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Nouvelle Scène Française について

Nouvelle Scène Française に関する 2006年1月頃の一連の発言の抜粋です。古い発言ほど上になっています。 リンク先のURLの維持更新は行っていませんので、 リンク先が失われている場合もありますが、ご了承ください。 コメントは談話室へお願いします。

[1518] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Jan 23 1:42:48 2006

先週金曜の晩に いきつけのレコード店で、 大洋レコード発行の 「Nouvelle Scène Française」 と題したフライヤを貰いました。 「(前略)その中でも代表的なものが80年代のマノ・ネグラの大活躍。 触発されるように多くのバンドが羽ばたいていったが、 2000年代の半ばに来てインディペンデントな活動をするバンド達がまた再興している。 これらの熱いバンド達のシーンを現地では総称 "ヌーヴェル・セーヌ (シーン)" と呼ぶ」 ということで、これらのCDを紹介しているフライヤでした。 フライヤでCDが紹介されているグループは以下の通りです。

Rue D'La Gouaille, Les Ogres De Barback, Les Hurlements D'Leo, Karpatt, Sanseverino, Les Szgaboonistes, Les Blérots De R.A.V.E.L, Rue De La Muette

フランスの独立系レーベルを拠点にする chanson / rock / pop の中でも あまり日本語で紹介されてこなかったグループが多く取り上げられているので、 こうして日本語で紹介されるということは良いことと思います。 しかし、挙げているバンドを見ても1990年代から活動しているバンドが多く、 「2000年代の半ばに(中略)再興している」って本当か!?と思うことしきりです。 葉書大4頁という非常に限られた紙面なので仕方ない面もありますが、 どうせならもっとちゃんと紹介した方が良いと思うので、 自分なりに知っている範囲のことを、ここで書いておきます。 そんなに詳しいわけではないので、誤りの指摘や追加の情報提供を歓迎します。

まず、フライヤで使われている Nouvelle Scène Française (Scène Néoréaliste Française とも) というジャンルが使われるようになった時期ですが、 おそらく2000年代初頭ではないかと思われます。 僕ですら気付く程度に知られるようになったのは2002年。この年、 フランスのアンデ (indies。アンデパンダン (independent)) の chanson / rock / pop を フランス国外へ紹介する2つのアンソロジーがリリースされます。 一つは英米を対象にしたリリースで、 David Byrne の編集による Cuisine Non-Stop: Introduction To The French Nouvelle Generation (Luaka Bop, 2002) です (談話室の関連発言)。 このライナーノーツで Byrne は "Neo Realism" という言葉を使っています。 もう一つはドイツでのリリースで、まさに Nouvelle Scène Française と謳った Le Pop: Die Chansons Der Nouvelle Scène Française (Le Pop / Melting Pot, 2002) です。 Le Pop はその後サブタイトルを Les Chansons De La Nouvelle Scène Française と代えて シリーズ化され、2005年末までに Le Pop 2 (Le Pop, 2003), Le Pop En Duo (Le Pop, 2004), Le Pop 3 (Le Pop, 2005) がリリースされています。

それでは、どのようなグループ/ミュージシャンが この「シーン」に含まれているとみなされているのか、 まずは、2002年のコンピレーションに収録されたものから見てみましょう。 グループ/ミュージシャンの公式サイトへのリンクを作るのも さすがに手間なので、ここは省略……。

Cuisine Non-Stop
Lo'Jo, Têtes Raides, Louise Attaque, Arthur H, Java, Ignatus, La Tordue, Dupain, Mickey 3D, CQMD (Ceux Qui Marchent Debout), Les Pires
Le Pop
Jérôme Minière, Françoiz Breut, Clarika, Bertrand Burgalat, Natacha Tertone, Keren Ann, Dominique A, Autour De Lucie, Toog, Katerine, -M-, Thierry Stremler, Les Soeurs Winchester, Yann Tiersen, Benjamin Biolay

最近ではこのシーンを扱うウェブサイトもいろいろ出来ています (フランス語ですが)。 例えば、そのものずばりのタイトルの Nouvelle Scène Française は、かなり充実したフランス語のサイトのように思います。 Scène Néoréaliste Française を謳ったサイトとしては Caderia.com があります。 こういったサイトで取り上げられているグループ/ミュージシャンも、 Cuisine Non-StopLe Pop といった編集盤に選ばれているものから 大きく外れるものではありません。

こういった編集盤やサイトなどを見る限り、 Nouvelle Scène Française というのは、フランスのアンデ、 もしくは Lithium (Labels/EMI), Tôt Ou Tard (Warner Bros.), Rosebud (Barclay/Universal) のような アンデに準じたレーベルを拠点に活動する グループ/ミュージシャンからなるシーンを指しているようです。 しかし、メジャーを完全に排除したものでもありません。 音楽のスタイルは chanson Français / rock / pop といった歌物をベースとしたものです。 アンデであっても、jazz / improv 的なインストゥルメンタルだったり、 歌物でも1990年代以降の club music (techno / house / breakbeats) をベースとしたもの、 自作ではなく伝承歌を中心に歌う folk/roots ものも除かれます。 2000年代に入ってデビューしたりブレイクしたというよりも、 1990年代から地道に活動を続けてきたグループやミュージシャンが多く含まれています。 この手のアンデのミュージシャンは1990年代後半には日本にそれなりに紹介されていたように思います。 例えば、フランスのポピュラー音楽を紹介する日本語のサイト YTTセレクションで 1990年代から紹介されていたミュージシャンが多く含まれています。 また、Cuisine Non-Stop のライナーノーツでも、Byrne は 「再定義」であり「少くとも外国人の我々にとって新しいジャンル」と言っています。

Nouvelle Scène Française と Scène Néoréaliste Française はほぼ同義のように思いますが、若干の違いが感じられます。 ちなみに、Byrne は Cuisine Non-Stop のライナーノーツで、 "Neo Realism" という呼称はその日常生活を主題とした歌詞と 独立系レーベルを拠点とし小さな町までツアーして回るグラスルーツ的なアプローチ から来ている、と言っています。 Caderia.com歴史概説によると、 Néoréaliste のスタイルは Têtes RaidesLa Tordue といったグループが典型のようです。 punk 的な chanson / musette に、 manouche やフランス各地の folk の要素が加わるといった所でしょうか。 この2つのグループはもちろん Cuisine Non-Stop にも収録されていますが、 Cuisine Non-Stop の選曲は Byrne の "avant" な趣味のせいか 多分にそこから逸脱しているようにも感じます。 一方、Nouvelle Scène Française という言葉を使う場合、 (アティテュードは別として) スタイル的に punk 的な要素が薄まるように思います。 そして、大洋レコード発行のフライヤ 「Nouvelle Scène Française」で取り上げているのは、 むしろ、Scène Néoréaliste Française と 言った方がしっくりくるもののように思います。

ところで、こんなことを書こうと思ったのは、大洋レコード発行のフライヤの 「2000年代の半ばに(中略)再興している」というくだりがひっかかったからです。 「今これが盛り上がっている」「これが新しい」的な 業界っぽいノリというか、メジャーなポップの煽りのようなノリは、 1990年代から草の根的に活動し続けているアンデの音楽シーンの紹介には 似合わないように感じるのです。 もしくは、表現スタイルの新規性を重視するアーティーズな人たちでもないわけですし。 メルクマールとなる2つの編集盤が欧米でリリースされた2002年に 「1990年代から地道に活動し、近年欧米でも注目され始めた」 という感じで紹介するのであればまだしも、 それから4年近く経った今頃になってそれはないだろう、とも思います。

「2000年代の半ばに(中略)再興している」に対してダウトと言った所で 力尽きた感もあって心苦しいのですが、 長くなりましたし、時間切れということで、一旦話を切ります。 個々のグループ/ミュージシャンの話や1990年代の話とかもフォローしたいですし、 去年末にした FAMDT 界隈の とも絡めて、 2002年にした "Neo Realism" のを ここで再考できたら、とは思っています。

[1519] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Jan 24 0:55:24 2006

Nouvelle Scène Françaiseのフォローアップ。

Nouvelle Scène Française と呼ばれるもののうち 以前から日本でもそれなりに知られていたのは、 Lithium や Tôt Ou Tard といったメジャー配給のレーベルの界隈 だったのではないかと思います。 しかし、大洋レコード発行のフライヤで 紹介されているグループ/ミュージシャンは、そうでないものが多いです。 自分がフォローしてきたのもメジャーに近いあたりだけですし、 これも良いきっかけかと、いきつけのレコード店にあった Various Artists, Nouvelle Guinche 2 (Productions Spéciales, PS813, 2005, 2CD) を買って聴いてみました。 ジャケットのイラストも punks 的な人々を描いていますし、 比較的 Néoréalist なものを集めているように思います。 ざっと聴いた中で最も耳を惹いたものについて、 軽く調べたことも含めて、備忘録も兼ねてリストアップ。

Amélie-Les-Crayons
男性ミュージシャン3人に女性歌手をフィーチャーした リヨン (Lyon) を拠点とする4人組。 活動開始は2002年と、比較的新しいグループです。 リリースはまだ Et Pourquoi Les Crayons? (Neômme, 2004) だけです。 (と書きましたが、その前に Le Chant Des Coquelicots (Orlan Prod., ALCDC001, 2002, CD) というリリースがありました(20 Feb 2006 追記)。) 歌詞の内容が判らないのですが、収録曲の "L Paillasson" の曲の雰囲気は 弦少めの Les Elles という感じでしょうか。
Le Crevette D'Acier
1999年にパリ (Paris) から出てきた女性1人男性3人の4人組。 去年、1st La Crevette d'Acier (Pygmalion / Zamora Productions, 2005) をやっとリリースしたようです。 女性を歌手として特にフィーチャーするという感じでないのが、逆に良いです。 "L'Air De Rien" では banjo の刻むリズムがツボでした。
Rue D'La Gouaille
ナント (Nantes。ペイ・ド・ラ・ロワール (Pay De La Loire) 地域圏の主邑。 元ブルターニュ (Bretagne) 公国の首都) の男性4人組。 活動開始は1996年で、1stアルバムは The Celtic Pogo (Les 3AC, 1997)。 今までに4枚のアルバムをリリースしています。 "Pupazzi De Pacotille" は、声がちょっと Helno っぽ過ぎな気もしますが、 banjo 使いと punk folk にしてはちょっと変なリズム感が面白いです。
Les Lutins Géants
クレオン (Créon。アキテーヌ (Aquitaine) 地域圏ジロンド (Gironde) 県) から出てきた8人組。 1st アルバムは、Crise Em Thèmes (1999)。 violin の使い方とか folk/roots っぽいのですが、 punk 的というよりも bass が post-punk / new wave 的な感じです。 ただ、歌声がいまいち好みでないのが……。

全体的な印象としては、 「ライヴは面白かもしれない」「歌詞が判れば面白そう」というのもありますが、 やはり、CD収録音源に限れば玉石混交 (石が多く感じるのは、自分の好みの問題でしょうか)。 大洋レコードのフライヤはけっこう良いセレクションしているようにも思います。

それから、banjo を使っているバンドがけっこういるのですが、 フランスのアンデなシーンで banjo が流行っているのでしょうか? マルセイユ (Marseilles, Provence) の Moussu T E Lei Jovents もそうですし。

確かに、punk や folk、musette、manouche、country、blues など いろんな音楽スタイルのミクスチャですが、新奇なものが満載という感じでもなく、 聴いていて、Têtes Raides や Helno のいた頃の Les Negresses Vertes を連想させられたものが多かったです。 あと、Nouvelle Guinche 2 を聴いていて思い出したのが、 1985年に設立され2001年に活動停止したレーベル Boucherie Production (関連発言)。 manouche や Balkan brass の要素が増えているのは今の流行と思いますが、 1990年代の Boucherie のリリースの雰囲気と変らないなぁ、と、感慨深かったです。 残念なことに Boucherie のタイトルはほとんど入手困難になっていますが。 それなりにフォローしていたのですが、こんなことなら買っておけば良かったというタイトルが沢山……。 Néoréalist の祖型としてよく挙げられている Mano Negra も デビューは Boucherie でしたし、 現在の Néoréalist のシーンを切り拓いた主要なレーベルとして 再評価されて然るべきとも思います。 2001年に Boucherie が活動停止してこの手の音楽も下火になっていくのかなと思っていたのですが、 Boucherie が無くなったくらいでは変らない程に定着していたのだなぁ、と、感慨深いです。 というか、Boucherie と入れ換わるように Nouvelle Scène とか Néoréalist とか言われるようになったわけですが、 世代交代があったりしたのでしょうか?

Boucherie には folk / roots 寄りのサブレーベル Acousteack もあり、 rock alternatif といっても folk / roots 要素も多分にありました。 そんな punk / rock alternatif 寄りの Boucherie のリリースと free jazz / improv 寄りの Silex のリリースは対称的で、 ローカルのシーンはこの2つに住み分けているなぁと、1990年代に思っていました。 そして、2002年頃にはその住み分けも解消されてきたように感じていました (関連発言)。 しかし、実は、Silex の活動は FAMDT に引き継がれ (関連発言)、 Boucherie の活動は Néoréalist たちに引き継がれ、 という感じで住み分けは続いているのかしらん、と。 そして、この2つの住み分け、punk 〜 post-punk における ポピュリスト (社会リアリズム) と前衛 (アーティーズ) の分離 (関連発言) と似ているなぁ、と感じます。 ちょっと、この問題意識を持ってフォローしていかねば、と思ったりしました。

[1520] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Jan 25 1:08:50 2006

Nouvelle Scène Française の話のフォローアップ、というか、軽い余談。

去年末、Têtes Raides が新作 Fragile (Warner Music (France), 2564626175, 2005, CD+DVD(PAL/2)) をリリースしています (って、年末に軽く言及してますが)。 制作は Noir Desir の drums 奏者 Denis Barthe。 "L'Oraison" と "De Kracht" ではオランダ (Holland) の punk / avant-rock バンド The Ex の面子がゲスト参加して、 いかにもそれな音になっています。かっこい〜。 他にも "Latuvu" では GW Sok (The Ex)、Didier Wampas (Les Wampas) や Rachid Taha が コーラスで参加してるようですが、クレジットが無ければ判らないような……。 前のスタジオアルバム Qu'Est-Ce Qu'On S'Fait Chier (Tôt Ou Tard, 2564-60771-5, 2003, CD) からその傾向はありましたが、 Nouvelle Guinche 2 と聴き比べてもかなり音弄りしていて、 Néoréalist というより、もはや avant-rock な感じです。 それも良いと思いますが。 ちなみに、DVDは Fragile の制作の様子を捉えた映像で、 ファン向けのオマケでしょうか。

Têtes Raides を初めて聴いたのは、 Mange Tes Morts (Justin / WMD, 592003, 1990, LP) で (フォトログ)。 それ以来それなりに好きで聴いてきました。 新譜が出るとすぐ買うという程熱心なファンではなかったですが……。 しかし、新作 Fragile はリリースと同時に買いましたよ。 なんせ、Noir Desir の Barthe が制作で The Ex がゲストですから、 飛び付かざるを得ないでしょう。去年の9月に The Evens が来日したとき (レビュー) に、談話室に

The Ex のTシャツを会場へ着て行ったのは、 Fugazi / The Evens と Sonic Youth の両方を交流が深いバンドだから。 今年の夏の The Ex の25周年欧州ツアーには The Evens が参加してましたし、 The Ex が Fugazi とUSツアーしたりもしています。 その一方で、The Ex は1980年代から Sonic Youth と 時折に一緒に録音してきています (関連レビュー)。 The Ex だけでなく、Fugazi + Sonic Youth 繋がりというと、 今は実質解散状態ですがフランスの Noir Desir (関連レビュー 1, 2) もそうでしたね。 そういう意味でも、The Evens + Blind Beast というダブルビルは、 hard core とは別文脈で、 いかにも欧州で The Ex かイタリアの Zu あたりが対バンしそうな組合せ、 という印象を受けました。むしろ、今回の日本側の対バンを見て、 The Ex やかつての Noir Desir に相当するようなバンドはやはり日本にいないかと……。
(Tue Sep 20 0:35:01 2005)

と書いたわけですが、書きながらもオランダの D.I.Y. な punk / avant-rock バンドと フランスのメジャーな alt rock バンドでは文脈かなり違そうだし、 並べて語るのもちょっと変かな、と思っていました。 しかし、まさかその数ヵ月後に Têtes Raides, Fragile で繋がるとは。

Têtes Raides, Mange Tes Morts を発掘していたら、 Mano Negra の1stアルバム Patchanka (Boucherie Prod., 101401, 1988, LP) も一緒に出てきました。をー。昨晩、Boucherie Prod. の話もしましたし、 ついでに Boucherie Prod. のアナログ盤レーベルを フォトログへ。

そういえば、Têtes Raides の新作 Fragile は、それまでの Tôt Ou Tard レーベルから Warner Music へ格上げ(?)になっていますね。ふむ。 Tôt Ou Tard のレーベル・カラーは好きなので、少し寂しく思いました。 去年、Tôt Ou Tard は、 所属アーティストをいろいろな組み合わせて共演させた企画盤 Various Artists, Les Artistes Tôt Ou Tard En Duo (Tôt Ou Tard, 8345 10542 5, 2005, 2CD+DVD(PAL/2)) をリリースしています。 Nouvelle Scène Française に含まれると看なされているような フランスのイキのいいミュージシャンが集結している好企画盤でしょう。 Fabulous Trobadors, Bombe 2 Bal, Têtes Raides あたりが入り乱れて賑やかな CD1 "Plutôt Tôt" の方が、SSW度高い CD2 "Plutôt Tard" より好みです。 Têtes Raides, Fabulous Trobadors & Bombes 2 Bal, "Méfie-Toi" がベストトラックでしょう。 DVDは録音の様子を収録したもので、ま、オマケでしょうか……。

[1524] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sat Jan 28 2:19:35 2006

dcsy さん、 ここ談話室でははじめまして。いったい Scéne Néoréaliste / Nouvelle Scéne Française に関する話題に興味ある方がどれだけいるのやら、と思っていたので、 コメントが付いてとても嬉しく思います。 それも、フランス語を読めるフランス在住の方からのコメントですし、 とても参考になりました。 自分がフランス語のテキストを読む場合、 大学時代に第三外国語で学んだ非常に基本的な語彙・文法、 英語での似た語彙からの類推、 あと、Google 言語ツールでの英訳、 あたりを併用して読んでいるので、読み落している部分が多いですし。 どうしてもちゃんと読みたいときは仏和辞典も使いますが、 それでも判らないことも多いですし。

Néoréaliste ("Neo Realist") が何に対して "Neo" なのかですが、 Cuisine Non-Stop: Introduction To The French Nouvelle Generation (Luaka Bop, 2002) のライナーノーツ (by David Byrne) でも、 具体的な歌手の名前は挙げられていませんが 1930s〜40sに興隆した "realist" というジャンルに触れています。 なるほどこの "realist" は「現実派」と訳されるのですね。 さらに、1950s〜60sにより文学的になる一方直感的でなくなり ("more literary and less instinctive")、 Baudelaire や Rimbaud の詩に曲を付けるよになったとも指摘しています (さらに1960s が "realist" の最後だったとも)。 確かにこういう所は、あまり日本では見られない特徴かもしれません。 あと、このライナーノーツでも、これらの "realist" に "Neo Realist" は類似しているという書き方はしていますが、 それに直接影響受けたという書き方はしていません。

確かに、Nouvelle Scéne は Scéne Néoréaliste と 同義というより上位の枠組といった方がいいかもしれないですね。 Néoréaliste の場合は "realist" 的な歌詞や音楽性の特徴も 含意しているように思いますが、 Nouvelle Scéne の方がもっと中立的で 普通に pop なのも含まれているというか。

Têtes Raides の Christian Olivier へのチャット式インタビュー記事 "Tchat: Restons Calmes" (Télérama 誌, 2005/12/19)、 面白いですね。この中で、 Tôt Ou Tard から Warner Music への移籍の経緯にも触れられています。 「Warner と契約したのは Tôt Ou Tard 設立より前のことで、 それから10年経ったので新しい挑戦をすることにしたんだ。 より大規模なプロモーションのために Tôt Ou Tard を去ったというのは、 間違った認識だよ。音楽万歳」って感じのことを言ってますね。 Fragile のクレジットを良く見ると P&C は Jamais J'Degueule (自身のプロダクション) となっていて、 Warner Music は配給ということのようです。 実は Jamais J'Degueule なのは前作 Qu'Est-Ce Qu'On Se Fait Chier! (2003) からで、 この時既に Tôt Ou Tard はプロモーションのみの関係になっていたようです。 そうだったのかー。

話は変わって、The Ex ですが。 残念ながら、 Singles. Period.: The Vinyl Years 1980-1990 (Ex, EX099D, 2005, CD)、 未入手です。"Human Car"、カッコいいですか〜。 いいかげんそろそろ買おうかしらん。 The Ex in Beautiful Frenzy (Moskwood, BP006, 2004, DVD(PAL/0)) と併せて注文しようと思いつつ、他にも聴きたいんがいろいろあって 後回しになってしまったままという……(言い訳)。