イランをルーツに持ちながら南仏プロヴァンス地方のマルセイユ (Marceille, FR) を拠点に活動する Bijan Chemirani のグループ Oneira によるアルバムだ。 Oneira 名義では初録音だが、 Bijan Chemirani with Ross Daly: Gulistan (L'Empreinte Digitale, ED13127, 2000, CD) 以来続く、Bijan Chemirani や Stelios Petrakis (Στέλιος Πετράκης) による 様々なプロジェクトによるアルバムの延長といえる。 今まで同様、pop 的ではなく、むしろ、classical 〜 jazz/improv 的な色も含めながら、 イランからギリシャを経てプロヴァンスに至る地中海の folk/roots 音楽の繋がりをが楽しめる作品だ。
この Oneira では Petrakis はゲスト参加だけれども、 Oneira の6tetのうち Bijian Chemirani と Simoglou、Seddiki、Lambrakis の4人は Stelios Petrakis: Orion (Buda Musique, 860178, 2008, CD) のメンバーでもある。 (Seddiki は Al Di Meola のグループ、Lambrakis は Savina Yannatou & Primavera En Salonico での活動でも知られる。) Orion で vielle を弾いていた Efren Lopez (ex-L'Ham De Foc) の代わりにというわけではないだろうが、 vielle 奏者の Pierre-Laurent Bertolino (ex-Dupain) が入っている。 Bijan Chemirani の姉妹 Maryam Chemirani は Orion には参加していなかったが、 Eos (L'Empreinte Digitale, ED13147, 2002, CD) 等一連のプロジェクトのいくつかには参加している。
Gulistan から Orion に至る 一連の録音から大きく外れる音楽ではないが、 Stelios Petrakis や Sokratis Sinopoulos がゲスト参加ということで lyra の音が少なめで、 lyra の弦の響きを聴かせるゆったりした曲が後退。 その代わり、表題曲 “Si La Mar” や、“Hypnovielle” など、 Bertolio の vielle の響きが活躍している。 また、Maryam Chemirani と Maria Simoglou という2人の女性歌手をフィーチャーし、 pop なものではないけれども、今までより華があり歌物的な要素が強く感じられる。 Simoglou がハイトーンで軽く小節を効かせて歌うの対し、 Chemirani は少々低めの声で “Yek Rouz” や “Râzeniâz” ではペルシャの古典音楽を思わせるような詠唱をさらりと聴かせる。 その対比も面白い。 男性歌手は6tetの中にはいないが、ゲストで1曲 Sam Karpienia (ex-Dupain) が参加し、 少々劇的に歌い上げている。Bertolio の vielle もあって、Dupain を思わせるような曲だ。 (ちなみに、Dupain: Les Vivants (Label Bleu, LBL4012, 2005, CD) には、Bijan Chemirani や Stelios Petrakis が ゲスト参加していた。)