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Review: Claudio Peña: El Fin Del Mundo; Fernando Tarrés: Cruses; Fernando Tarrés: Perplexity; Ramiro Flores: Flores; Barbara Togander: Lovemanual; Paula Shocron Trío: Urbes
2010/04/19,04/27,08/19
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
El Fin Del Mundo
(BAU / Jazz Series, BAU1175, 2008, CD)
1)Era El Mejor De Los Tiempos 2)Girasoles 3)En Otro Lado De La Ballena 4)Titán 5)Tango XXI –Matriz– 6)País 7)Canción De Los Derviches 8)Inmersión 9)Vibrato 10)Lunar 11)Eutrapelia 12)Intona Rumori 13)Autorretrato 14)Hardcore Para Tres 15)El Fin Del Mundo
Claudio Peña (cello), Gabriel Spiller (batería), Gustavo Hunt (clarinete).

jazz/improv の文脈で活動するアルゼンチンの cello 奏者 Claudio Peña による、 少々変則的なトリオでのアルバムだ。 1990年代に活動したオランダの Clusone 3 (Michael Moore (clarinet) - Ernst Reijseger (cello) - Han Bennink (drums)) [レビュー] と同じ編成で、 実際、穏やかな音使いのメロディアスな展開とフリーな展開を行き来する演奏は、かなり似ている。 活動停止してから10年近く経つ Clusone 3 の試みを蘇らせるよう作品だ。

もちろん、Clusone 3 とは違うなと感じさせる所もある。 Han Bennink のようなバタバタっと取り散らかすような drums が控えめなだけ、展開は滑らか。 柔らかい clarinet の音色もあってか Marcelo Moguilevsky の録音 [レビュー] を 連想させられる時もある。 全て自作曲で folklore の伝承曲をやっているわけではないが、 “Era El Mejor De Los Tiempos”、 “En Otro Lado De La Ballena” で穏やかに演奏するところなど、その旋律も folk 的に感じられる。 そして、そういう所も気に入っている。

ちなみに、cello の Claudio Peña には、他に、drums の Zelmar Garín との duo による Obsceno (BAU / Free Series, BAU1144, 2003, CD) というリリースもある。こちらは、free improv 色濃い作品だ。 また、Peña と clarinet の Gustavo Hunt は、 Conduction (Butch Morris) に準じた Santiago Vazquez のプロジェクト Colectivo Eterofonico にも参加していた [レビュー]。

このリリースをした BAU (Buenos Aires Underground) は、2001年に活動を始めた、 ブエノスアイレス (Buenos Aires, AR) とニューヨーク (New York, NY, USA) を拠点とするレーベルだ [関連発言]。 主宰は、ブエノスアイレスとニューヨークで活動する guitar 奏者 Fernando Tarrés だ。

(BAU / Jazz Series, BAU1163, 2006, CD)
1)La Realidad 2)Lod Sueños 3)La Ansiedad 4)La Angustia 5)La Obsesión 6)La Locura 7)La Introspección 8)Los Recuerdos 9)La Certeza 10)La Nada
All music composed and arranged by Fernando Tarrés. Recorded, mixed and mastered on 2005/12/27,28 and 2006/5/19,20.
Rodrigo Domínguez (saxo tenor, clarinete), Fernando Tarrés (guitarra española), Ernesto Jodos (piano), Jerónimo Carmona (contrabajo), Carto Brandán (batería).
Perplexity
(BAU / Jazz Series, BAU1173, 2007, CD)
1-4)Tribute: 1)Camorreando 2)Milongueando Solo 3)Retangueando 4)Canyengueando 5)Faraway, So Close 6)Three Minutes With Reality 7)La Vieja 8)Introduction 9)Presagios De Carnaval 10)Perplexity 11)Obsession 12)Gelsomina
All music composed and arranged by Fernando Tarrés; except 6) by Astor Piazzolla, 7) by Hermanos Nuñez, 12) by Tino Derado.
Donny McCaslin (saxophone), David Binney (saxophone), Fernando Tarrés (guitar), Tino Derado (piano), Ben Street (bass), Jeff Ballard (drums); guest: Lucía Pulido (voice), Ted Reichman (accordion), Pablo Aslán (bass), Satoshi Takeishi (drums).

彼の近作2作のうち Cruses は、 ブレノスアイレスでのレギュラーのグループでの録音だ。 一方、Perplexity に主に参加しているのは、以前から交流のある ニューヨークはブルックリン (Brooklyn, NY, USA) のシーンで活動するミュージシャンたちだ。 リズム隊の Ben Street & Jeff Ballard は Kurt Rosenwinkel のグループで知られた組み合わせ、 Donny McCaslin は Dave Douglas のグループで活躍する saxophone 奏者だ。 ゲストには、ブルックリンのシーンで活躍している Ted Reichman や Satoshi Takeishi、 Songbook プロジェクト [レビュー] で共演した コロンビア (Colombia) 出身の歌手 Lucía Pulido も参加し、かなり豪華な顔ぶれだ。

顔ぶれからすると、Perplexity の方が free jazz/improv 寄りの演奏を聴かせそうだが、実際は逆だ。 Cruses でも jazz のイデオムの強い少々緩い演奏になる時も確かに少なくないが、 “La Realidad”、“La Ansiedad” や “La Obsesión” などの緊張感高い演奏は、 2000年代のブルックリンのシーンと同時代と思わせる演奏だ。

一方、Perplexity の方が、 Songbook プロジェクトで聴かれたような 中南米の folk/roots の要素が強く感じられる。 tango や milonga を感じさせる時もあるオープニングの “Tribute” suite、 ブラジルからの影響も感じる “Presagios De Carnaval”、 Songbook でのように ミニマルなバックに Pulido の強い歌声が乗る “La Vieja”。 繊細で folky な guitar をゆったり聴かせる “Faraway, So Close” や “Gelsomia” もあれば、 目まぐるしく展開が変わる ”Three Mintutes With Reality” のような曲もある。 多様な演奏が楽しめるが、若干まとまりに欠けて、全体を通して聴いたときの印象が薄くなるのが惜しい。

Flores
(BAU / Jazz Series, BAU1169, 2007, CD)
1)Feraldi 2)Hay 3)El Serrucho (I) 4)Rodrigo 5)Barcos 6)*** 7)L'Après-midi d'Un Curupi 8)Dial 9)Zap 10)El Serrucho (II) 11)Otro
Toda la música compuesta y arreglada por Ramiro Flores. Grabado: 2007/5/18,19.
Juan Canosa (trombón), Hernán Jacinto (piano, rhodes), Jerónimo Carmona (contrabajo), Eloy Michelini (batería), Ramiro Flores (saxos alto y tenor, flauta, clarinete, electrónica); músicos invitados: Juan Quintero (voz), Richard Nant (percusión), Carlos Michelini (clarinete), Pablo Ben Dov (percusión), Lucio Balduini (guitarra), Fer Isella (electrónica).

Tarrés のグループの bass 奏者も参加した saxophone 奏者 Ramiro Flores の このアルバムも、現在のブルックリンのシーンからの影響を感じさせる所もある演奏だ。 “Feraldi” や “Rodrigo” のリズムは techno/IDM からの影響を感じるもので、 The Claudia Quinte や Steve Lehman Quintet/Octet すら思わせる所がある。 saxophone だけでなく trombone もフィーチャーしているという所も気に入っている。 しかし、全体を通して聴くと緩めの展開も多く物足りない。 saxophone のソロがベタに感じる所もあるし、 ソフトな歌声をフィーチャーした曲もこのアルバムの中では少々浮いているよう。 良い所もあるので、聴いていて、なんとももどかしく感じた。

Lovemanual
(BAU / Jazz Series, BAU1166, 2007, CD)
1)Love Manual 2)II 2.2 3)Lush Life 4)Surubi Mareado 5)Duke Ellington's Sound Of Love 6)Lección 7)Here's To Life 8)Muni Muni's Drink 9)II 2.1 10)Bonus
Grabado: 2002/08.
Barbara Togander (voz), Enrique Norris (corneta, piano), Gustavo Fantino (guitarra), Paco Weht (contrabajo), Lulo Isod (batería), Mr Liptus (devil stick + bandeja), Héctor Ruiz (vasija mejicana).

女性歌手 Barbara Togander のアルバムは free の色濃い jazz/improv の作品だ。 収録曲の半分約、Norris の trumpet をフィーチャーした4tetの演奏に、 Togander (“Surubi Mareado”)、 もしくは Mr Liptus (“II 2.2”、“Lección”、“II 2.1”) をフィーチャーしたもの。 これらの演奏は、ディストーションかがった guitar や自由度高めながら funk を感じるリズム隊もテンション高い。 特に、Togander のスキャットをフィーチャーした “Surubi Mareado” は このアルバムのベストトラックだ。 それだけに、この編成での曲が1曲しか収録されていないのが残念。 残り半分は、Norris の piano (もしくは Ruiz の打楽器) のみを伴奏に Tangander が 主にスタンダード曲を歌うというもの。 テンション高い演奏とコントラストを成しているとも言えるが、少々掴み所に欠けるようにも思う。

最後に、BAU からのリリースではないが、関連する録音をもう一枚。

Urbes
(BlueArt, BARCD128, 2007, CD)
1)Urbes 2)Espirales 3)Nocturna 4)Crónika 5)7días 6)Chelsea Bridge 7)Por Esta Puerta 8)Conception
Grabado: 2007/03/26,27.
Paula Shocron (piano), Jerónimo Carmona (contrabajo), Carto Brandán (batería); músicos invitados: Rodrigo Dominguez (saxo, tenor y soprano) 2,3,8.

Fernando Tarrés のグループのレギュラーのリズム隊 Carmona - Brandán を従えての、 女性 piano 奏者 Shocron の trio。 華やかで強い音色による free 色濃い演奏で、1990年代前半の Myra Melford Trio や、 1990年前後の Marilyn Crispell や Geri Allen の trio などを連想させられる所もあり、 そういう所は気にいっている。 しかし、通して聴いていると、ソロで減速するように感じられるところもあるし、 スムースな展開が続いて少しアブストラクトな展開を聴かせて欲しくなる時もある。 そんな所もあってか、全体としては、いまいちに決め手に欠く感があるのも確かだ。 ちなみに、3曲で Tarrés のグループの saxophone 奏者 Rodrigo Dominguez がゲスト参加している。