山形国際ドキュメンタリー映画祭(日本)
http://www.city.yamagata.yamagata.jp/yidff/(日本語・英語)

期間中、配布されていたポストカード。
2001年映画祭公式ポスター
1989年にスタートしたアジア初のドキュメンタリー映画祭。隔年で開催されています。世界中のドキュメンタリー映画に触れることができる貴重な映画祭です(次回は2003年)。
ドキュメンタリー映画の大きな特徴は「事実」であるかぎり様々なテーマに自由に取り組むことができることですが、映画監督個人の人間性が、作家としての能力や技術以上に映画の出来に影響するところも一般の商業映画にはあまりない特徴といえるでしょう。記録映画の力をひしひしと感じられる作品が目白押しです。
01年からは、ビデオ作品によるコンペティションへの参加が可能になりました。地元の高校生が参加したワークショップが始まるなど、コンペ以外のプログラムもとても充実しています。
9月11日のテロ後の開催だったせいか、戦争や犯罪がからむ「社会の矛盾」を描いた作品を鑑賞した時は、頭の中にいろいろな考えがめぐって、とても緊張しました。忘れられない年の映画祭になりそうです。


●2001年フォトアルバム
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●山形国際ドキュメンタリー映画祭(1999年)

みんなの映画祭レポートです。 各映画についてはYIDFFのサイトで解説されているので、気になる映画があればぜひチェックしてみてください。

●まめこさんの映画祭レポート●
どうも、映画祭の報告です。
今回私が見たのは

10月6日
「香港、台湾」「のり平トラベル・マナー」
「鳥のように」
「家庭内暴力」


10月7日
「集集大怪獣」
「別れ」
「刑法175条」

旧山形県庁だった「文翔館」 2001年も晴天続きだった山形の青空
山形中央公民館からの眺め
別に狙ったわけではないのだけど辛い内容の映画が多かったです。
一番印象的だったのは最後に見た「刑法175条」かな。ゲイという理由でものす
ごく辛い目にあったおじいさんたちが自分たちの若い頃のことを語るときはとても楽しそうでよかった。 ナチにされたことは忘れられるはずがないのだけど、幸せだったことも忘れないんだなと。
全体的な印象としては、初めての東北で生の山形弁が聞け、天気もよかったし気 持ちがいい旅でした。映画祭もちょうどいい大きさだったと思います。映画祭の 間、山形市の人口はどれくらい増えたのでしょうか。増えているとしても東京に比べると人が少なくてのんびりしててよかったな。
それでは〜。

レーコより:帰りのバスではお互いZERO7を聴きながら爆睡でしたね。仙台でなぜかガムシャラに歩いたのもよい思い出になりました。笹かまぼこ、おいしかったですか?

●よねおさんの映画祭レポート●
<見た作品>
香港・台北(1964)
のり平 トラベル・マナー(1955)
明日の幸せを願って(1981)
(以上、亀井文夫)
家庭内暴力(フレデリック・ワイズマン)
A2(森達也)
刑法175条(ロブ・エプスタイン、ジェフリー・フリードマン)

<番外編>
ブリジット・ジョーンズの日記
陰陽師

<感想>
A2
こんなに笑える映画とは思っていなかった。
マスコミが伝え(ようとし)ないオウムのもう1つの側面を見た気がした。
ロードショー館のたたずまい
オウム排斥運動をしていた住民が、人間どうしとしていつのまにかオウム信者の青年たちと仲良くなってしまい、別れに際して「感無量」「身体に気をつけて修行をがんばってほしい」と言ってしまうおかしさ。厳粛にヨガの修行をしているオウムの青年が映し出され、観客も奇異なものを目の当たりにする緊張感で画面を見つめていると、鳴り出した携帯に「あ、もしもし」と昼飯を食ってたサラリーマンのような気軽さで受話器をとるオウムの青年。森監督も質疑応答で言っていたけど、オウムとかなんとか関係なく人間の優しさやおかしさが印象に残った。
前作の「A」も見てみたくなったし、この「A2」も公開された暁には多くの人に見て欲しいと思った。

刑法175条
ナチスでは同性愛者も強制収容所に入れられていたそうで、今も生き残っているゲイの老人へ苦労してインタビューしたこの映画。ナレーターはルパート・エヴェレット。
間一髪でイギリスに亡命できた人から、収容所で本当にひどい拷問を受けて今も怒りをあらわにするゲイの老人まで、様々な人が出てきた。あまりにHeavyな体験に最後は胸がふさがれて涙が出てしまった。
でも自分の性体験を懐かしそうに嬉しそうに告白する、明るい側面もあって救われた。
初体験のあと"Mom, I had my first man!"と自分の母親に報告した、なんて話には「をいをい、おっさん・・」と笑ってしまった。
完成度も高く、十分に公開できる作品だったと思う。

<全体の感想>
初めての山形、初めての国際ドキュメンタリー映画祭でした。
初日に極めてむかつく「山形温泉ババァ事件」に遭遇した私は、 映画祭自体へのモチベーションまでそのババァ事件に影響されてややトーンダウンしてしまい、 それが残念でした。でも雰囲気は味わえました。会場の位置や上映時刻の関係で、 思ったよりも本数がこなせなかったのも残念といえば残念。 米沢牛を新幹線のお弁当でしか食べれなかった、山形の地酒を飲めなかった、 観光ができなかった、いかした兄ちゃんを見つけられなかった・・・と次回への宿題も残りました(^-^)。

レーコより:初日はホント災難でした。 その後の映画や最後の夜の香味庵(映画祭関係者が集う居酒屋)などで少しは挽回できたことを祈ります。「A2」上映の盛況はとても印象的だったし、特別賞と市民賞をダブル受賞でしたね。 オウム事件は、よねおさんや私も好きな村上春樹も取り上げていて、今後もずっと注目していきたいです。

●キム・パプコさんの映画祭レポート●
「山形、寒いかもー」と心配してたんですが、いざ着いたら晴天の日々。そして、さすが空気が違う。まさに”青色”一面のきれいな空で、気持ちよかったです。冬はまだまだでしたねー。しかし、山形の街自体は映画祭なんかお構いなしみたいで、日曜にもなると店はほとんど開いておらず、道行く人もまばら。街おこしは、どうなのよ?って感じの風情でした。前回(’99)はもっと歓迎されてる気がしたんですけど。で、一体、山形住民は何やってんだろー?と思ってたら、『陰陽師』やってる映画館に長蛇の列が!うーむ。

さてさて、私は今回、”アジア千波万波”という企画のアジア映画を中心に観たので、ほとんど「ミューズ」という映画館に入り浸りでした。ちょうど、シネ・アミューズにカフェがないぐらいの広さ(狭さ?)で、こじんまりしたアット・ホームな雰囲気の劇場です。中でも印象に残ったのは、次の作品。

まず、『ミックス・フルーツ・バナナ・スプリット』という可愛いタイトルの台湾映画。ティーンの女の子たちがよかったですー。ブティックやカフェでバイトする女の子たちがスケボー少年に恋してて、店の窓から覗いたり、ゴミ捨てに勇んで出かけたり、という何てことない話を追ってるんですけど、1人1人のキャラが立っていて、その生き生きした表情を見てるだけで、とにかく楽しい。中でも、その内一人のポッチャリした女の子の笑顔なんか最高でした。こういう映画って、やっぱり監督との間に生まれる信頼感がモノをいうんだろうなー、と彼女たちの屈託ない表情を見てて感じました。

2001年のミューズ。前回よりカラフル ミューズ前の風景
もうひとつ(というか二つ)は、オーストラリアで育った韓国人の女性監督メリッサ・リーの撮った作品です。
一本目『夢の中で』は、監督が両親に他人をインタビューさせて撮ったもの。単純に両親にマイクを向けるのでなく、他人にマイクを向けさせることで、彼らの人となりが見えるってとこがミソ。
そして、二本目の『愛についての実話』は、うってかわって、アメリカにわたった監督が自分の恋愛生活を赤裸々に撮ったもの。もともとはアメリカで活動する韓国系映画監督のインタビューをする予定だったのに、自分の回りの方が面白い!とカメラの視線を変えていったんだとか。当然、『夢の中で』と視点はまったく違うのですが、続けて上映されることによって、家族との距離感、恋人との親密感、映画人を夢見ることへの葛藤、目の前のアジア系男性の抱えるコンプレックスなどを通し、監督自らのアイデンティティを問う、という作りになっていました。こういうとシリアスな作品に思えるんですが、どちらかというと笑える場面が多くて飽きなかったです。しかも、なぜか最後にジャッキー・チェン映画のようにNG場面(ドキュメンタリーですけど?)が入っていて、それによって映画自体の二重構造が明らかになるという仕組み。ちょっと、キツネにつままれたよーな気がして、ある意味新鮮でした。メリッサ・リー監督が、見た目はごくごく普通の女の子っていうだけに、かえって作品から強いエネルギーを感じました。刺激になりますー。

上記の作品はどれも、カメラを向ける監督自身の人間性が活きてる、っていうのを特に感じて興味深かったです。 身近なテーマでも、本当に楽しめる映画が作れるんですよねー。 「ドキュメンタリー映画」ってだけで構えちゃう人もきっといるでしょーけど、 映画祭でバラエティに富んだ作品を観ると印象が変わるかも。ぜひ一度は、山形に足を運んでみてくだい。 次は2003年!

レーコより:キムさんとぴーろんさんと2年前に初めて体験したこの映画祭。 今回は一緒のメンバーも増え、YIDFFの面白さも再確認した感じです。 再来年はさらにパワーアップして山形入りするかも?

●フカイさんの映画祭レポート●
ボクは旅行とゆーものをほとんどしたことがありません。だから、見知らぬ土地に行った時、いったいどーやって過ごせばよいのか、さっぱり分かりません。なもんで、今回はひたすら映画だけって感じでして、まーそれは予定通りなんですが。結局、4日間の滞在で19本観ることができましたんで、その中から特に印象に残ったものを紹介してみよーかなーと思います。

『団地酒』〜アジア千波万波
大野聡司(監督・脚本・撮影・ナレーター・製作)
日本/2001/日本語/カラー/ビデオ/49分

狭い団地の一室でドブロクを作ってるオッサンの話です。ドブロクっつーのは、まーなんとゆーか、日本酒の粗いやつみたいなので、にごり酒ってやつですね、たぶん。登場人物は、このドブロクを作ってるオヤジと、その妻、そして夫妻の子供である監督の3人です。

映画は冒頭からナレーションもなしで、ドブロクを作っていくオヤジを淡々と写し続けます。えーと、覚えてる範囲で製造過程を簡単に説明しますと、まず、普通の米を丹念に研いで、それを汚いプラスチックのボウルに入れて蒸します。そんなんじゃ熱で溶けんじゃないか?と思うかもしれませんが、溶けませんでした、なぜか。で、それを一粒残らず超丁寧に2Lのペットボトル(注ぎ込みやすいよーに上部を少しカットした、お手製のドブロク製造マシーン)に移して、そこに水(ここは奮発してミネラルウォーター。たぶん、その容器が次のマシーンになるんじゃないかと)を入れてシェイク。でもって、さらに、そこに、麹(スーパーで普通に売ってるの)とかイースト菌みたいなのとかヨーグルト(これまたコンビニで普通に売ってるの)とかをブ
チ込んでシェイク。そんで、それをしばらく冷蔵庫で寝かせます。すると、いい塩梅に米が発酵してきてジュルジュルのクチュクチュに。そしたら、それを、具(発酵した米)がカラカラのオカラみたいになって、もーこれ以上は水分出ねーよ!ってくらいキチキチに搾って、それを濾したら出来上がり。

この製造過程の中で、オヤジは一粒の米も無駄にしてません。米を移し替える時なんか、割り箸で一粒一粒…。もーホントに、見てるこっちがイライラするくらい。そんくらいいいじゃんか!早く次にいけよ!って。だけど、オヤジは丹念に丹念に作業をこなします。しかも、その時の顔がですね、別に笑ってるわけじゃないのに、楽しくて(嬉しくて)しょーがないって表情してんですよ。アレはマニアの顔です。

このオッサン、普段は何してるかってーと、このドブロク作り以外、ヘンテコな絵を描いてるだけです(あ、あと、出来上がったドブロクを飲むのも)。つまり、無職。素晴らしいですね。当然、ヨメさんとは別居。そのヨメさんのインタビューがドブロク作りの合間にチョコチョコと挿入されるんですが、それがまたいい味を出してて。息子に「ロクに働きもせず、ドブロク作りに熱中してるお父さんってどー思う?」って聞かれた母親は笑いながら「あーいいんじゃないの。私はね、家を出たけどね、別にお父さんのことが嫌いになったからってわけじゃないのよ。ただね、あんなじゃ、ほら、一緒には生活できないでしょ?経済的な面とかでね」って。そして、「なんで離婚しないの?」って問いには「私はね、お父さんの、自分の好きなことだけしかやんないとこが好きだったし、今でもそーなの。だからね、もし、お父さんが自分の好きなドブロク作りとか絵をヤメたら、嫌いになっちゃって離婚するかもね」って。

うーん、なんだかよく分かりませんが、でも、なんかいいですよね。現状はとんでもない(そーでもないか…)ことになってんのに、ほのぼのとしてて。途中、観ながら「あー、こーゆーお父さんもいいかなー」なんてチョットだけ思ったりもしたんですが、だけど、それは寅さんと一緒で、「部外者として遠くから眺めてるぶんにはオモロいけど、身近にいるとたまんない」ってやつでして、やっぱヤですね。

ラスト、出来上がったドブロクを父と子のふたりで飲むわけですが、特に大したことを話すわけでもなく、「ふーん、なかなか美味いじゃない」「そー?今回はまーまーかな」とか、「あ、コレって結構強いね」「ん?もっと飲む?」とか、そんなんで。それがまたなんとも言えず、いい感じを出してます。

監督である息子は、「別にコレはダメ父親を批判したり告発したりするために撮ったわけでもないし、かといって、こんなオヤジだけどボクは大好きです!ってなことを言いたいために撮ったわけでもないし…。まーただ撮ってみただけとゆーか。発酵していくドブロクの様と、チョットずつ変化(発酵)していくボクたち家族を重ね合わせてみたとゆーか…」ってなことを言ってました。ボクも観ててそー思ったし、会場の多くの人も同じよーに思ったんじゃないでしょーかね。

上映後にアナウンスで「今回はこの夫婦も監督と一緒に山形に来てます」みたいなことを言ってたんですが、紹介されるわけでもなく、すぐに監督への質問になっちゃって。だけど次の日、『A2』を上映してた会場のロビーにいましたよ、ふたりで仲良く。って、一言もしゃべってませんでしたけどね。オヤジのほーはポーっとしてました。たぶん、ドブロクのことを考えてたんでしょー。

あ、あとですね、コレって厳格に言えば密造酒じゃないですか。だから、法律的にはどーなのかなーとか、税金はかかんないのかなーなんてチラっと思ったんが、このオヤジは自分が飲むためにだけ作ってて、販売目的とかそんなんじゃないで、どーやらOKのよーです。って、ボクの想像ですけど。だって、上映後にオヤジ手作りのドブロクを客に試飲させてたし、それに違法だったりしたら、いくらなんでもこんなの撮れないでしょーしね。興味ある方はネットで検索してみて下さい。さっき調べてみたら、作り方を詳しく図解入りで紹介してるサイトがたくさんありましたから。

なんかダラダラと書きましたが、当たり前ですけど、ボクは上映中にメモなんか取ってませんし、それに観終った後に感想を書きとめておいたりしたわけでもありません。なので、この感想は、うる覚えの記憶とか感想とか妄想がゴッチャになってます(一応、カタログは見直しましたけど)。ですので、必ずしも映画の内容とは一致しないかもしれませんが、他に誰も観てなさそーなんで、まーいいか、ってことでおしまい。

レーコより:「団地酒」面白かったんですね。観る前に「やっぱ『団地』といえば『妻』でしょう」なんてふざけてたけど・・・。 監督に間違われたり、一番山形滞在が長く、宿屋のおばさんとも仲良くなって(ヘンな意味じゃなく)、実は「旅上手」なのでは??


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