さすらいのFK刑事ミハイロビッチ、マンチーニ(以上ラツィオ)、ルイ・コスタ(フィオ)、ダーヴィッツ(ユーベ)、ソサ(ウディネ)、R・バッジョ(インテル)、カロン(カリアリ)、マニエロ(ヴェネツィア)。早い話、ラツィオと心中である。しかし昨日のシニョーリはすばらしかった。試合はミランに負けたものの、あいかわらず絶好調のようだ。しまった。前半戦、彼のお陰で優勝できたにもかかわらず、「もうくたびれてるんちゃうか」と思って外したのであったが。
 一方、シニョーリを指名した愚妻は大興奮。ラパイッチも指名しているため、その前のユベントス×ペルージャ戦も「それ行け、やれ行け」の大騒ぎであった。こんどは彼女が熱を出さなければよいのだが。

 それにしてもユベントス、勝ったとはいえ、あんなんでCLのほうは大丈夫なんだろうか。移籍してきたアンリも、ギバルシュの決定力不足が乗り移ったかのようにチャンスをフイにしてたし。準々決勝で当たるオリンピアコス、侮れないと思うんだけどねぇ。
 さらに、ユーベが不調だとフランス代表のことまで心配になる。ウクライナ、ロシアと同組のEURO2000予選、ほんまに勝ち抜けるんでっしゃろか。来年の本大会では、W杯で実現しなかったオランダとの対決を是が非でも見たいと思っているのだが。ところでオランダ代表、ポルトガルと親善試合をするとかしたとかいう噂を耳にしたのだが、すごく見たいぞ。CSでやんないのかなぁ。

1月24日
 五輪招致にまつわる騒動は、まじめに報道を見ていないせいもあるが、なんでそんなにみんなで目くじら立てているのか、よくわからない。五輪って、そういうもんじゃなかったのか?
 だけども問題は今日の雨。それより問題なのは、66年のW杯イングランド大会で、「キャビア2缶」で線審の座を射止めた奴がいた、というファンキーなニュースである。そいつが、例のイングランド×西ドイツの決勝でクロスバーを叩いて落ちたボールをイングランドの「ゴール」と判定した張本人であるらしい。でも、そんなこんなも含めてのスポーツである。イングランドの場合、20年後にマラドーナのハンドをゴールにされて帳尻が合っている。選手や観衆は誤審を決して許さないが、たぶんサッカーの神様は許しているに違いない。ああ、なんてフェアな世界なんだ!

1月23日
 R・マドリード×バルセロナ(リーガ第3節。前にも見たんだけど)、R・マドリード×A・マドリード(同第18節)、パルマ×ラツィオ(セリエA第17節)と脂っこい試合を立て続けに見る。サッカーに従属しまくらちよこ。
 マドリード・ダービーは壮絶な試合だった。レアルの2トップは、ミヤトビッチ&スーケルのホット・テンパー兄弟。先制点はこの2人によるもので、スーケルの打ったシュートをGKが弾いたところをミヤトビッチが押し込む。前半1-0。後半開始早々、ジュニーニョのエレガントなゴールで同点。絶妙のクロスを上げたユーゴビッチは、後半になって投入されたばかりだった。
 しばらく膠着状態が続いたが、局面を打開したのはヒディンクの采配である。ミヤトビッチに代えて送り込んだモリエンテスが、パヌッチが執念深く入れたマイナスの折り返しを丁寧に決めて2-1。さらに前がかりになったアトレチコのスキを突いて右サイドをモリエンテスがドリブルで駆け上がり、ひと気の少ないゴール前にクロスを上げる。これを、なぜか猛烈な勢いで前線に上がっていたイヴァン・カンポが不細工に足の裏で流し込んで3-1。勝負あったかに見えたが、サッキも黙っていない。ユーゴビッチに代えて投入したコレアが、FKのこぼれ球を豪快にゴール。火の出るようなシュートだった。3-2。しかし最後はモリエンテスがこの日2つめのゴールをヘッドで決めて、激しい点の奪い合いに終止符を打つ。うむむ、やはりサッカーの試合展開は書くのが難しいな。とにかく、こんなに監督の選手起用がわかりやすい形でずばずば的中する試合も珍しいんじゃなかろうか。まるで代打がぽかすかヒットを打つように、途中出場の選手が次々と得点にからむ試合だった。
 同じ節、マジョルカはセルタに敗れてついに首位陥落。首位セルタとレアル、バルセロナの勝ち点差はわずかに3となった。バレンタインデーに行われるレアルとバルサの一騎打ちが楽しみである。

 パルマ×ラツィオは俺の優勝を決めた試合だったわけだが、なんといってもミハイロビッチのCKをヒールで叩き込んだマンチーニの勝ち越しゴールである。鳥肌立った。いいもの見ちゃったなぁ。ラツィオは良いチームだ。選手それぞれのキャラクターがしっかり「立って」いて、なおかつチームとしての味が出てきた感じ。このうえデ・ラ・ペーニャまで控えてるんだから凄い。ボクシッチの怪我が治ったら、どんなことになってしまうんだろう。さすがに「狂気の大量補強」と言われるだけのことはある。誰か選手が倒れるたびにピッチ脇で交替出場に備えるフェルナンド・コウトの姿には哀愁が漂っていたが。
 ちなみに愚妻には、ビエリが自衛隊員、ミハイロビッチがうだつの上がらない刑事に見えるらしい。たしかにそう言われてみると、ビエリには迷彩服が、ミハイロビッチにはよれよれのトレンチコートがよく似合いそうだ。
 寒空の下、コートの襟を立てて煙草をふかしながら、電柱の陰で容疑者宅を張り込むミハイロビッチ刑事。そして彼は、「寒いなぁ。奴はまだ帰って来ないんですかね」と愚痴る後輩に向かって呟くのだ。「刑事ってのはなぁ、待つのが仕事なんだよ」……。
 刑事ミハイロに、明日はあるのか。がんばれ刑事ミハイロ、負けるな刑事ミハイロ。
 そんなわけで、昨夜から我が家ではミハイロビッチのことを「FK刑事(デカ)」と呼ぶことになったので、あしからずご了承ください。

 最後に、似てる人シリーズ。ラツィオのフェルナンド・コウトと、ジミー・コナーズ。



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