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アルゼンチン (Argentine) の音楽について

2005年09月頃のアルゼンチンの音楽に関する一連の発言の抜粋です。 古い発言ほど上になっています。 リンク先のURLの維持更新は行っていませんので、 リンク先が失われている場合もありますが、ご了承ください。 コメントは談話室へお願いします。

[1397] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Sep 4 21:33:29 2005

レコード店のセールといえば、もう終了してしまいましたが、8月後半に 中南米音楽 もセールしていました。 ブラジル (Brazil) やアルゼンチン (Argentine) も「深い追い禁止」エリアで、 普段はインターネットで聴かれる音源を聴いたり中古で拾う程度。 しかし、こういうセールの機会を使って、独立系レーベルから出てくる 同時代的な jazz/improv 〜 roots 〜 avant/post/indie-rock/pop ものに 少しは手を出してみるようにしています。 今回はアルゼンチン物にウェイトを置いてみました。 というわけで、セールで買ったものだけではないですが、 最近入手したアルゼンチンのリリースから。 本当は期間中に「セール中ですよ」と 話題を振りたかったのですが、間に合わなかったという……。

Alvarezabala Dúo, Halo De Luz (self-published, 2005, CD) は、半年以上前のリリースで、 Marcelo Moguilevsky の弟子筋ということで以前から気になっていた作品でした。 インターネットでの 試聴 でも klezmer 風味の落ち着いた guitar と clarinet の duo で、 1枚通して適度な緊張を保ちつつリラックスして楽しめました。 そういうわけで、レビューを書きました。 これはお薦めです。

ところで、ブエノスアイレスのインデペンデントな音楽シーンの中でも Marcelo Moguilevsky (reeds) は僕の一押しなのですが、 Ceser Lerner (piano,accordion) との duo Klezmer En Buenos Aires (レビュー 1, 2) のウェブサイトが無くなってしまっています。まだ活動しているのでしょうか? Santiago Vazquez らとの Puente Seleste は新作 Mañana Domingo (Musical Antiatlas Productions, MAP175, 2004, CD) をリリースしています。前作 Nasando El Mar (Musical Antiatlas Productions, MAP174, 2002, CD) (レビュー) 同様の路線で、普通に良い作品だと思いますが、 レビューを書きたいと思うには何か物足りないんですよね……。

この界隈の作品といえば、 Nora Sarmoria / Marcos Cabazaz, Bichos Y Malesaz (Nora Sarmoria, NS1007, 2005, CD) も、なんとなく Alvarezabala Dúo, Halo De Luz と似た雰囲気のある作品です。 piano - marimba の duo ということで、楽器の組合せは全然違うのですが。 全体として落ち着いた展開と、女性の歌声のせいかしらん。 electric piano - vibraphone の組合せになるときもあって、 Gary Burton / Chick Corea, Cristal Silence (ECM, ECM1024, 1972, LP/CD) あたりをなんとなく思い出したり。 ということは、女性スキャットは Flora Purim か (違)。 piano - marimba などパーカッシブですし、けっこう好みの音です。 が、もう一癖欲しいんですよね……。うーむ。

しかし、中南米音楽も この6月に店舗を閉じて通販専門になってしまいました。 インターネット通販が一般化する中、 やはり、店舗を維持するのは大変なのでしょうか……。うーむ。 って、自分も今までセールの時くらいにしか店に行ったことがありませんでしたが……。

[1402] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Sep 11 22:02:52 2005

先週末に続いてアルゼンチン (Argentine) の音楽の話を。 って、特に重点を置いてフォローしているわけではないのですが。

アルゼンチンのブエノス・アイレス (Buenos Aires) と アメリカのニューヨーク (New York, USA) に拠点を持つ BAU (Buenos Aires Underground) というレーベルがあります。活動を始めたのはおそらく2000年代に入ってから。 jazz を中心としたレーベルですが、 "Jazz Series" の他 "Folk Series"、"New Music Series" があります (New Music とはここでは現代音楽のこと)。 アーティスティック・ディレクションは guitar 奏者でもある Fernando Tarrés。 アメリカでショーケース的なフェスティバル Buenos Aires Underground Jazz Festival も開催しています。 NY と直接的なコネクションがあるせいか、 その影響を受けた演奏のリリースが多いという印象を受けます。

このレーベルについては、昔、Mark Feldman (violin) や Erik Friedlander (cello)、 Drew Gress (bass)、Satoshi Yakeishi (drums)、Ted Reichman (accordion) など NY down town シーンで活動するミュージシャンが参加していたこともあり、 Fernando Tarrés の BAU からの1作目 Presagios De Carnaval (BAU, BAU1132, 2002, CD) を聴いてみたことがありました。 しかし、そのときはたいして印象に残りませんでした。 そんなわけで、 Santiago VazquezLos Años Luz レーベル界隈 はフォローしていましたが (当時の発言)、 BAU 界隈はほとんどスルーしてしまっていました。 しかし、最近、そちら方面も新鮮味を感じなくなってきたので、 少しずつ BAU 界隈もフォローし始めたところです。

そんな中で気に入った作品が、 Mariana Baraj, Lumbre (BAU, BAU1139, 2002, CD)。 "Folk Series" に分類されていますが、楽器音のせいか folklore 色は薄く、 むしろ roots-oriented jazz。 Baraj の変に細工しない真っ直な歌唱も気にいりました。 そんなわけで、3年前のリリースで、買ったのも2ヵ月程前ですが、 レビューを書いておきました。

Baraj は、Pepi Taveira, Dahomey Dance (BAU, BAU1154, 2004, CD) にも参加しています。未入手ですが、 試聴 した限りでは、普通の jazz でイマイチ……。うーむ。 あと、歌ってはいませんが、 Nuria Martinez, Caminando Alto (Llajta Khuyaj, J-999, 2003, CD) でも2曲で percussion 奏者として参加しています。 こちらは、もっと folklore 寄りの作品ですが、 Fernando Kabusacki (guitar)、 Nora Sarmoria (piano) 等の参加で 普通の folklore にはなってません。ま、地味な感じでもあるんですが……。 ちなみに、3年前に Nuria Martinez / Fernando Kabusacki / Valdo Delgado, Mar Azul (Los Años Luz, LALD004, 1999, CD) をレビューしたことがあります。

ちなみに、BAU 界隈で気になっているのは、やはり未入手ですが、 Gordöloco Trío, Antenas (BAU, BAU1138, 2002, CD)。 試聴 した限りでは、trumpet / bass / drums の勢いある演奏がよさげです。

[1497] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sat Dec 31 15:18:26 2005

今年の秋に3年前のリリース Lumbre (BAU, BAU1139, 2002, CD) を紹介 (レビュー, 関連発言) したアルゼンチン (Argentine) の女性歌手 / percussion 奏者 Mariana Baraj の新譜 Deslumbre (Los Años Luz, LAL036, 2005, CD) をやっと入手しました。相変わらずの folk/roots 志向の jazz / improv の佳作といった出来ですし、 レビューを書いておきました。 というか、Lumbre のレビューを書いた頃には リリースに気付いていたのですが、なかなか入手できないでいたのでした。 年内は無理かなぁと思ってたのですが、ぎりぎり間に合いました。

Deslumbre 関連盤として、バックのミュージシャンによる Juan Pablo Arredondo, Lo Que Las Paredes Oyen (BAU, BAU1153, 2004, CD) も入手したのですが、こちらも悪くなかったです。 NY down town シーンの影響強過ぎという気もしないでもないですが、Mariana Baraj や コロンビア (Colombia) の女性歌手 Lucia Pulido らとの活動もありますし、 BAU (Buenos Aires Underground)Los Años Luz といった アルゼンチンのレーベル界隈のシーンを含め、今後の展開に期待したいです。 そんなわけで、併せてレビューしておきました。

[1525] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jan 29 21:52:37 2006

コロンビア (Colombia) 出身で現在ニューヨーク (New York) を拠点に活動する女性歌手 Lucía Pulido が、アルゼンチンはブエノスアイレス (Buenos Aires, Argentine) の BAU (Buenos Aires Underground) レーベル界隈で活躍する jazz/improv のミュージシャンたちと、 Lucía Pulido, Fernando Tarrés & La Raza Songbook I (Beliefs) (BAU, BAUCD1157, 2005, CD) をリリースしています。バックの面子が Mariana Baraj, Deslumbre (Los Años Luz, LAL036, 2005, CD) (レビュー) と同じで、 期待を裏切らない出来です。 Pulido というと6年近く前のリリースになりますが Lucía Pulido, Cantos Religiosos Y Paganos De Colombia (Religious And Pagan Songs From Colombia) (Intuition, INT3263-2, 2000, CD) がとても良いので、併せてレビューを書きました。 どちらも jazz/improv-influenced folk/roots な作品としてお薦めですが、 まずどちらからといえば、 Cantos Religiosos Y Paganos De Colombia の方がお薦めです。ちなみに、この作品の編曲は、去年末に Vortex として来日して 八木 美知依 (Michiyo Yagi) とライヴ (レビュー) した 武石 聡 (Satoshi Takeishi) です。

この界隈の作品としては、Songbook I (Beliefs) の guitar 奏者 Juan Pablo Arredondo も参加した Sergio Verdinelli, Primo (Buri, no cat. no., 2005, CD) というものも入手。 Verdinelli (drums)、Arredondo (guitar) に、Mariano Otero (contrabass) という power trio で ゲストに Rodrigo Dominguez (tenor saxophone)。 Juan Pablo Arredondo, Lo Que Las Paredes Oyen (BAU, BAU1153, 2004, CD) (レビュー) ととても似た作品で、 1980年代末〜1990年代の Tim Berne や Marc Ducret の界隈の作品を聴いているみたい……。 好きな音ではあるのですが、もう一癖欲しいです。 ちなみに、サイズも特殊な写真集付き豪華ジャケットです。

ところで、Lucía Pulido が1990年代初頭までやっていた duo Iván Y Lucía のアルバム3枚って 入手しやすい欧米でリリースされていないのかしらん。 アンソロジーでもいいから聴いてみたいものです。 この duo の相方の Iván Benavides は、 レビューした2作にも曲を提供しているわけですが、 メインの活動としては、1990年代後半には rock en Español というか Latin alternative のバンド Bloque を結成、 さらに現在は Sidestepper の メンバーとして活動中です。 2人ともその後の活動が充実しているだけに、その出発点でどんな音楽をやっていたのか気になります。