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double-reed 木管楽器と jazz について (2005/3)

double-reed 木管楽器と jazz に関する一連の発言の抜粋です。 順番は古いものほど上になっています。 リンク先のURLの維持更新は行っていませんので、 古い発言ではリンク先が失われている場合もありますが、ご了承ください。 コメントは談話室へお願いします。

[1181] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Mar 21 22:32:09 2005

oboe, cor anglais, bassoon のような double-reed の木管楽器は jazz の文脈ではあまり使われないのですが、 そんな oboe をフィーチャーした Jean-Luc Fillon, Oboa (Deux Z, ZZ84135, 2003, CD) を物珍しさもあって入手してみたらツボにはまったので、 音盤雑記帳レビューを書いておきました。 ちなみに、フランス (France) の double-reed 奏者 Fillon はこれで初めて聴くのですが、 João Paulo に Carlo Rizzo とサイドメンが良さそうというのも、 Oboa を手に取った理由でした。

ポルトガル (Portugal) の piano 奏者 João Paulo は1990年代半ばから MA Recordings に録音を残してきましたし、最近は Clean Feed からリリースがあります。 Oboa でも演ってる "Durme" が入った João Paulo / Peter Epstein / Ricardo Dias, Nascer (MA Recordings, M059A, 2001, CD) は録音綺麗だけど落ち着き過ぎかしらん。 João Paulo / Paulo Curado / Bruno Pedroso, As Sete Ilhas De Lisboa (Clean Feed, CF013CD, 2003, CD) は、bass-less の piano / saxophone / drums という編成で テンション高めの free jazz / improv という感じが気に入ってます。 Paula Oliveira / João Paulo, Quase Então (Clean Feed, CF014CD, 2003, CD) は、Clean Feed の女性歌手物ということで期待したのですが、 Maria João くらい弾けて欲しかった、というか……。 Clean Feed は2000年代にリリースし始めたポルトガルのレーベルで、 けっこう良いリリースがあるのですが、どうも決め手に欠けて レビューしそこねていますね。うーむ。

イタリア (Italy) の tambourin 奏者 Carlo Rizzo は今までも何回かレビューで取り上げてきましたが、特に、 Valentin Clastrier / Michael Riessler / Carlo Rizzo, Palude (Wergo J, WER8010-2, 1995, CD) (レビュー) と Kevyan Chemirani / Miqueù Montanaro / Carlo Rizzo, Alazar (Al Sur, CDAL251, 2000, CD) (レビュー) が お薦めです。最近 (といっても一年ほど前)、ソロの Carlo Rizzo, Schérzo Orientale (Al Sur, CDAL214, 1997, CD) を入手。このブックレットに写真が載ってる Rizzo の tambourin、 いろいろメカが付いて凄いことになってます (フォトログ)。 中身の方は tambourin を叩きながら歌う地味な作品なので、あまりお薦めしません。

Oboa をリリースしているレーベル Deux Z は プロヴァンスはマルセイユ (Marseilles, Provence, France) の jazz / improv のレーベルです。 1990年代半ばは Yves Robert、Benoît Delbecq や Noël Akchoté 等を リリースするレーベルとして注目していたのですが (レビュー 1, 2)、 2000年代に入ってリリースを聞かなくなっていました。 一方、同じく Catherine Peillon の運営する姉妹レーベル L'Empreinte Digitale が 最近になって地中海音楽の新作を多くリリースしており、 そちらに重心を移しているように思っていました。 Oboa は久々に見かけた Deux Z の新作で、まだ活動を続けていたのかと、 感慨深かったりしました。 それも、L'Empreinte Digitale のリリースとの共通点も感じる地中海香る仕上がり。 最近の自分の好みなので、この路線で、これからもリリースを続けて欲しいものです。

今年に入ってイタリアの roots-oriented jazz / improv にハマっている (関連発言) わけですが、 今回も Rizzo がイタリアなのでカスっているといえば、そうだったり。 ま、イタリアに限らず地中海風 roots-oriented jazz / improv にハマってる、 というところでしょうか。

jazz / improv 文脈での double-reed 吹きの話に戻りますが、 僕がぱっと思い付く限りでは、 Oregon の Paul McCandless が oboe と cor anglais をよく吹いています。 あと、Cecil Taylor 界隈でたまに名前を見かける Karen Borca が bassoon 一筋です。 他に面白い double-reed 吹きがいたら、是非教えて下さい。 そういえば、菊地 成孔 がもともと oboe 吹きだったという噂を耳にしたのですが、 検索した限りでは裏は取れませんでした。 というか、検索結果にノイズが多くてよくわかりません……。 楽器演奏をしないこともあり、double-reed が好まれない理由はよくわからないのですが、 saxophone や clarinet のような single-reed の木管楽器に比べて音量が出ないから、 という話を聞いたことがあります。実際のところはどうなのでしょう?

[1184] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Mar 24 23:25:06 2005

ハマモトさん、jazz 文脈での bassoon 吹きの紹介、ありがとうございます。 さすが、ハマモトさんらしいセレクションです。

Ex Ovo Pro というバンドは全く知りませんでした。 Mandi Riedelbauch は single-reed (saxophone) / double-reed (bassoon) 両刀使いなんですね。 European Scpassvogel (AMAYANA, A 4504, 1976, LP) はウェブサイトで各曲1分ずつ mp3 のサンプル (各曲約1分) が聴けるので、 さっそく聴いてみました。 "Mr. & Mrs. Scrooples Lament" や "It’s rainin‘ in my house" は bassoon っぽいですね。ふむふむ。意外とダウンテンポな jazz rock です。

Klaus Thunemann が bassoon 吹いている Michael Naura, Vanessa (ECM, ECM1053, 1975, LP)、 CD化されてないようですね……。Naura は MPS にもリーダー作ありますよね。 こちらも気になるので、今後の探索対象にしたいと思います。 Klaus Thunemann はもともと classical のミュージシャンなのでしょうか、 ECM を検索したら、 Jan Dismas Zelenka, Trio Sonatas (ECM New Series, ECM1671/72, 1999, 2CD) なんてものが出てきました。classical というか古楽のようですが、 bassoon の他 oboe 2人 (それも1人は Heinz Holliger) と double-reed の音が堪能できそうです。 って、classical の分野では double-reed はそんなにマイナーでないかも。 ただ、lute や harpsichord も使ってるし、聴いてみてもいいかしらん。

ハマモトさん以外でも、 他にも double-reed (oboe, cor anglais, bassoon, etc) を使った 面白い jazz のレコードを御存知でしたら、是非、教えて下さい。 すぐに買ってフォローできるとかそういうわけにもいかないと思いますが……。