毎回友人たちに登場してもらい、エッセイを書いてもらうコーナーです。 今年のお題は「影響をうけたモノ」。

第15回は、フリーライター、そしてシネギミック代表の松岡厚志さん。西宮市に映画館を作る夢に向かって、大・大・活動中。地元ではけっこう有名人かも?
●●松岡厚志さん自己紹介●●

フリーライターやってます、松岡厚志です。
ときには仕事そっちのけで
「映画館をつくろう」活動に燃えてます。
結成団体名は「シネギミック」
街にギミックを仕掛けていきたい、
そんな意味を込めて。

第15回 『マイケル・ムーアの腹の底』 text by 松岡厚志

迷惑な人間である。
なにもアメリカ大統領選挙の演説が
誰も彼も同じでつまらないからといって、
メタルのライブなんかでよく見られるモッシュ
(もみくちゃの群集の中にダイブ)をしたら、
自身がホストを務めるテレビ番組で
大統領に推薦する、だなんて。

当時、一候補にすぎなかったジョージ・W・ブッシュは、
トラックの荷台にすし詰めになり
モッシュを迫る若者たち、
加えて発起人マイケル・ムーア
「騒いじゃダメだよ」と冷ややかに応対した。

その他の候補も、関係者も、
誰ひとり相手にしなかった。
ただひとり、キースだけが勢いに乗じてモッシュ。
結果、アメリカ大統領選は、
ブッシュとゴアの実質2強対決ながら、
キースも「話題性」を獲得し、
振り落とされた他の候補者とは一線を画すことになる。

マイケル・ムーアのやり方は「無謀で野蛮」。
だけど「筋が通っている」。
僕は、そんな彼の「腹の底」を見た気がした。

出世作は映画『ロジャー&ミー』
GMの工場こそすべて、とも言える
ムーアの地元フリントの街は、
工場閉鎖の憂き目に遭い、壊滅状態に。
その現状を糾弾すべく、
ムーアはGM会長ロジャーを探し求める旅に出る。
結果、相手にはしてもらえなかったけれど、
工場閉鎖が引き起こした街の惨状を
同時並行的に様々な角度からレポート。
全編やや深刻ムードが漂うものの、
ムーア流ドキュメンタリーの原点を垣間見た。

続いて『ザ・ビッグ・ワン』
著作キャンペーンのついでに、
巡回する地方の大企業にアタック。
ナイキのフィル・ナイト会長にも接触し、
一貫して「大企業病」を直談判。
なぜ儲かれば儲かるほど国内の工場を閉鎖し、
勤勉に働いた労働者を見捨て、
賃金が安いという理由のみで海外に工場を建設するのか。
ムーアの「無謀で野蛮だけど、筋が通った」やり方は、
ここでも健在だった。
なにせ、映画の売り上げの半分を
地元フリントに寄付するという一文が
ラストに添えられていたのだから。

そして、ユーモア・テイストを盛りこみ、
エンタテインメント性を付加した
『ボーリング・フォー・コロンバイン』へとつながる。
おなじみ、アカデミー賞長編ドキュメンアリー部門受賞作。

僕は兵庫県西宮市で、映画の灯を灯そうと奮闘している。
幸い、素敵な仲間に恵まれ、
シネギミックという団体を結成するに至った。
思いは「なぜこの街に映画館がないの?」
「このままじゃダメなんじゃないの?」と膨らむ。

けれど、そうした「腹の底」を
全開にアピールしても、受け手はちょっとしんどい。
「否定」や「批判」から生まれるものは少ないと思うのだ。
腹の底は「腹の底」だからこそ、人々に届くはず。
だから僕は、芯の通った秘めた思いはあるけれど、
それをユーモアやアイデアで包む表現力で、
周りを魅了していきたい。
「腹の底」の存在価値を見せつけたい。

その意味で、マイケル・ムーアのやり方に、
僕は影響を受けている。
あそこまで過激派に徹しきれないけれど。

シネギミック
http://www.cine-gimmick.com


★前回執筆者スエさんへのメッセージ★

スエさん、どうもです。
読書感想文が大嫌いだった現ライターのわたくしめ。
お恥ずかしい限りですが、ついにで恥ずかしいのは、
落語をちゃんと聞いたことがないことでして。
バシッ(平手打ち)。バシッ(平手打ち)。
精進します。秘湯情報ください。


(レーコより)松岡さん、執筆ありがとうございました!ネット上で偶然知り合った方に執筆していただくのは今回初めて。これぞネットの面白さ!「西宮市」と「映画館」という共通のキーワードのおかげで、会う前からたちまち意気投合しました。この数カ月の間に、松岡さんがたったひとりで始めた「映画館建設活動」がどんどん大きな輪を拡げ、今もぐんぐん成長中。サイトを拝見するたび、必ず新しいことを思い付いたり、実行している、行動力バツグンのシネギミック、これからも応援します!あ〜、こういう出会いがあると、本当にホームページを作ってよかったなーと思います。
さてさて、マイケル・ムーア。今年の3月にアカデミー賞の壇上で「ブッシュよ、恥を知れ!」と連呼した彼の姿を見て、本当に胸がすくような思いがしました。もう、ゴーッ!マイコー、ゴーッ!ですよ。あれから半年。テロや誤射で人の命が今も失われ続けているイラクの惨状を見て、ようやく「ブッシュよ、恥を知れ!」と感じ始めたアメリカ人、明らかに増えています。以前、どこかの新聞で、「アメリカがこのまま暴走することはない。アメリカには自己浄化できる力があるからです」とえらい人が書いているのを読んだけど、その浄化機能、今の現象がそうなんだろうか。
松岡さんが書いてくれた「マイケル・ムーアの腹の底」。これって「アメリカの底力」じゃないかなあ。マイケル・ムーアのようなアメリカ人がいて、自分の国を罵倒し、励ます。こんなアメリカ人がいる限り、アメリカはすんでのところで立ち止まることができる・・・じゃないのかな。
松岡さん、「日本の底力」になってください!いえいえ、まずは「西宮の底力」から。映画館建設、実現させましょう!ゴーッ!松岡、ゴーッ!!!(上の写真はシネギミックのメンバー勢揃い。右から4人目が松岡さんです!)

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