TFJ's Sidewalk Cafe > Cahiers des Disuqes >
Review: The Music Of Heinz Holliger - Scardanelli-Zyklus (concert) @ Tokyo Opera City Concert Hall: Takemitsu Memorial, Tokyo
2017/05/28
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル, 初台
2017/05/25, 19:00-21:30
Heinz Holliger: Scardanelli-Zyklus für Solo-Flöte, kleines Orchester, Tonband und gemischten Chor (1975-1991).
Heinz Holliger (conductor), Felix Renggli (flute), Latvijas Radio Koris [Latvian Radio Choir], Kaspars Putniņš (chorus master), Ensemble NOMAD.

現代音楽 (contemporary classical) の作曲コンペに合わせて開催されるコンサート『コンポージアム』。 今年の審査員は Heinz Holliger。 ECM New Series からリリースがあるので全く馴染みが無かったわけではないものの、 Scardanelli-Zyklus は未聴。 Friedrich Hölderlin の詩に基づく Die Jahrszeiten (1975-1978-1979) の12曲、 Übungen zu Scardanelli (1978-1991) の11曲、 flute ソロの曲 (t)air(e) (1980-1983) の 全24曲を再編したツィクルスです。 (ちなみに、Scardanelli は Hölderlin の筆名の一つ。) CDで聴くよりも集中できるだろうと足を運びましたが、 休憩なしで約2時間半、ここ最近の『コンポージアム』中でも最もハードモードなコンサートでした。

全3部構成の第1部は取り付くしまも無く、仕方なくパンフレットに載った歌詞を読みながら聴くようしたところ、 第1部最後の “Der Winter (III)” 「冬(III)」あたりから合唱が耳に入ってくるようになりました。 それ以降、第2部では合唱が楽しめるようになりました。 特に静かに響き続けるような合唱が良く、“Eisblumen” 「氷の花」など美しく感じる程でした。 このまま最後まで行けるかなと思いきや、第3部で再び捉えどころ無くなってしまいました。 作品全体として微妙な音使いが多いわけですが、 特に第3部では解説読みながら聴いていて、聴こえていないのではないかと思われる音が目立ちました。 例えば、“Ad Miarginem” 「余白に」で使われたテープ音源の低音部や、 “Der Herbst (I)” 「秋(I)」や “Der Winter (II)” 「冬(II)」の合唱での倍音成分など。 ほとんど最後尾という席だったので、音が届かなかったのかもしれません。

『コンポージアム』のコンサートは、 flute / saxophone 200人のオーケストラを使った Salvatore Sciarrino (2011) [鑑賞メモ] や percusshon 奏者のパフォーマンスも楽しかった Peter Eötvös (2014) [鑑賞メモ] など、 良くも悪くも色物っぽいとっつきやすさのあるものが多いわけですが、 たまにはこういうハードモードなのもいいかなと思うくらいには興味深く聴くことができたコンサートでした。