夢の城

― 登場人物 ―


桜の里(五)
― 3. ―

主要登場人物

藤野(ふじの)美那(みな)
 玉井の市場町に住む少女。十六歳(数え年、他の登場人物も同じ)。事情があって、市場の老舗の葛餅屋「藤野屋」に預けられ、育てられている。徳政(債権放棄令)に名を借りた柿原党の策略から同門の銭屋の元資(もとすけ)を救うために、浅梨治繁の門下の兄弟子の隆文と、銭屋で働く娘さわといっしょに、牧野郷に借銭の取り立てに来ている[何をなすべきか(二)]。現在、この取り立てにどう対処するかを話し合うための寄合が牧野郷と隣郷の森沢郷との合同で開かれていて、この寄合に出席している[桜の里(五)1.]
藤野屋の(かおる)
 藤野の美那の養い親。一人で市場の老舗葛餅屋「藤野屋」を経営している。美那がいないので菩提寺の世親寺に墓参に来て、尼に出会い、読経してもらった[桜の里(五)1.]
世親寺の尼
 まだ名まえはわからない。素姓は本文をお読みになればある程度は見当がつくのではなかろうか?
鍋屋の隆文(たかふみ)
 市場の鍋屋で働いている。美那や元資とともに浅梨治繁に剣を習っており、現在の弟子のなかでは一番上である。藤野の美那とは意地を張り合うことが多い。ふだんは髪を伸ばして髯を生やし、異様な風体をしているが、いまはまともな服装で寄合に臨んでいる。
(銭屋の)さわ
 市場の娘。市場の銭屋で働いている。駒鳥屋のあざみ、宿屋のさと、鋳物屋のみやなどと友だち。藤野の美那、鍋屋の隆文といっしょに借銭の取り立てに来て、寄合に出席している。
安総(あんそう)(安総尼)
 川上村の村長 川上木工(もく)国盛の娘で出家して尼になっている。俗名は「お(ふさ)」。まだ若く、ぽっちゃりした丸顔の娘である。中橋渉江に仕えているらしい。
村西兵庫助(ひょうごのすけ)(兵庫)
 牧野郷川上村の村人。村のなかでは大きな屋敷を持っているが、そのぶん借銭も多く、借銭の取り立てを逃れるために中原範大(のりひろ)・長野雅一郎らを村に招き入れた。市場の銭屋衆のライバルの柿原党と関係がある。中原範大・長野雅一郎らと謀って藤野の美那を「水盗人」として捕縛する計画を立てていたが、中橋渉江に看破されて計画が失敗し、面目を失っていた[桜の里(五)2.]
川上国盛(くにもり)木工(もく)
 川上村の村長で、他の村の村長たちとともに合同寄合の議長団の一員として参加している。村西一党の独走と、町の銭屋への返済の件とで頭を痛めている。安総尼の父親でもある。
中橋渉江(しょうこう)
 牧野郷の人びとから知恵者として信頼されている牧野郷川中村の住人。二郷(牧野、森沢)七村合同の寄合の司会進行役を担当している。

話題としてのみ登場する人物

得性(とくしょう)
 世親寺の僧で、銭屋の元資の父親。元資の銭屋のオーナーであり、元資はこの父親の代理として店を経営している。
銭屋の元資(もとすけ)
 得性の息子。藤野の美那とは、浅梨(あさり)治繁(はるしげ)の屋敷でともに剣術を習っている同門の弟子である。隆文・藤野の美那・さわはこの元資のために牧野郷まで借銭の取り立てに来ている。さわの雇い主でもある。
桧山桃丸(ももまる)
 「牧野の乱」で挙兵し、処刑された桧山織部正(おりべのしょう(かみ))興孝(おきたか)の遺子。父のあとを継いで港の名主を務めている。元服しているが、幼名で通している。藤野屋の薫・美那と親しい。美那に牧野郷に行くよう勧めたのは桃丸である[何をなすべきか(二)]
美那の姉・兄
 どういう人かはここではわからない。藤野の美那の夢のなかに少しだけ出てきたことがある[安濃詣で(三)]
(まり)、広沢の上の家の〜
 「広沢三家」の一つ「上の家」の女の子。「広沢の中の家」の葛太郎・繭と同居している。身が軽い。柿原党の一員として村に来ている若い侍 中原範大(のりひろ)のところから逃げ出し[桜の里(三)4.]、現在、牧野家の屋敷跡に身を隠している。
浅梨(あさり)治繁(はるしげ)左兵衛尉(さひょうえのじょう)
 藤野の美那と隆文の剣術の師匠。非常に荒っぽい教えかたをする。隆文はその(現在の)いちばん上の弟子である。
「守護代様」、春野定範(さだのり)越後守(えちごのかみ)
 要するに玉井三郡の守護大名である。牧野郷の名主だった牧野家を取りつぶした張本人でもあり、牧野郷では評判がよくない。
柿原党
 守護代 春野定範の岳父(正妻の父)が経営する新興金融集団。町の銭屋衆とはライバル関係にある。村西兵庫助と関係があり、兵庫助の計画に引きこまれた中原範大・長野雅一郎主従も村ではこの一党と見られている。