戦後間もない1950s-1960sの日本の女性の美術作家による抽象的な絵画表現を、当時の欧米での潮流の日本での受容の観点から振り返る展覧会です。
1957,8年のフランスの美術評論家 Michel Tapié 来日による欧州の潮流であるアンフォルメル (Art informel) [関連する鑑賞メモ] の「旋風」の中で Tapié の評価もあって女性作家も評価されるようになったが、
次第に Tapié やアンフォルメルが批判されるようになり、1960年前後からは米国の潮流であるアクション・ペインティング (Action Painting) [関連する鑑賞メモ] が受容される中で、女性作家が批評対象から外れるようになったと言います。
アンフォルメルとアクション・ペインティング (もしくは抽象表現主義 (Abstract Expressionism)) は同時代の熱い抽象表現の欧州と米国での潮流という認識でしたが、
日本での受容には前後があり、後者の立場から前者が批判的に見られ、また、女性作家の評価が異なっていたということを知りました。
戦後美術を観る解像度が少し上がったでしょうか。
取り上げられてい作家は、この時期に抽象的な絵画表現に取り組んでいた女性作家で、具体美術協会(田中 敦子, 白髪 富士子) [関連する鑑賞メモ] や
実験工房 (福島 秀子) [関連する鑑賞メモ] などの活動に関わった作家や、
当時の抽象表現を推進した作家・批評家からの「後押し」を受けた作家が中心でした。
最近の活動もあり少し降った世代の作家という印象を持っていましたが、草間 彌生 もこの世代と認識しました。
2023年のコレクションによる小企画『女性と抽象』 [鑑賞メモ] とも被るところがありましたが、
『女性と抽象』で1/3を占めていた女性画家協会は『アンチ・アクション』のスコープでは前駆的な位置付けだったので、相補的にも感じられました。
昨年の東京都現代美術館コレクション展示室の企画「竹林之七妍」 [鑑賞メモ] に取り上げられた作家も含まれ、この界隈の最近の再評価の動きを感じます。
しかし、それらの展示と比べても、コレクション展中の小企画ではなく企画展ということもありますが、質量共にそして企画の切り口という点でも見応えがありました。
このような企画意図はありますが、1950s-1960s日本におけるアンフォルメルやアクション・ペインティングの受容や批評等の中での女性作家の扱いを、関連資料の展示で浮かび上がらせるような展覧会ではありません。
むしろ、それは展示前半にある年表や、会場14箇所で配布されるそれぞれ異なるテーマのテキストが書かれたA6判4ページの「別冊」で示される程度。
展示としては、関連する14名の作家の作品としっかり見せるものでした。
アンフォルメルや抽象表現主義と同時代を感じさせる抽象的な絵画が主ですが、
立体派などの戦間期アバンギャルドに近いデフォルメされた抽象度高めの具象や、60年代のポップアートに近い色彩感覚の作品まで、多様性も感じる展示でした。
多くはなかったですが立体作品も展示されていて、むしろそちらに目が止まってしまいました。
特に、今までほとんど意識することの無かった 多田 美波 の良さに気付かされました。
宮脇 愛子 や (立体はありませんでしたが) 福島 秀子 の抽象度の高さも良かったでしょうか。
会場で配布されてた別冊の「7 女性の美術家とファッション」で言及あるものの、福島 秀子 の舞台衣装デザインは出ていませんでした。 絵画中心の展示構成ですし、会場規模的な制約などもあるので、そうだろうとは思います。 しかし、以前にMOTコレクションの特別展示 [鑑賞メモ] で観てから10年以上経つので、また見直したいものです。