「ワイルド・アット・ハート」の革親父
梅田での話。デビット・リンチの新作にワクワクしながら劇場へ。館内は意外とすいていて、余裕で座れた。すると、他にもたくさん空席があるにもかかわらず男が隣に座ってきた。髪はポマードか何かでテラテラ光っている。だが、それ以上におっさんのファッションに目が釘付けになる。

安物くさいレザー(色は赤茶)の上下である。しかも全然似合ってな〜い!
革の匂いが鼻が曲がりそうなくらい強烈。しかし、この匂いがなければ、絶対にバチもん(にせもの)と信じて疑わなかっただろう。隣に座られいやな予感がしたが、私が席を立つ必要もないと思い座っておく。

映画が始まると、思いのほか早く(話題の)ローラ・ダーンとニコラス・ケイジの激しいえっちシーンが始まった。と、おっさんがモゾモゾしてる。私の方へもたれかかってきた。映画の中の二人だけじゃなく、おっさんまで「はふ〜ん」と荒い息遣いを始めている。それでなくても臭くてたまらなかった革の匂いがさらに強く「ぷぅ〜ん」と匂う。「はふ〜ん」「ぷぅ〜ん」責めに耐えること30秒。
はふ〜ん、ぷぅ〜ん、はふ〜ん、ぷぅ〜ん、はふ〜ん、ぷぅ〜ん・・・

もたれかかるオヤジを避けるため、私はすでに座席の端で弓なりの姿勢になっている。こいつ、どこまでもたれてくるつもりやねん〜
だめだっ、限界!思いっきり肩をつかんでグイッと押し戻す。この時点で私の気分は「極道の妻たち」の岩下志麻である。「かかってこいや〜!」である。が、革オヤジはそそくさと席を立ち、行ってしまった。あら?意外にあっさり勝利してしまった。

あの革ファッションはニコラス・ケイジの蛇ジャケットに対抗してるつもりだったのだろうか。聞いてみたかった気もするが、まあいいや。革オヤジが逃げた後、決して「爽やか」とは言えない内容の「ワイルド・アット・ハート」をこれほど清清しい気分で観たのは私ぐらいでしょう。 余談ですが、映画の後半、場内は爆笑の連続でした。暴力もある段階を超えると「滑稽」にしか映らないようです。それともこれが関西感覚?


●ワイルド・アット・ハート ("Wild At Heart" 1990 USA)
監督:ディビッド・リンチ(David Lynch)
主演:ニコラス・ケイジ、ローラ・ダーン

髪フサフサ時代のニコラス・ケイジ代表作のひとつ。簡単に説明すると、愛し合う恋人たちが、母親の猛反対をふりきって一緒になったらこんなんなっちゃった、あらあら大変、という話。当時「サブリミナル効果」という言葉は知らなかったけど、ニコラス・ケイジとローラ・ダーンの「いつでもどこでも必死でセックス」シーンは、あからさまなサブリミナル効果を出していた、といえるでしょう。あと印象的だったシーンは、脳みそがだら〜、とか、腕がボロッ、とか。魔女まで出てくるんです。ね、大変でしょ。
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すりよるオヤジ
「革オヤジ」と前後する体験である。私にとって「ヘンタイに屈した」屈辱的な話である。見ていた映画もすっかり忘れてしまった。きっとショックだったんだろうなあ。 が、この時の敗北が「革オヤジ」への勝利につながっているのです。 だからいいの。あ、「屈した」からってあまり期待しないで読んでくださいね。

今はなき梅田のコマ・シ○バーでの出来事。私は最前列の端の席で映画を見ていた。ちなみにその列に座っていたのは私だけである。本編が始まって5分ほど過ぎた頃、サラリーマン風の男性が入ってきて、同じ最前列の一方の端に座るのが目に入った。20分ほど過ぎた頃だったろうか。座席に座り直した時、偶然目に入ってきたのは、
いつの間にかひとつおいて隣に座っているオヤジの姿であった!
ぎゃ〜っ、いつの間に!
しかも(気付かれないように)私のとなりの座席に座るべく、まさに今、上半身を固定したまま下半身をみょ〜んと曲げながらそろそろと移動するという、アホ丸出しの動きをしているのであった。こんな、吉本新喜劇の演出に使えそうな姿を目の前にしながらも、私は突然のことにパニック寸前である。思わず席を立ち、後ろへ逃げた。逃げながらも「なんで私が逃げなあかんねん」という思いが頭の中を駆け巡る。
映画は後ろの席で最後まで見たし、おっさんが追っかけてくることもなかった。しかし、何かやらかすつもりだったのは一目瞭然である。 くやし〜!くやし〜!
しかし、あの「みょ〜ん」運動を見せたかっただけなのなら、今、申し上げましょう。
結構笑えました。

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「乙女の祈り」の○○○○男
今でも、なぜこのようなことができたのか本人に聞きたいぐらいである。 ヘンタイの心理はわからない。考えられるとすれば女子高生が主人公だったことぐらい。 しかし、ブルマ姿すらなかったのではないだろーか(ニュージーランドの高校生がブルマで体育の授業を受けるのかどうかは不明です)。 あったのは二人の少女が作り上げた残酷なおとぎ話。 しかも実話に基づいているという、どちらかといえば「緊張感ただよう」映画なのだ。 まあ、そんな感じでドキドキしながらストーリーを追いかけてると、座席がカタカタッと小刻みに震え始めた。 どうやら真後ろのヤツが犯人らしい。「ムムッ、貧乏ゆすりなんて始めやがって〜」と最初は思っていた。 カタカタが長い。もうっ、映画に集中できないよ。 むかつきも限界、他の人には申し訳ないが注意しようと決心し、振り向く体勢を整えかけたその時、別の考えが閃光のように頭に浮かんだ。

以下がその時の自問自答である(所要時間約1秒)

「貧乏ゆすりとちゃうかったらどうする?」
「それは・・・この揺れは、つまり・・・○○○○!?」
(普段は大ボケでも妙にカンが冴える私)
「じゃあ、後ろを振り向くのはいかがなものか」
「タイミングによっては実害まで被るかも」
「やめましょう」

という訳で、私は「無の境地」で映画を見ることだけに集中することにした。しかし後ろが気になって気が気ではない。シートに深く座り直し、座席から頭が出ないようにする。「メリーに首ったけ」がすでに公開されていたら、例のシーンを思い出していたに違いない。映画では大笑いしたシーンも現実に置き換えてみると「!!!!」(声にならない叫び)である。 最近(2000年9月)なら「ハピネス」のフィリップ・シーモア・ホフマン扮するアレンくんを思い出す。
映画終了。場内が明るくなった。ひと呼吸し、後ろを振り向く。
そして、私が目にしたものは・・・

座席に残ったティッシュの山であった。ティッシュの主はすでに姿を消してた。

や、やはりそうであったか・・・。
ティッシュの山を囲み、私、友人(前の座席)と二人の女性(後ろ座席)は顔を見合わせ、呆然と立ち尽くしたのだった・・・。
ちなみに、友人はずっと「貧乏ゆすり」だと思っていたそうです。


●乙女の祈り ("Heavenly Creatures" 1994 イギリス/ドイツ/ニュージーランド)
監督:ピーター・ジャクソン(Peter Jackson)
主演:メラニー・リンスキー、ケイト・ウィンスレット

実際にニュージーランドで起こった事件を元に作られてます。ジュリエットとポゥリーン、2人の文学狂少女が夢中になって作り上げたおとぎ話と、二人を理解できなかった大人たちの顛末は、けっこうビビる。少女たちが想像した世界を映像化したシーンは、本人たちの評価は「ダサダサ。そうじゃないっつーのっ!」てことになりかねないけど、ドリーミーでグロテスクな、べっちゃりした雰囲気が充分伝わってくる必見シーンです。さらに、舞台となったニュージーランドの、眩しすぎる恐すぎる緑と太陽の色!こんな牧歌的なところでずっと暮らしていると「●でも●さないと、人生始まんないって感じぃ〜。退屈だしぃ、つまんないしぃ〜」なんて気持ちが起こる人もいるのかも、とちょっとだけヒンヤリしてしまうのでした。
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ちかん捕物帳その1
学生時代、私は梅田の某大型映画館でアルバイトをしていた。このバイトのおかげで大阪北区内であればほとんどの映画をタダで見ることができたため、学生時代は大学の講義より映画を見ることに情熱を注いでいたといっても過言ではない。
ああ、いい時代だったな〜
閑話休題。
ちかんの話である。
映画館にちかんが出ることは日常茶飯事とまではいかなくてもけっこうあった。 これはバイト中の出来事。映画が始まり1時間ばかり過ぎた頃、ホール向かいの劇場から男が飛び出してきた (註:ここは、ホールを囲むように3つの映画館が向かいあっているのです)。 すぐ後ろから女性が「ちかんです!誰か捕まえて〜!」と叫びながら出てきた。 男は階下のレストラン街につながる階段へと駈けていく。 向かいの映画館を担当していたバイト仲間はヒールをはいていて、思うように走れない。 たまたまペッタンコ靴を履いていた私は、迷わず受け付けブースを飛び出しおっさんを追いかけた。 ちかんはゴキブリと同じぐらい嫌いだ。ゴキブリを追いかける時と同じ闘志がぐんぐん湧いてきた。 「絶対つかまえたる!」「革オヤジ」の時は岩下志麻だったが、今回は「あぶない刑事」の柴田恭平である。 「踊る大捜査線」の青島じゃないところが時代を感じるが、自己陶酔もここまでくるとかなりおめでたい。
階段の途中で、あと20センチというところまで追い付くが取り逃がす。 男と私は階下のレストラン街を走ることになった。やはり男だけあって逃げ足が早い。 追いつけない、と感じた私は「ちかんです!つかまえてください!」と叫んだ。 効果絶大。男は反対方向から歩いて来ていた男性客二人にタックルされてあっさりつかまった。 つかまった途端、男は腰を折り顔を伏せながら「すいません、勘弁してください、お願いします、お願いしますぅ〜 ひぃぃぃ〜」と早くも平謝り状態になっている。これが演技なら、神戸浩さんに十分対抗できたと思えるほどの情けなさ。こういう時に「ごめんですんだら警察いらんわ」と言えばいいのだろうな。
さて、この男ですが、教師だったのである。どーにかしてくれ〜っ!
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ちかん捕物帳その2
ちかんを発見したとき、その対処は映画館によって違うのかもしれない。 私がバイトしていた映画館はすぐに警察に通報するようなことはなかったようだ。 身元を確認し、厳重に注意する、というのが基本だったみたい。 被害に遭う女性にしてみればとんだ基本だったろう。 そんなある日のバイト中、おまわりさんが二人事務所に入っていくのが見えた。 ここまではただの「巡回パトロール」にしか見えないが、すぐに副支配人といっしょに慌ただしく映画館に入っていったのを見て「事件発生!」を確信。 さっそく他のバイト仲間に聞いてみると、カップルで来ているとは知らず、女の子にちかん行為をはたらこうとしたおっさんが彼氏に追い回され、トイレにろう城している、とのこと。 アホらし〜。同じろう城するならもうちょっと事件性を感じる場所にしてくれ〜。 しばらくして、手錠をかけられた男がおまわりさんと一緒に出てきた。 当然のことながら、ホールにいた人々の好奇の目に晒されている。 自らの行為をどんどん悲惨にしていった情けない男の顛末であった。
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