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イタリアの音楽について (2005/1-3)

2005年前半の一連のイタリアの音楽に関する発言の抜粋です。 順番は古いものほど上になっています。 リンク先のURLの維持更新は行っていませんので、 古い発言ではリンク先が失われている場合もありますが、ご了承ください。 コメントは談話室へお願いします。

[1072] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Jan 3 1:23:37 2005

今年最初の音盤雑記帖へのレビューを書きました。

1990年代にイタリア (Italy) の jazz / improv. シーンで活動し始めた guitar 奏者 Simone Guiducci の特集ということで、 Simone Guiducci Gramelot Ensemble, Cantador (Felmay / Newtone, FY7017, 2000, CD)、 Simone Guiducci, Django's Jungle (Splasc(h), CDH829.2, 2001, CD)、 Simone Guiducci Gramelot Ensemble, Chorale (Felmay / Newtone, FY7023, 2002, CD)、 Simone Guiducci Gramelot Ensemble, Dancin' Roots (Felmay / Newtone, FY7025, CD, 2004) を4タイトル併せてレビューしました。 Guiducci を最初に聴いたのは Gramelot Ensemble の2作目 Chorale で、 それも、今最も僕が好きな jazz / improv. の女性歌手 Maria Pia De Vito (レビュー 1, 2) が参加してしているから、という……。 しかし、期待以上に良かったので、 とりあえず2000年以降にリリースされた4タイトルを全て入手してみたのでした。 結局、最も気に入ったのは最初に聴いた Chorale でしたが、 他の作品も良かったので全部併せてレビューすることにしたのでした。

これを聴いていて感じたのは、 Chris Speed による地中海風 jazz プロジェクト Pachora の影響。 というか、 Django's JungleChorale には Speed が参加しているわけで、共通点が無い方が変ではあるんですが。 逆に言えば、Pachora の音楽には、 Guiducci らイタリアのミュージシャンとの活動で得た地中海的な音楽性が フィードバックしているのかもしれないです。

話がイタリアからギリシャ (Greece) に飛びますが、 去年末に piano 奏者 Sakis Papadimitriou について検索していて、アテネ (Athens) にあるオルタナティヴな音楽スペース Ektopia のサイトに行き当たりました。 通販のカタログのカバー範囲が興味深かったので メールを出してみたのですが、残念ながら返事は得られませんでした。 そんなカタログを見ていて、 DIVERSE JAZZ/ IMPROVISED /BALKNA の所で、 "A great mix of traditional Greek theme dances (Macedonian, Thrakian, Hipirotic) with funk, jazz and dub extensions similar to Chris Speed, Pachora etal. from the N.Y. downtown scene." なんて記述を見付けて、やっぱり Pachora は重要なバンドだなぁと思いました。

Chris Speed / Pachora だけでなく Matt DarriauParadox Trio、 Pachora と Paradox Trio の guitar/saz 奏者 Brad Shepik の率いる The Commuters などの New York down town シーンの地中海風 jazz プロジェクトが、 イタリアやギリシャの jazz / improv. シーンにおける バルカン〜地中海的な音楽要素の取り込みに影響を与えているようにも思います。 そういえば、以前にレビューを書いたギリシャの Ross Daly, Synavgia (Libra Music, LM019-2, 1999, CD) には Paradox Trio の Rufus Cappadocia が参加していましたし。 もちろん、イタリアやギリシャのミュージシャンが 一方的に Pachora や Paradox Trio の影響を受けたというよりも、 相互に影響を与えあっているのでしょうけど。

Ross Daly, Synavgia をリリースしているギリシャのレーベル Libra Music のリリース (レビュー 1, 2, 3, 4) をフォローしていてもそうなのですが、 ヨーロッパの folk-influenced な jazz / improv. は ECM が培ってきたようなやり方を 手本にしているのだろうなぁと感じるところが多いのは確かです。 しかし、それだけではなく、New York down town シーンの klezmer や地中海的な音楽要素を取り入れた jazz / improv. の影響というのも 無視できないように思います。 ま、僕自身、Pachora の良さに気付いたの1年くらい前のこと (関連発言) で、 もっといろいろチェックしなくてはいけないなぁ、と思っていたりしますが。

[1073] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Jan 3 22:29:06 2005

昨晩の話の続き、というか、 Simone Guiducci Gramelot Ensemble, Chorale (Felmay / Newtone, FY7023, 2002, CD) に参加していた jazz / improv. 文脈で活躍する女性歌手 Maria Pia De Vito の話です。 De Vito は「イタリアの」という形容抜きで今僕の一推しの jazz / improv. 文脈の女性歌手ということで、 最近のリリースをフォローしてきたわけですが (レビュー 1, 2)、 1990年代にイタリア (Italy) でリリースされた音源を 遡って少しずつ入手しているので、それを軽く紹介。

Enzo Pietropaoli, Stolen Songs (Splasc(h), CDH633.2, 1998, CD) は、De Vito の1990年代のイタリア編成バンドの bass 奏者による rock / pops カヴァー曲集で、 全曲で De Vito が歌っています。それも、オープニングがなんと Sex Pistols, "Holidays In The Sun" という。 個人的には Sinead O'Connor, "Nothing Compares 2 U" 〜 The Doors, "Riders On The Storm" 〜 Lou Reed, "New York Telephone Conversation" あたりのカバーに引っかかるわけですが、普通に Bob Dylan、The Beatles や Joni Mitchell、Anita Baker や Stevie Wonder のカバーとかもやってます。 De Vito と資質的に近いポルトガルの女性歌手 Maria João が出したカバー曲集 Undercovers (Emarcy (Portugal), 2002) なんか連想させられます。 といっても、Undercovers と違って、もっと普通に歌ってます。 オケとか使わず、Battista Lena の guitar も Bill Frisell を思わせるような空間を生かしたアレンジも好きですが、 なんか普通過ぎます……。De Vito ならもっと凄い歌唱で元歌脱構築できたのでは……。うーむ。

Maria Pia De Vito / Rita Marcotulli, Nauplia (Egea, SCA046, 1995, CD) は、副題の "Musica di Napoli tra melodia e improvvisazione" ということで、 彼女の地元ナポリ (Naple) の歌をしっとり歌ったりもしていて、翌年にリリースする Fore Paese (Polo Sud, PS009, 1996, CD) に雰囲気が近いです。 Marcotulli (piano)、Pietropaoli (bass) などバックの面子も重なりますしね。 悪くはないのですが、やはり、彼女がふっ切れるのは、後の名作 Triboh (Polo Sud, PS026, 1998, CD) からなのかしらん。

ペルージャ (Perugia) のレーベル Egea からはもう一枚、 Maria Pia De Vito, Phoné (Egae, SCA063, 1998, CD) が出ていますが、こちらはふっ切れた後という感じでしょうか。 piano 奏者も John Taylor になって ECM 的な透明感というか、この後にリリースされる Maria Pia De Vito / John Taylor / Ralph Towner, Verso (Provocateur, PVC1023, 2000, CD) に近い雰囲気です。bass は Pietropaoli のままですが。 Gianluigi Trovesi の clarinet の響きや Federico Sanesi の hand drum (darbuka とか) の硬質な音が さりげなくバルカン〜レバントっぽさを加えているのも良いです。 というか、なぜかマケドニア (Macedonia) の伝承曲に基づく曲を2曲やっています。

と、遡って3枚紹介しましたが、彼女をまず聴くのであれば、やはり Maria Pia De Vito / Arto Tuncboyaciyan / Rita Marcotulli, Triboh (Polo Sud, PS026, 1998, CD) が大変にお薦めです (レビュー)。 これは、イタリアの folk-influenced jazz の中でも名作といっていい作品でしょう。 続いてのお薦めは、今のところの最新作 Maria Pia De Vito / Patrice Heral, Tumulti (Il Manifesto, CD106, 2003, CD) でしょうか (レビュー)。 そういえば1年以上リーダー作の新作が出ていないですね。新作がとっても待ち遠しいです。

と、CDで聴くものいのですが、やはり、生で観て聴いてみたいです。 しかし、日本では全く注目されていないし、来日公演なんて絶望的でしょうね……。 しくしく。

[1099] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Jan 18 23:33:56 2005

二週間ほど開いてしまいましたが、 Simone Guiducci、Maria Pia De Vito に続いて イタリア (Italy) の folk-oriented jazz / improv の話を。 ちなみに、前の発言は ここにまとめておきました。

イタリアの saxophone 奏者 Luigi Cinque の名前を知ったのは1990年代後半、1970年代に活動したレーベル Cramps について調べていたときだったでしょうか。 Cramps レーベルの DIVerso というシリーズの中に Derek Bailey、Steve Lacy や Mario Schiano といった有名なミュージシャンと並んで 彼の名前があったので、ちょっと気になったのでした。 しかし、当時はあまり情報も入手できず、彼が参加したレコードも見当たらず、 そのまま忘れかけていたのでした。

そんな Luigi Cinque が Paolo Fresu (trumpet)、 Enzo Pietropaoli (bass)、 Danilo Rea (piano) といった 1990年代に入って頭角を現したような世代のイタリアの jazz 文脈のミュージシャンを従え、 さらに、モロッコ (Morocco) の セファルディ (Sephardi) の歌手 Emil Zrihan や 女性コーラスの Bnet Houariyatアルメニア (Armenia)duduk 奏者 Djivan Gasparyan といった world music の文脈で知られるミュージシャンたちをフィーチャーしたのが、 Tarantula Hypertext O'rchestra です。2000年前後から活動しているようです。

Luigi Cinque Tarantula Hypertext O'rchestra の唯一のリリース Tangerine Cafè (Forrest Hill, FHME19, 2002, CD) は1年ほど前にはリリースを知って気になっていたものの、 面子が豪華過ぎてアレかなぁという予感もあってなんとなく保留していました。 で、最近になって入手して聴いてみたら、意外に良いじゃないですか。汎地中海版の Bugge Wesseltoft New Conception Of Jazz とか呼ぶと褒め過ぎのような気もしますが、 folk-oriented な nu jazz の佳作だと思います。 というわけで、音盤雑記帖レビューを載せておきました。 本当は先日日曜に載せるつもりだったのですが、 金曜土曜と呑み過ぎて間に合わなかったのでした……。

ところで、Tangerine Cafè を聴いていて思い出したのが、 Paolo Fresu, Sono 'E Memoria (ACT, 9291-2, 2001, CD)。この作品も大好きで、 以前にレビューを書いてあります。 ま、どっちにも Fresu が参加しているということもありますが、 electronica 使いな folk-oriented jazz という点でも。 といっても、Tangerine Cafè がビート感がある使い方なのに対し、 Sono 'E Memoria は live electronics という感じの音弄りなのです。 しかし、それも表現の幅なのかなぁとも思います。 もっとちゃんとチェックすれば、 イタリアにもいろいろ面白そうなこと試みているバンドがもっといそうな気もします。 もしお薦めのがある方がいたら、教えて頂けませんか?

ちなみに、Sono 'E Memoria の jazz な核となっているのは Paolo Fresu (trumpet)、 Furio Di Castri (bass)、 Antonello Salis (accordion, piano) の P.A.F. と言えるのではないかと思います。このトリオの1作目 Live In Capodistria (Splasc(h), CDH625.2, 1996, CD) は未聴ですが、最近、新作 Morph (Label Bleu, LBLC6669, 2004, CD) をリリースしたので、さっそく聴いてみました。 ゆったりした展開から緊張感高めの外れた感じの演奏に振れたりする所は好きですが、 どうも普通の jazz だよなぁ、と思ってしまいます。もう一癖欲しいです。 もっと派手な live electrics 使いがあったらなぁ、とか、 歌手・コーラスをフィーチャーするような所もあったらなぁ、とか、 そういう期待もしてしまうのは、Sono 'E Memoria のせいでしょうか……。

[1130] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Feb 13 11:30:31 2005

イタリアから大きな小包が到着しました (フォトログ)。 予想より大きなものでびっくり。 以前から気になっていたイタリア (Italy) の rock / pop レーベル Mescal から。 独立系ですがミュージシャン/タイトルによっては Sony や Universal の配給を使っているものもあります。

Mescal レーベルに気付いたのは、1990年代に出てきたバンド Mau Mau の最近の作品をリリースしているレーベルとして。 accordion の使い方とかイタリア版 Les Negresses Vertes という感もあって、 Mau Mau は実はそれなりに好きだったりしました。 1990年代は EMI のリリースということもあってそれなりに日本国内も流通していたわけですが、 最近は全然みかけないので解散したのかと思ったら、レーベルを移籍していたという。 といっても、Mau Mau は 2002年を最後にアルバムリリースないし。 ま、最近は、Mau Mau の trumpet 奏者 Roy Paci も関わっている バンド Zu や banda プロジェクト Banda Ionica の活動が目立ってますけど……。

ところで、去年の11月に行なわれた、 The Ex 結成25周年記念ツアーの Zu + Konono No.1 + The Evans (Ian MacKaye (Fugazi) + Amy Farina (ex-Lois, The Warmers)) + Han Bennink + The Ex というラインナップ、めちゃくちゃ凄いんですけど。 こういうラインナップのライブ観たいんだけどなぁ。 しかし、日本ではこういう組み合わせはありえないだろうなぁ……。

Mau Mau の他にも Mescal レーベルがリリースしているバンドとしては、 Violent Femmes がらみでデビューした Yo Yo Mundi がいます。 マネージメントだけですが Modena City Ramblers もそうです。 あと、Robert Wyatt との共演 "Goccia" (in Nido, 1999) で知名度アップした 女性 SSW の Cristina Donà や、 ethno-electronica な女性歌手 Fiamma Fumana とかをリリースしてます。 今、イタリアで最も旬な rock / pop のレーベルと言っていいように思います。 また、Mescal 在籍バンドに限らずイタリアの alt rock/pop をラインナップした イタリア国内巡回野外フェスティバル Tora! Tora! Festival を2001年以降、毎年開催しています。

2年前くらい前にウェブサイトを見付けて以来気になっていた Mescal ですが、 英米のオンラインショップや日本の輸入盤店ではほとんどみかけなくて、 なかなか入手できないでいたのでした。 しかし、イタリア語のみだったので、ウェブの直販ショップは使っていませんでした。 rock / pop 的な音から遠ざかっていることもあり、 直接コンタクトは取ろうという気合もありませんでした。 しかし、今年の年明けにイタリアの folk-oriented な jazz をいろいろ聴いていたら なんとなく勢いがついたので、英語でメールして直接コンタクトを取ったところ、 かなり親切に対応してくれたのでした。 8タイトル (CD 13枚) まとめてオーダーしてみたのですが、 送料込みで全部で約 EUR85 (約12,000円。CD 1枚あたり1,000円弱) という廉価 (おそらく卸値) で売ってくれました。 さらに、届いた小包を開けてみたら、注文の他に4タイトルもおまけしてくれたうえ、 Tora! Tora! Festival 記録写真集まで付けてくれていました。有難いです。

独立系レーベルに直接コンタクトを取ると、 プロモ盤や販促資料をいろいろ付けてくれることは、それなりにあります (例えば、Beggars Group の場合)。 しかし、ここまでしてもらえるのは珍しいです。 とても嬉しいのですが、何もお返しできないのがちょっと申し訳ないです。 実は、レーベルと直接メールをやりとりしていて、 「我々のプロダクションに興味ありそうな日本のオンラインショップを知っていたら 紹介して欲しい。コンタクトを取れるかもしれない」 と言われてしまったのでした。 一応、いきつけのレコード店を紹介したものの、 普通の一音楽ファンに過ぎず音楽業界へのコネはありません、 と答えざるを得ませんでした……。 Mau Mau とか Cristina Dona とか欧州で知名度あるミュージシャンを抱えているし、 たぶん、日本でもちゃんと売りたいと考えているんでしょうけど……。 というか、いろいろおまけを付けてくれたのは、 そういうきっかけになればと考えてのことだと思うんですが……。

今回同封されていた 70 Artisti Si Raccontano Nel Diario Fotografico Del Festival Italiano Itinerante Tora! Tora! (Mescal Libri, ISBN88-901043-1-7, 2004) は、2001〜2003年の Tora! Tora! Festival の ステージの様子を捉えた全144ページの写真集です。 また、フェスティバルにあわせてリリースされている年刊オムニバス・シリーズ4年分 Tora! Tora! 2001 (Mescal, MES505179-2, 2001, CD)、 Tora! Tora! 2002 (Mescal, MES508728-2, 2002, 2CD)、 Tora! Tora! 2003 (Mescal, MES512828-2, 2003, 2CD)、 Tora! Tora! 2004 (Mescal, MES0011, 2004, 3CD)、 も入手しました。 この写真集とオムニバス・シリーズは、 2000年以降のイタリアの alt rock / pop シーンの動向を知る貴重な資料です。 聴く時間をどう取るのかという問題はあるのですが、少しずつ開拓していきたいものです。

写真集を見ていて、やっぱり、 ちょっとぷっくりした感じの頬Cristina Donà 萌え。 実は、2年前、Dove Sei Tu (Mescal, MES510756-2, 2003, CD) を ジャケット買いしてしまったという過去もあったりして……。 閑話休題、音楽の方は、Liz Phair や PJ Harvey に例えられることもある Donà ですが、 そんなにエッジ立ってないかしらん。 1990年前後の US indie rock ぽ過ぎて、正直、もう一癖欲しいように思います。

[1162] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Mar 6 21:59:51 2005

イタリア (Italy) の伝統的ブラスバンド banda のリバイバルの中でも秀逸な出来だった Banda Citta Ruvo Di Puglia, et al, La Banda (ENJA, ENJ-9326-22, 1997, 2CD) や、banda 物ではないものの、そのプロジェクトとも共通点のある Michel Godard, Castel Del Monte (ENJA, ENJ-9362-2, 2000, CD) で素敵な歌声を聴かせてくれていた (レビュー) イタリアの女性歌手 Lucilla Galeazzi をフィーチャーした新譜 Lucilla Galeazzi / Vincent Courtois / Michel Godard, Trio Rouge (Intuition, INT3353-2, 2004, CD) が出ています。バックアップの2人もそれらのアルバムの延長なのですが、 banda → アンサンブル → トリオ と編成がどんどんミニマルになってますね。 期待どおりステキな roots-oriented jazz vocal 物です。 というわけで、音盤雑記帖レビューを書いておきました。

そんなに意識しているつもりは無いのですが、どうやら今年に入ってからすっかり イタリアの roots-oriented jazz にハマっているようです (関連発言)。 今年に入って音盤雑記帖で取り上げた6枚のうち 3枚がイタリア物だし。 ま、今回の Trio Rouge はバックの2人はフランス (France) のミュージシャンですが、 取り上げているのはイタリアの歌なので、そう言っていいと思います。

[1168] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Mar 11 0:47:39 2005

イタリアの新聞 Il Manifesto といえば、イラク武装勢力によって人質となり、さらに解放直後に米軍に銃撃された (イタリア人女性記者銃撃事件:誤射?, 暗いニュースリンク 2005/3/7) Giuliana Sgrena 記者 (BBC インタビュー) が所属していた新聞として、 日本でもぐっと知名度上がった (ホントか?) ように思います。 Il Manifesto の新聞記事は、正直、あまりフォローしていませんでしたが、 この新聞社がリリースしている レコード (CD) をそれなりにフォローしていました。 2年半ほど前にも 軽く紹介しましたね。 独立系左派の新聞社からのリリースらしい、 オルタナティヴな jazz、rock、world music というカラーが好きだったりします。 比較的有名所では、Riccardo TesiDaniele Sepe、あと、なぜか Art Ensemble Of Chicago 関連のリリースが多かったりします。

Il Manifesto からのリリースで初めて買ったのは、たぶん、 Various Artists, Metissage (Il Manifesto, CD021, 1997, CD) です。 好きな女性 jazz piano 奏者 Rita Marcotulli が 参加しているので買ったように思いますが、ジャケットにもアラビア文字が踊っていて 北アフリカ色濃い world music といった方がいい仕上がりです。 けど、いまいち作りが緩く感じされるのが惜しいですね。ちなみに、これは、 SOS Razzismo Italia (1985年にフランスで始まった人種差別反対運動 SOS Racisme のイタリアでの組織) 支援のために制作されたものです。

今僕の一推しの jazz / improv. 文脈の女性歌手 Maria Pia De Vito がらみの録音も、Il Manifesto からのリリースがけっこうあります。 というか、Top Ten 2003 に選んだ Maria Pia De Vito / Patrice Heral, Tumulti (Il Manifesto, CD106, 2003, CD) (レビュー) がそうですね。 他にも、Andrea Alberti Orchestra Mediterranea, Nubia (Il Manifesto, CD065, 2002, CD) に参加して、数曲でスキャットを聞かせてくれます。ここではあまり凄くないですが。 というか、このアルバム、Famoudou Don Moye (Art Ensemble Of Chicago) や Antonello Salis (Paolo Fresu らとの P.A.F.、関連発言) をフィーチャーしていて、期待してたんですけど……。 面子の割りには詰めの甘い roots-oriented jazz という感じだったので、 レビューとかせずにスルーしてしまってました。うむ。

先日、イタリアの alt rock 系独立系レーベル Mescalをしましたが、 Mescal からCDを直接買ったときにオマケに付けてくれたCDの中に、 Yo Yo Mundi, Sciopero (Il Manifesto, CD072, 2001 / Mescal, MES009, 2004, CD) がありました。 これは、もともと Il Manifesto がイタリア国内盤としてリリースしていたものを、 去年秋ロンドン (London) での Strike (Sciopero) ライヴに合わせて Mescal が欧州盤として再発したものです。 これは Rough Trade Shops や BBC がフィーチャーしていて気になっていたので、 オマケに付けてくれてとても嬉しかったです。 Russian Avant-Garde サイレント映画の名作 『ストライキ』 (Strike, Sergei Eisenstein (dir.), 1924) を上映しながらのライブというのをやっているのですが、 そのライブ録音 (観客の手拍子とかも入っている) をベースに スタジオ録音も加えて制作したアルバムです。 インストゥルメンタルですが、時折 The Clash のようになる alt rock といった所でしょうか。 Strike は以前に十月シネクラブで 上映したことあるのですが、 今度上映する機会があったら、是非これをかけながら上映したいものです。 ところで、Yo Yo Mundi の公式サイトの ホームページ、 Giuliana Sgrena を大きくフィーチャーしていますね。あと Strike (Sciopero) のページの冒頭の画像がカッコいい〜。これ、Tシャツにしたい……。

そんなわけで、Il Manifesto にはこれからも頑張って欲しいものです。

実は、約1ヵ月前にイタリアに注文した Il Manifesto のCD 2枚がまだ届きません。 遅れてるのかなー、って思っていたところに、 Giuliana Sgrena 記者銃撃事件があって、ちょっとイヤな感じです。うーむ。

[1298] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jun 5 22:27:31 2005

マケドニア (Macedonia) の Gypsy brass Kočani Orkestar が イタリア (Italy) の jazz / improv. の文脈で活躍するミュージシャン Paolo FresuAntonello Salis と共演したライヴ盤 Live (Il Manifesto, CD143, 2005, CD) の レビュー音盤雑記帳に載せました。 今年の頭からイタリア物がマイブームなわけですが、 またしてもイタリア物という……。

Kočani OrkestarL'Orient Est Rouge (Cramworld, CRAW19, '97, CD) (レビュー) 以来フォローしてきている大好きな Gypsy brass です。 ルーマニアの Gypsy バンドと共演した Taraf De Haidouks, Band Of Gypsies (CramWorld, CRAW24, 2001, CD) (レビュー)、 イタリアの semi-classical なアンサンプルや banda と共演した Harmonia Ensenble & Kočani Orkestar, Ulixes (Materiali Sonori, MASOCD90129, 2002, CD) (レビュー)、 DJと remix という形で共演した Various Artists, Electric Gypsyland (CramWorld, CRAW32, 2003, CD) (レビュー) と、最も異種交流戦をこなしている Gypsy brass のように思います。 それも、単にCDを制作するだけでなく一緒にツアーをしたり、 Electric Gypsyland にしても "Bucocina Club" のような レギュラーのイベントが元になっていたりと、 単発の特別セッションではない活動になっている所も、 地に足がついていて良いように思います。

Kočani Orkestar / Fresu / Salis という組み合わせも、 あるフェスティバルでの特別セッションではありません。 CDに収められているのは2004年のツアーでの録音なのですが、 2003年には既に活動していたようです。 例えば、Asti Musica 2003 に出演した際の 写真をウェブで観ることができます。 Fresu のサイトのスケジュールを見ると、今年も7月にツアーをするようです。 このように継続的なプロジェクトとなっているだけに、今後の展開も楽しみです。 ちなみに、ll Manifesto 紙 (関連発言) に このプロジェクトについての Fresu への インタビュー記事 (2005/3/23) が掲載されています。残念ながらイタリア語のみで英語翻訳は無いようですが。 継続的に活動しているのであれば、この組み合わせで是非来日して欲しいですが、 jazz / improv. ファンと world music ファンの棲み分けがはっきりしている 日本じゃまず無理そうですね……。

Fresu / Salis の流れからみると、このプロジェクトは Paolo Fresu, Sono 'E Memoria (ACT, 9291-2, 2001, CD) (レビュー, 関連発言) に近い作品です。 Sono 'E Memoria はサルディーニャ (Sardinia)、 Kočani Orkestar / Fresu / Salis はバルカン (Balkan) という違いはありますが、 folk 的な要素の扱いや live electronics 使いなど、共通点が多いです。 Fresu 界隈のこのような試みの今後の展開にも期待したいものです。 これらの試み、今の自分のツボにはハマりまくりですし。

[1301] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Jun 8 22:49:51 2005

数日前に振った Kočani Orkestar meets Paolo Fresu & Antonello Salis, Live (Il Manifesto, CD143, 2005, CD) ののフォローアップ。

Paolo Fresu 絡みといえば、今年の頭に Luigi Cinque Tarantula Hypertext O'rchestra, Tangerine Cafè (Forrest Hill, FHME19, 2002, CD) を紹介しています (関連発言, レビュー)。 その Cinque が1970年代にやっていたバンド Canzoniere Del Lazio の歌手 / guitar 奏者 Piero Brega が新譜 Come Li Viandanti (Il Manifesto, CD141, 2005, CD) をリリースしています。Cinque は参加してませんが、 バックを固めるのは Paolo Fresu (trumpet) や Enzo Pietropaoli (bass)、 Danilo Rea (piano) などと、Tarantula Hypertext O'rchestra と面子の重なりは大きいです。 Antonello Salis (accordion) も参加しています。 そんなわけで、Braga の歌をフィーチャーした Tarantula Hypertext O'rchestra のような展開を期待したのですが……。 時折 folk/roots っぽい要素が織り込まるものの、 ちょっとしゃがれた渋めの声のイタリア語で歌われる落ち着いた pop という感じでした。うーむ。

Fresu / Salis 関連盤といえば、 今年の頭の時点では未聴だった P.A.F. の1作目 Live In Capodistria (Splasc(h), CDH625.2, 1996, CD) をその後入手して聴きました。 新作 Morph (Label Bleu, LBLC6669, 2004, CD) にも感じることですが、 やっぱり普通の jazz という感じで、もう一癖欲しくなってしまいます。 いや、Morph 以上に地味で……。うーむ。 Fresu 関連盤もリリース多くて、必ずしも自分のツボにハマるとは限らない所が、 うかつに手を出せず悩ましい所です。

そういえば、Fresu は参加していませんが、 Mauro Orselli / Evan Parker / Antonello Salis, True Live Walnuts (Splasc(h), CDH631.2, 1997, CD) という作品を最近、入手しました。 Orselli は radio の音を使ったり、 水をバチャバチャピチャビチャしたり (water percussion)。 もちろん、Parker (soprano & tenor saxophones) も 抽象的なフレーズをピロピロという感じで、free improv. 色濃い作品です。 こういうのも嫌いではないのですが、いまいち決め手に欠けるかしらん……。うーむ。

Fresu / Salis から離れますが、イタリアの jazz / improv. 物といえば、 オールスター的ビックバンド Italian Instabile Orchestra (2001年来日時のレビュー) を率いていることで知られる Pino Minafra の新作 Terronia (ENJA, ENJ9480-2, 2005, CD) が出ています。メインはいつもの 4管7tet Sud Ensemble ですが、 1曲 Meridiana Multijazz Orchestra というビックバンドで演ってます。 Minafra って big band / banda 的なものが好きですねぇ。 しかし、今回の売りは "イタリアの Zap Mama" な女性ヴォーカル 4tet Faraualla の参加です。今までにリリースしている2枚のアルバム Faraualla (Amiata, ARNR499, 2001, CD) と Sind' (Amiata, ARNR1302, 2002, CD) もとても気にいっていますし (レビュー)。 しかし、実際の仕上りは……、ちょっと編曲が重ったるいかしらん。 ビッグバンド対女性ヴォーカルということで、 Banda Citta Ruvo Di Puglia feat. Lucilla Galeazzi, Pino Minafra, Gianluigi Trovesi, Michel Godard, Jean-Louis Matinier, Willem Breuker, La Banda (ENJA, ENJ-9326-22, 1997, 2CD) (レビュー) のような美しい作品に仕上っているのではないかと、 期待が大きすぎたようです。うーむ。