今年4〜5月の展覧会 『Point Of Contact』 (TSCA Kashiwa) (レビュー) の続編の展覧会だ。 そのヴァリエーションということで作品の面白さの核にある所は変わっていない。 しかし、小作品を除くと新作1作品 (「20の白熱灯のための接点 #2」) だけの小規模の展示ながら、 TSCA Kashiwa の展示に見たスケーラブルな点だけではない、 様々な展開の可能性を感じさせる面白い展示だった。
この「接点」シリーズの作品は 同じ白熱球を直線状もしくはマトリックス状に規則的に並べるものがほとんどだった。 そして、単調な白熱球の配列は産業用機器のような無駄の無さ、武骨さ、無機質さを感じさせ、 そこにハードコアな良さがあった。 例外としては、TSCA Kashiwa の「20の白熱灯のための接点」で 様々な白熱球を床に扇状に広げるように配置していたが、 それもむしろ無造作を演出するものだった。 今回の作品では様々な明るさの白熱球が壁面に規則性を排するように配置されている。 それは壁面にリズムを付けるようであり、 その微妙な瞬きもあってイルミネーションのような美しさすら感じさせるものだ。 そして、そういう展開も可能な所に、この「接点」シリーズの懐の深さを感じた。
さらに、ギャラリーの大きなショーウィンドーや反射の多い壁や床を生かし、 不安定な接点で白熱球を瞬かせているというより、 ギャラリー一室全体を瞬かせている。 日没後に外から見ると、それがくっきり見えて面白い。 このような様々な建物を瞬かせるインスタレーションに展開できるというのも、 この作品の懐の深さだ。
しかし、ショーウィンドウ越しに観ただけでは、 その不安定な接線が放つ火花、ジリジリいう雑音、焦げ臭さといった この作品の面白さが伝わらないのも確かだ。 今回の作品では不安定な接点として 回転するチェーンからワイヤで吊るした金属棒を使っていたが、 それほど激しい火花が飛び散るものではない。 「10の白熱灯と7本の蛍光灯のための接点」 (2005; Gallery Q, 2006) (レビュー) のような、観る者に火花を浴びせかけるかのような危険さ、 その直接身体に働きかけるような感覚も 「Spin Crocodile」 (1997) など彼の作品が持っている面白さだと思う (レビュー)。 今回の展示はそういう部分を抑え気味に御洒落に仕上げており、それも良いのだが、 それとは別に、危険さのような感覚を強調するような方向に この作品を展開したものも観てみたいようにも思った。
このグループ展に出展された新作は、 不安定な擦動接点の針の部分に金属棒の代わりに鉛筆が使われている。 そのため、単に擦れて火花が散るだけでなく、その針の動きが軌跡を描いていく。 金属棒を使った作品でも跡は残るが鉛筆ほどはっきり見えるものにならないので、 その視覚化された樣が面白かった。 この方向での展開も良いように思う。
この作品の2重のアームによって描かれる軌跡は、 単純な軌道を描いているようで微妙なブレを持った準周期軌道を描き出している。 これで、時々この準周期軌道を飛び出して違う準周期軌道に移ったりすれば、とも思った。 こういう軌道が残る作品だけに、 アームの自由度等を調整して良い具合に不安定な軌道を描けるようになると面白そうだ。