欧米の公共放送のラジオ局音源のレコード (テレビ局映像のDVD) に関する 2004年頃の一連の発言の抜粋です。 古い発言ほど上になっています。 リンク先のURLの維持更新は行っていませんので、 リンク先が失われている場合もありますが、ご了承ください。 コメントは談話室へお願いします。
一昨晩の話のフォローアップ。 トルコ (Turkey) のバンドのフランス (France) でのライブの デンマーク (Denmark) のラジオ局が収録した音源を イギリス (UK) のラジオ局が放送する、という状況は、 4ヶ国も関係していて国際的な感じもするのですが。 欧州の world music や jazz/improv. を追いかけていて感じるシーンの一体感からすると、 実際のところは、沖縄のバンドの大阪でのライブの仙台のラジオ局が収録した音源を 東京のラジオ局が放送する、という感覚に近いのかもしれない思うところもあります。 ま、トルコはちょっと国境が高くて沖縄というより台湾くらいかもしれないですが。
DR (Radio Denmark) でも面白い音源を公開しているかもしれないと、サイトを見てまわってみました。 しかし、デンマーク語のみなのでいろいろ見落しがあるかもしれないですが、 ネットラジオしか発見できませんでした。 それに、Content-Type が application/x-mplayer2 (WindowsMedia Player) です……。 まっ、BBC だけでも聴くのが手いっぱいなので、いいかー。
Radio Denmark 音源の最近 (ここ2〜3年) のCD化で記憶に残っているものといえば、 Marilyn Mazur, All The Birds (Stunt, STUCD02072, 2002, 2CD) があります (フォトログ)。 The Jazzpar Prize 受賞記念ライブを収録したもので、 Mazur の2つのプロジェクト Future Song と Percussion Paradise、その他 Palle Mikkelborg や Anders Jormin などの特別ゲストを迎えてのセッションなど いろいろまとめて聴けるお徳な2枚組です。
ちなみに、jazz の場合、 欧州の公営ラジオ局が収録した音源をレコード化している場合が少なくありません。 そういうレコードは、たいていジャケットにラジオ局のロゴが入っています。 疎いので言い切れないですが、おそらく classical の場合もそうではないかと思います。 少なくとも自分が持っている現代音楽 (contemporary classical) のCDはそうです。「名演」をパッケージしてレコード化するのもいいのですが、 jazz とか classical のようなもともと商業的に採算性の低いジャンルの場合、 こういうラジオ音源をどんどんインターネットにアーカイヴして公開していった方が、 リスナーが増えて面白くなっていくと思うのですが……。
「jazz の場合、欧州の公営ラジオ局が収録した音源を レコード化している場合が少なくありません」 と書いた直後に気付いたのですが。 ちょうど B.G.M. として聴いていた Anthony Braxton, Quartet (Santa Cruz) 1993 (hatART, CD2-6190, 1997, 2CD) が、実は、 アメリカはカルフォルニア州サンタクルース (Santa Cruz, CA, USA) の KUSP-FM の収録した音源でした。 ジャケットにロゴが入ってなかったので、今まで気付いてませんでした。 アメリカ (US) のラジオ音源のレコードってあまり無いように思っていたのですが、 単にチェックが甘かったからかもしれません。
ちなみに、KUSP-FM は NPR (National Public Radio) に加盟している公共放送です (NPR を含むアメリカの公共放送については、 『アメリカの"公共放送"PBS』 (NHK放送文化研究所, 文研ファイル No.14, 1999) が詳しいです)。 しかし、"Congress Considers Big CPB Funds Cut" によると、 アメリカの公共放送も国の予算が削減されているようで、大変ですね……。 Fox とか Clear Channel とかがのさばっている (これとかこれ) ので、 PBS / NPR ような公共放送にも頑張って欲しいと思っています。 去年のアメリカ出張のときもTVは PBS ばかり観ていましたし。 しかし、オルタナティヴなラジオ局の支持者からは、 NPR も Clear Channel みたいになってしまったと批判されてるんですね ("Radio Gets Greedy")。 うーむ、ちょっとリバータニアン風味かなぁ。 ま、国・自治体からも独立したメディアの役割っていうのもよくわかりますけど。 公共放送はそれはそれであった方がよいと思ってます。 もちろん、国策たれ流しや商業主義に流されず公共性を維持する努力も伴うわけですが。
昨晩、 DR のラジオ音源のレコードの話をしたわけですが。 ラジオ局ロゴ入りレコードジャケットを フォトログで取り上げつつ、 ラジオ音源のCDの話をしたりラジオ局サイトを巡ったりしていくというネタを思いつきました。 ネットラジオ聴いている人は僕が紹介するまでもなく既にガンガン聴いてるように思いますし、 その一方で、その手の音楽にあまり興味の無い読者がおもいきり引きそうな気もしないではないです。 しかし、こういうネタでも無いと 自分も BBC 以外をなかなか開拓する きっかけが掴めない、ということもあります。 どの程度の頻度で続けられるかわかりませんが、 このネタを続けてみようかと思います。
というわけで、DR の次にとりあげるのは、 同じく北欧のスウェーデン (Sweden) のラジオ局 SR (Sveriges Radio / Swedish Radio) です。SRのラジオ音源のCDのジャケットにはSRのロゴに続いてP2というロゴが見えます (フォトログ)。 これは音楽チャンネル P2 Musikradion のロゴです。
SRもネットラジオを放送しています。 WindowMedia と Real から選ぶことができます。 しかし、音源アーカイヴらしきものは見付けられませんでした。残念。 スウェーデン語だけなので見落しがあるかもしれませんが……。
SR音源のレコード/CDの中から選ぶ一タイトルは、 Lars Danielsson, European Voices (Dragon, DRCD268, 1995, 2CD)。 スウェーデンのイェーテボリ (Göteborg / Gothenburg, Sweden) で 毎年開催される Nordic Meeting という SR Göteborg 主催のイベントで放送するために1993年に録音されたものです。 Nils Petter Molvaer や Eivind Aarset ではなく、Malilyn Mazur でもなく、 Michael Riessler の参加が、僕にとってはポイント大です。 Jazzland 前夜の ECM 風の浮遊感のある北欧ジャズという感じです。 リリース当時、いきつけのジャズ喫茶で ヘビーローテーションだったのが懐かしいです (もう10年近く前……。遠い目)。 そんなこともあって、自分で買ったのが1990年代も末頃になってしまい、 音盤雑記帖に取り上げそこなってしまいました。 けど、実はかなり好きなアルバムだったりします。
ラジオ音源のレコードの話をしてきているわけですが、 先週末にレビューした <trio x 3>, New Jazz Meeting Baden-Baden 2002 (hatOLOGY, 2-607, 2003, 2CD) も Hat Hut (hatOLOGY) と SWR の共同制作でした。 SWR (Südwestrundfunk) は、ドイツ (Germany) の南西部の バーデン=ヴュッテンブルグ (Baden-Wüttenburg) 州と ラインライト=プファルツ (Rheinland-Pfalz) 州をエリアとする公共放送局です (日本語ではたいてい、南西ドイツ放送、と呼ばれています)。
SWR のラジオのチャンネル はいくつかあるわけですが、 アート (音楽については classical と jazz) は SWR2、 エンターテインメント (音楽については rock など) は SWR3 と住み分けがあります。 チャンネルによってはネットラジオでも放送していますが、 jazz や現代音楽のいい音源を沢山持っているはずなだけに、SWR2 のネットラジオが無いのは残念です。 SWR3 についてはフェスティバル音源のアーカイヴもしているようで、 Musikrecherche から探せるようになっています (もちろんドイツ語で)。 メディアは WindowsMedia と Real に対応しています。 あと、チャンネルと関係なく SWR の音楽情報は LebensArt / Musik にまとめられているようです。
SWR3 は SWR Rheinland-Pfalz Open Air in Meinz というロックフェスティバルをやっているようですが。 SWR の由緒ある音楽イベントといえば、SWR2 がやっている現代音楽フェスティバル Donaueschingen Musiktage。 New Jazz Meeting Baden-Baden の方はフェスティバルというより、 ラジオ番組向けイベントというかラジオライヴといった感じのもののようです。 Art Ensemble Of Chicago の Lester Bowie (trumpet) と Roscoe Mitchell (saxophone) を迎え Albert Mangelsdorff (trombone), John Surman (saxophone), Karin Krog (voice), Terje Rypdal (guitar), Willem Breuker (saxophone) ら 欧州 free jazz の面子が集結した free jazz の名盤 Various Artists, Gittin'To Know Y'All (MPS, 15269, 1969, LP) も、1969年の Free Jazz Meeting Baden-Baden (当時の呼称) の音源をレコード化したものでしたね (フォトログ)。 <trio x 3> を除いて比較的最近の SWR 音源のレコード化で印象に残っているものといったら、 Banda Citta Ruvo Di Puglia feat. Lucilla Galeazzi, Pino Minafra, Gianluigi Trovesi, Michel Godard, Jean-Louis Matinier, Willem Breuker, La Banda (ENJA, ENJ9326-22, 1997, 2CD)。 これは、New Jazz Meeting ではなく Donaueschingen Musiktage の方の録音です。 現代音楽フェスティバルで19世紀のイタリア (Italy) の banda の再現 という1枚目 "Tradition" のコンセプトも興味深いです。 2枚目 "Jazz" でのオリジナル曲の地中海の雰囲気感じさせる演奏も大好きです。 特に、Galeazzi の歌声が素敵です。く〜。
10月にリリースされた
Wire,
Wire On The Box: 1979
(Ping Flag, PF7TV, 2004, CD+DVD)、
少し前に入手済みだったのですが、やっと観ることができました。
WDR のTV番組 "Rockpalast" のために
1979年2月14日に収録されたライブの音だけのCDと映像付きのDVDを
カップリングしたものです。正規ライセンスによるリリースで
音質・画質は問題ありません。かっこいー。まるで、今年の2月に観たライブ
(レビュー) を観ているかのような錯覚が。
確かに、Graham Lewis は横に広がっていたし、
Colin Newman と Bruce Gilbert は白髪になっていたけれど。
動の Newman、静の Gilbert、rock キャラの Lewis、ビートも存在感もミニマルな Grey
と、4人のキャラの棲み分けが25年全く変わっていないところが
可笑しい凄いです。
ライブ映像といえば、ブートレグDVD-Rなので紹介しても仕方ないかなとは思いますが、 Gang Of Four の1980年〜1983年のライブ映像を約120分収録したものを入手しました。 120分中90分近くが、やはり WDR の "Rockapalast" のライブ映像なのでした。 当時に民生用VTRで録画したものをDVD-Rにダビングしたようで、 画質・音質に弱干難がある上、DVD-Rとプレーヤの相性のせいか後半再生できません。 しかし、動く Gang Of Four は初めて観たので 少しでも観られただけで感動です。く〜(悶。冷静に語る余裕無し)。
ちなみに、"Rockpalast" の番組のウェブサイトを見ていると、12月21〜23日は Krautrock 特番だったようですし、 12月7〜9日にも Underground Köln なんて特集組んでいたみたいです。 Rockpalast Archive というサイトに載っている出演ミュージシャンのリストを見ていると、 もっとメインストリームなのも取り上げてるようですが、かなり面白そうです。 WDR 自身によって DVD 化も進めているようで、 1981〜2年の UB40 の DVD があるじゃないですか。 あー、やばい、勢いで買ってしまいそう……。WDR 自身のリリースじゃなくても、 Wire の "Rockpalast" 映像が正規盤として DVD リリースできるんだから、 Gang Of Four の "Rockpalast" 映像もどこか正規盤 DVD リリースしてくれないかしらん。 そういえば、Buzzcocks, Auf Wiedersehen (Ikon, 1981; Cherry Red, CRDVD03, ?, DVD) も "Rockpalast" (1981/01/23) の映像じゃないですか。 他にも気になるのがありますが、特に Magazine (1980/10/30), XTC (1982/02/10), Au Pairs (1983/02/17), The Smiths (1984/05/04), Billy Bragg (1985/09/30) あたりは、 ブードレグDVD-Rでもみかけたら買ってしまいそうです……。 jazz 寄りのも面白そうなのがあって、特に、 ほどんど日が同じなので特集だったと思われるのですが Volker Kriegel & Friends (1981/11/05), Defunkt (1981/11/06), Michael Gregory Jackson (1981/11/07), James Blood Ulmer (1981/11/07), Material (1981/11/08) というラインナップはかなり凄いです。うー、見たい (悶)。
ちなみに、"Rockpalast" を放送している WDR は ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州 (Nordrhein-Westfalen, Germany) の公共放送局です。 "Rockpalast" のサイトを覗いていても、さすがヨーロッパ (正確には西欧) の公共放送、 BBC 1 の John Peel や France Inter の Bernard Lenoir (関連発言) ほどではないかもしれないですが、 ヨーロッパではこういった公共放送がオルタナティヴな音楽シーンを下支えしてきているのだろうなあ、と、つくづく思います。