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Review: Pole: Wald; Vilod: Safe In Harbour; Moritz von Oswald Trio: Sounding Lines
2015/12/28
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)

少々落穂拾い気味ではありますが、 今年リリースのベルリンの minimal/dub techno を3作程まとめて。

Pole
Wald
(Pole, PL13CD, 2015, CD)
Akt 1: 1)Kautz 2)Salamander 3)Moos (live); Akt 2: 4)Mysel 5)Wurzel (live) 6)Aue (live); Akt 3: 7)Käfer 8)Fichte 9)Eichelhäher
Written & produced by Stefan Betke.

2000年代にレーベル ~scape を主宰してベルリンの minimal/glitch/dub techno シーンを牽引した Pole こと Stefan Betke の Steingarten (~scape, sc44cd, 2007, CD) [レビュー] 以来となる久しぶりの新作。 といっても、~scape レーベルを畳んだ直後の2011年から2012年にかけてリリースされたシングル3タイトル Waldgeschichten を受けてのもので、“(live)” と書かれている3曲はそれらのシングルの曲の別テイク (おそらくライブ音源) だ。 dubwise な重低音と glitch な高音で枠取られた疎らな音空間作りは相変わらず。 そんな音空間の中に、ぽつぽつと可愛らしいフレーズを淡々と置いていくような所が気に入っている。

流行りのあるこのシーンにおいてかなりマイペースな活動。 今では Pan レーベル界隈がぐっと盛り上がっているし、そちらも楽しんだけれども、 結局 Pole の枯れた音作りが落ち着いて楽しめた。

Vilod
Safe In Harbour
(Perlon, PERL105CD, 2015, CD)
1)Modern Hit Midget 2)Safe In Harbour 3)Mulpft 4)Beefdes 5)Zero 6)Mosi Fud 7)Surmansky Blow
Written & produced by Ricardo Villalobos & Max Loderbauer.

Re: ECM (ECM, ECM2211/12, 2011, 2CD) [レビュー] に始まり Conrad Schnitzler [レビュー]、 Neneh Cherry [レビュー]、 Wolfgang Haffner [レビュー] など、 素晴らしいリミックス仕事をしてきたベルリンのDJ/producer の2人、 Riccardo Villalobos と Max Loderbauer が、ついに Vilod 名義でアルバムをリリース。

リミックス仕事ではないものの、電子音というよりも楽器音などのアコースティックな音を 疎らに組み立てる音作りで、架空のリミックスワークのよう。 しかし、低音があまり出ておらず minimal なグルーヴ感の無い曲が占める作りは、 淡々とし過ぎて、取り留めなく感じられる。 今までのリミックス仕事から期待が大き過ぎたせいか、物足りなく感じたアルバムだ。

Moritz von Oswald Trio
Sounding Lines
(Honest Jon's, HJRCD72, 2015, CD)
1)Sounding Lines 1 2)Sounding Lines 2 3)Sounding Lines 3 4)Sounding Lines 4 5)Sounding Lines 5 (Spectre) 6)Sounding Lines 6 7)Sounding Lines 7 8)Sounding Lines 8
Produced by Moritz von Oswald with Max Loderbauer. Mixed by Ricardo Villalobos.
Tony Allen (drums), Max Loderbauer (synthesizers), Moritz von Oswald (percussion sequencing, synthesizers, additional electronics).

Fetch (Honest Jon's, HJRCD67, CD, 2012) [レビュー] 以来久々の Moritz von Oswald Trio のアルバムは、 Vladislav Delay が抜けて、代わりに drums で ex-Fela Kuti's Africa 70 の Tony Allen が参加。 また、ミックスで Ricardo Villalobos が参加している。 管楽器のゲストはなく、ミニマルな音作りに戻っている。 afro-beat 的ではないものの、Tony Allen のドラミングを大きくフィーチャーして、 丁寧に刻むフレーズをライブでリミックスするよう。 Vilod のような取り留めないトラックもあるが、 トラックの1, 3, 6, 7のように少々変則的なグルーヴ感もあるトラックもある分だけとっつきやすい。 ミニマルな中に跳ねるような感覚もある 3 や、転がるような 6 が気に入っている。