夢の城
― 登場人物 ―
桜の里（三）
― 2. ―
主要登場人物
- 藤野の美那
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玉井の市場町に住む少女。十六歳（数え年、他の登場人物も同じ）。事情があって、市場の老舗の葛餅屋「藤野屋」に預けられ、育てられている。徳政（債権放棄令）に名を借りた柿原党の策略から同門の銭屋の元資を救うために、浅梨治繁の門下の兄弟子の隆文と銭屋で働く娘さわといっしょに、牧野郷に借銭の取り立てに来ている［何をなすべきか（二）］。以前、水汲みの権利をめぐって長野雅一郎と争ったことがあり［春の朝］、川上村の寄合で偶然に出会った雅一郎にそれを蒸し返されて［桜の里（二）下］、取り立ての一行は村人から嫌疑を受ける立場になっている。
- 鍋屋の隆文
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市場の鍋屋で働いている。美那や元資とともに浅梨治繁に剣を習っており、現在の弟子のなかでは一番上である。髪を伸ばして髯を生やし、異様な風体をしている。藤野の美那、さわといっしょに取り立てに来ている。
- （銭屋の）さわ
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市場の娘。市場の銭屋で働いている。駒鳥屋のあざみ、宿屋のさと、鋳物屋のみやなどと友だち。藤野の美那、鍋屋の隆文といっしょに借銭の取り立てに来ている。玉井郡の北に隣接する巣山郡の出身。桜に特別の愛着を持っているようだ［桜の里（一）］。
- 川中村の関所番
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名まえはわからない。小太りで朗らかそうな男。なかなかがんこそうでもある。
- 村西兵庫助（兵庫）
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牧野郷川上村の村人。町から借銭の取り立ての使者（藤野の美那たちのことである）が来ることを予知し、雅一郎の主人 中原克富のところに、町からの使者を追い返すために力を貸してほしいと懇願に行っていた［桜の里（二）上］。大木戸九兵衛、井田小多右衛門と仲間になっている。
- 大木戸九兵衛
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川上村の村人。村西兵庫助の仲間。
- 井田小多右衛門
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川上村の村人。村西兵庫助の仲間。
- 長野雅一郎、一郎、雅継
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玉井の町の北に隣接する中原村の地侍（零細地主 兼 零細武士）で、中原村の名主 中原克富の支配を受けている。春先に藤野の美那と争って［春の朝］、名主に不面目な思いをさせたことを気にしており、川上村の寄合の場で美那と再会し、銭屋の一行を寄合から追い出してしまった［桜の里（二）下］。ばあいに応じて「雅継」や「一郎雅継」の名も使う。
- 中原範大、安芸守
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雅一郎の主人で、中原郷の名主 中原克富の息子。まだ元服したばかりの少年である。
- ふく
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村西兵庫助の家の下女。まだ少女っぽさを残している。兵庫助よりは美千に親近感を持っているようである。
話題としてのみ登場する人物
- 牧野興治、治部大輔
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牧野郷の郷名主で、牧野・森沢の二郷の指導者だった人である。玉井川から用水を引き、村々の開発に尽くした。玉井春野家の初代正興、二代めの正勝に仕えた。定範が守護代の地位を奪った後、それに反抗して決起し、柴山康豊軍の急襲を受けて敗北、捕えられて息子 芹丸とともに処刑された［桜の里（一）］。この反乱は、反乱側に同情的な人びとからは「義挙」と呼ばれている。
- 「おかみさん」、藤野屋の薫
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市場町の葛餅屋「藤野屋」の女主人。藤野の美那の養い親。
- 美千
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村西兵庫助の妻。だが、夫とちがって、柿原党を快く思っていないらしい。中原範大・長野雅一郎の主従も、柿原党に属していると考え、好感を持っていない。
- 柿原忠佑、大和守、入道
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定範の岳父（妻の父）。玉井の北西に隣接する竹井郡の名主出身。配下の「柿原党」は新興金融業者グループとしても活発に活動しており、市場町の銭屋らとライバル関係にある。出家したことになっていて、「入道」とも呼ばれる。
- 春野正興、民部大輔
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玉井春野家の初代。京都から下ってきて、分裂状態だった玉井三郡（玉井郡、竹井郡、巣山郡）を統一した。
- 春野正勝、民部大輔
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玉井春野家の二代め。正興の息子で、現在の守護代定範の兄。
- 柴山康豊、兵部少輔
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巣山郡の代官。春野正興と戦って敗れた柴山兵部大輔時豊の孫。「牧野の乱」で春野定範が追いつめられたとき、出兵してその危機を救った。その当時はまだ元服したばかりの少年だった。
- 柿原範忠、主計頭
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柿原忠佑の息子。ちなみに、名まえは、主君の「定範」から「範」の字をもらい、父「忠佑」から「忠」の字を受け継いで名づけられている。
- 越後守
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春野定範のこと。現在の三郡守護代。要するに「守護大名」である。牧野郷の郷名主だった牧野治部大輔興治の反乱の際には、一度は反乱軍に追いつめられたが、柴山康豊の援軍を得て反乱を鎮圧した。
- 雅一郎の妻
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名まえは「たみ」。勝ち気で、雅一郎はこの妻に頭が上がらないらしい［桜の里（二）上］。
- 中原克富、造酒
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中原村の現在の名主であり、その中原村を中心とする中原郷の名主でもある。範大の父［桜の里（二）上］。