ドイツ (Germany) の jazz/improv シーンで1960年代から活動を続ける multi reed 奏者 Peter Brötzmann (⇒en.wikipedia.org) の デビュー盤 For Adolph Sax (BRÖ, 1; FMP, 0080, 1967, LP) リリース40周年を祝っての来日公演シリーズ BrotzFest 2007 の初日だ。 フライヤから Brötzmann/近藤/八木/ナスノ/芳垣 の twin drums 5tet で演奏するかと 予想していたのだが、実際は、面子も楽器の組み合わせも変えて3セット。 サプライズ・ゲストも金曜の共演予定者の 八木 と Nilssen-Love と豪華だった。 顔を真っ赤にして強く吹きまくる Brötzmann は相変わらずだったが 多彩な演奏が一晩にして楽しめたライブだった。
ちなみに、今までの Peter Brötzmann 関連のレビュー: 法政学生会館 2003, Die Like A Dog Quartet, Die Like A Dog Quartet, 横濱ジャズプロムナード 1998, 横濱ジャズプロムナード 1997, disk union お茶の水 1996, バーバー富士 1996。
最初のセットは、内橋 和久 の代わりに Brötzmann が入った Altered States な trio。 ナスノ の effect を駆使した出だしに、まずはウォーミングアップかなと思いきや、 Brötzmann が alto sax がバリバリと吹き出して、ナスノもブンブン弾いて応じて、 あっと言う間に3人とも大音響の演奏に入ってしまった。 芳垣 も cymbal を snare の上に置くなど金属音も手数も多め。 途中 Brötzmann が tarogato に持ち替えたときなど少し落ち着いた展開もあったが、 30分余りほぼノンストップでほぼ全編力勝負のような熱い演奏を聴かせてくれた。 1st セットからこんなに飛ばして、Brötzmann は最後まで持つのだろうか、と思う程だった。
続いては、近藤 & 山木 の IMA の2人にサプライズ・ゲストの 八木 を加えての 4tet。 このセットは、やはり、Brötzmann & 近藤 の存在感が大きかった。 2管の息の合い方も絶妙で、ひたすら力で押すというより、 力の抜き方、終らせ方を弁えているという印象も受けた。 近藤の歪んだ音色の electric trumpet との掛け合いという点では Die Like A Dog Quartet 的だったが (関連レビュー)、 Albert Ayler 的な鳴きのフレーズは控えめで、抽象的で雄叫び的なフレーズが多めだった印象も受けた。 山木 & 八木 は一歩引いた リズム隊という感じで印象薄めだったが、 八木 は撥なども使いフリーキーに。一方の、山木 の drums は力勝負な展開でも金属音等は控えめに端整な演奏するという印象を受けた。
最後は、サプライズ・ゲストの Nilssen-Love との duo。 Nilssen-Love は Atomic や The Thing での活動で知られる ノルウェー (Norway) の jazz/improv の drums 奏者だ。 この顔合せは、Brötzmann の Chicago Tentet のものだ。 腰高に座っての演奏スタイルも目立つが、手数の多さや音の迫力は圧倒的だった。 もちろん、力勝負だけではなく、緩い展開も聴かせた。 前2セットと違いアコースティックなセットだったこともあるのか、 リラックスした演奏に聴こえた。 3セットの中で、最も楽しめた演奏だった。
続く金曜の晩に Brötzmann の水曜のライブにサプライズ・ゲストで参加した Nilssen-Love がメインのライブを観て来た。 編成は Brötzmann、八木 との trio で、 去年の Kongsberg Jazzfestival の sax/drums/koto trio (関連発言) の再演だ。 Brötzmann と残り2人の共演は水曜に引き続きでもあるが、 Nilssen-Love と 八木 の共演したライブも 以前に観たことがある (レビュー)。 水曜は多彩な演奏のショーケースという感じであったが、 金曜は free jazz ど真中なライブだったように思う。
1st セットから力の入った演奏でつっぱしった。 八木 の強く弦を弾く音は水曜と違いかなり存在感があった。 手数多めの Nilssen-Love を相手にした場合、バチで弦を叩き擦るような音よりも、 手数を多めに強く爪弾く音の方が映えるように感じた。 Brötzmann も顔を赤くして吹きまくり、 Bennink / van Hove との 1970s free jazz の bass-less piano trio を思わせる演奏を楽しむことができた。
2nd セットに登場したシークレット・ゲストは、坂田 明。 しかし、出だしは少々手探りという感じ。 坂田 の音も、Brötzmann の轟音に吹き消されがちに感じられた。 しかし、一旦ブレイクが入ってからの演奏は、 坂田 も高音などよく響きわたるようになったし、 緩い展開にはふっとリラックスも感じられたりと、良くなった。 で、この2管4tetでアンコールを一曲演した。
1970s free jazz bass-less piano trio の日本での代表格だった 山下 洋輔 (Yosuke Yamashita) trio の reed 奏者だったという点でも、 坂田 のゲストというのは良い選択だったとは思う。 しかし、それとは別に trombone をゲストに入れた組合せも聴いてみたかったように思った。 適役の trombone 奏者を見付けるのは難しいかもしれないが。 (日本在住ではないが、まず思いつくのは 河野 雅彦 か。)