- 弦巻, 東京, Tue Oct 15 0:43:18 2002

今週末の音盤雑記帖の更新は、 France の vielle a roue (hurdy gurdy) を使った音楽の特集です。 今までいろいろ紹介しそびれていたりしたこともあって、思わず長くなってしまいました。

Patrick Bouffard は、Boucherie Prod. 時代のリーダー作もフォローしてたくらいで、以前から気になる vielle 奏者だったんですが、去年新作が出ていたのに今まで気付いてませんでした。 その新作 TranSept (Modal / Plein Jeu, MPJ111017, 2001, CD) は、 思わず全曲にコメントしてしまうくらいいろいろ演っていて面白かったです。統一感もあるし。これはお薦めです。 これに併せて、過去の3作、 Trio Patrick Bouffard, Revenant De Paris (Boucherie Prod. / Acousteack, BP9272, 1996, CD)、 Trio Patrick Bouffard, Rabaterie (Boucherie Prod. / Acousteack, BP9272, 1997, CD)、 Patrick Bouffard, Roots'n Roll (Boucherie Prod. / Acousteack, BP9273, 1999, CD) も併せて軽く紹介してあります。 をを、O'french music club でもされてたんですね。 ここは時々覗いてるつもりだったんですが…。

しかし、France の punk 〜 alt. rock/pop 系の独立系レーベルの老舗 Boucherie Prod. って潰れてたんですね。気付いてませんでした…。 けっこう好きなレーベルだったんですけどね…。 主催してたバンド Pigalle のサイトはまだあるようですが、特段何も書かれてないですね…。ふむ。 今年の頭に Les Ellesレヴューしたとき、Boucherie Prod. から Mohican に移籍したと書いたわけですが。 これは、Boucherie Prod. の倒産に伴うものだったのですね。 ということは、彼女らの名作1st、2ndも廃盤か〜。

TranSept をリリースしているレーベル Modal は、どうやら1990年代末には活動開始していたようですが、この TranSept のリリース同様、このレーベルにも気付いてませんでした。 カタログを見ると、伝統的な音楽様式に拘らないあたりに、かつての Silex レーベルを見るようです。 Silex も、Naive 傘下になってからも、それなりに活動してはいますが。かつての感じはもう無いように思いますし。 このレーベルの活動に期待したいものです。

で、Modal の最近のリリースで面白かったのが、 Gilles Chabenat / Edouard Papazian, Le Traite Des Songes (Modal / Plein Jeu, MPJ111025, 2002, CD)。 vielle と electronics のデュオです。もう少しテンション高めでも良いように思いますが。ま、これからの展開を期待して、ということで。

- 弦巻, 東京, Tue Oct 15 23:59:07 2002

昨晩の発言のフォローアップ。 France の punk 〜 alt. rock/pop の老舗インディー Boucherie Prod. ですが。 活動停止を伝える記事を発見。 この記事によると、2001年末をもって活動停止したということだそうです。財務的な要因が大きそうですが、倒産というほど酷い終わり方ではないようですね。 Les Elles の Mohican への移籍は、Boucherie Prod. の活動停止とは関係なさそうです、と、この点については訂正。 Garcons Bouchers と Pigalle のアルバムは、Island / Universal から再リリースされているようです。 他の作品の扱いはどうなっているんでしょうね…。 比較的有名どころだと、Gabriel Yacoub / Malicorne のアルバムは、Celluloid / Melodie から再リリースされているようですね。 ま、ほとんどは廃盤でしょうねぇ…。 Boucherie Prod. がやっていた独立系レーベル中心のオンライン・ショップ NetBeat も、やっぱり無くなってますね…。 Boucherie Prod. 時代の Patrick Bouffard のCDはもちろん、他にもけっこうここから買ってたことがあっただけに、ちょっと感慨深いです。

昨晩紹介した Patrick BouffardGilles Chabenat はともに1963年生で、比較的若い世代の vielle 奏者なわけですが。 彼らが初めて伝統的なスタイルに捕らわれない演奏を始めたわけではなく、 その上 (になるのかな?) の世代に、Valentin ClastrierDominique Regef がいます。 特に Clastrier はかなり好きで、参加作品をそれなりにてますが、リーダー作とか紹介ちゃんと紹介してないんですよね…。 Heresie (Silex, Y225402, 1992, CD) と Le Bucher Des Silences (Silex, Y225040, 1994, CD) を一つの箱に収めて廉価にした Valentin Clastier, Vielle A Roue Au Pays Cathare (Silex, Y225070, 1997, 2CD) は、2枚とも Michel Godard (tuba), Jean-Louis Matinier (accordion), Michael Riessler (clarinet) 等、free jazz / improv. な人たちと作った作品で、テンション高めでお薦めです。 Riessler のリーダー作にも多く参加していて、それもお薦めなんですが。

Clastrier の作品もそうですし、Bouffard や Chabenat の過去の作品もそうですが、伝統的な様式に捕らわれず folk 的な要素を現代的に演奏する France の音楽を追いかけていて避けて通れないのが、Silex レーベル。 伝統的なスタイルでの演奏を収めたCDもリリースしていたりしますが、world music 的というよりむしろ jazz / improv. との折衷という感じのCDをかなりリリースしていました。 全盛期といえる1990年代前半に同時代的に追いかけていたわけでないですし、音盤雑記帖では全然紹介していないわけですが。 こういうレヴューを書いていると、並行して1990年代の Silex の面白い録音も紹介したいなぁ、と思うところもあります。 ま、今や廃盤になっているものも多いので、今さら紹介しても仕方ないかなぁ、と思っているところもあるんですが。ふむ。

- 弦巻, 東京, Mon Oct 28 23:46:19 2002

さて、音盤雑記帖jazz / improv. ネタ、 Collectif Polysons, Folklore Moderne (Quoi De Neuf Docteur, DOC066, 2002, CD) のレヴューを載せました。 Quoi De Neuf Docteur 界隈の音源は、昔にいきつけのジャズ喫茶で聴かせてもらったことがある程度だったんですが。 これは、orgue の Pierre Charial と vielle の Valentin Clastrier が参加しているということで。 ま、期待以上じゃなかったですが、期待通りの音で楽しめました。Charial と Clastrier って、共に Michael Riessler との録音が印象的だったんですが。共演した録音って、意外に無いんですよね。ひょっとして、これが初めて? 参考までに、Charial に関連する過去のレヴューを。 Clastrier については半月ほど前の発言でも言及していますね。 TranSept が world music 的なら、Folklore Moderne は folk-influenced jazz / improv. 的。 ま、違いは以前より小さくなってきているように思いますが。僕は、どっちも好きです。

- 弦巻, 東京, Wed Oct 30 23:30:14 2002

この談話室で一ヶ月余り前にした France の "Neo Realist" な pop / rock に関するも既に流れてしまい、 遅れ馳せながら、になってしまいましたが。 そこでちょっと言及したバンドのアルバム、 Bumcello, Nude For Love (Tot Ou Tard, 8345 10501 2, 2002, CD) と、 Dupain, Camina (Virgin (France), 7243 812498 2, 2002, CD) のレヴューを書きました。 ちなみに、Dupain については、デビュー作 L'Usina (Virgin (France), 7243 849317 2 , 2000, CD) も、以前にレヴューしてます。

しかし、意図したつもりはないんですが、 Patrick Bouffard, TranSept (Modal / Plein Jeu, MPJ111017, 2001, CD) と Collectif Polysons, Folklore Moderne (Quoi De Neuf Docteur, DOC066, 2002, CD) に続いて、という感じで、vielle (hurdy gurdy) をフィーチャーした France 発の音楽の レヴューが続いてしまいましたね。 punk folk 寄りだったり、free / improv. 寄りだったり、pop 寄りだったり、と、アプローチは微妙に違うんですが。 今、こういう伝統的な音楽的要素を巧く消化して取り入れている音楽が面白い、 少なくとも、僕はそう感じている、ということもありますが。 vielle の音を聴きなれてないので、それがフィーチャーされているだけで 評価が甘くなってしまっている、というのもあるかもしれません…。

ところで、Bumcello の Cyril Atef といえば、Yves Robert (関連する) の新作 In Touch (ECM, ECM1787, 2002, CD) がもうすぐリリースされるようですね。 しかし、ECM からのリリースかぁ。 Atef が参加した Yves Robert のアルバムというと、 Ete (Deux Z, ZZ84133, 1999, CD) という guitar 入り 5tet 編成のがあるんですが。 これ、guitar と bass の整理が付いておらず、いまいちに感じていたんですよね (って、レヴューもしなかったんですが)。 これは、その前にリリースされた、リーダー作ではないものの Robert が参加している David Chevallier, (Music Is A) Noisy Business (Deux Z, ZZ84128, 1998, CD) にも感じていたことでもあるんですが。 そういう意味で、In Touchbass を抜いたのはよろしいんではないでしょーか。 electric guitar ではなく cello、というあたりが ECM らしいかなぁ。しかし、cello も Vincent Courtois なので、どんな音を出しているのか想像できてしまうような気もします…。ま、弦のみ trio の The Fitting Room (ENJA (MW), ENJ-9411-2, 2001, CD) は正直言っていまいちに感じていましたけど (レヴューしてません…)。その前の Translucide(ENJA (MW), ENJ-9411-2, 2001, CD) での、Yves Robert との絡みはけっこう好きだったですしね。 気楽に楽しめそうな気もします。ふむ。

- 弦巻, 東京, Wed Nov 27 23:33:40 2002

10月に vielle a roue (hurdy-gurdy) をフィーチャーした France の音楽を 立て続けにたわけですが (関連する発言もぎりぎり残ってますね)。 そのときに、伝統的な様式に拘らない vielle の演奏を収録した音盤として、 1990年代前半の Valentin Clastrier がらみの音盤にちゃんと触れておきたい、 とつくづく思ったのでした。 僕自身、1990年代後半に後追いで聴いたこともあり、 レヴューすることはなかったんですが。 検索していても、これといってまとまったものも見当たらないし。 というわけで、4 (5?) タイトルまとめてのレヴューを書きました。 ちなみに、関連する

Valentin Clastrier のリーダー作としては、 Heresie (Silex, Y225402, 1992, CD) と Le Bucher Des Silences (Silex, Y225040, 1994, CD) の2枚をそのまま1つの箱に収めた Vielle A Roue Au Pays Cathare (Silex, Y225070, 1997, 2CD) がお勧め。2枚でほぼ1枚分の値段という廉価で売られていますし。 Silex レーベルのCDも、配給が Auvidis から Naive になってから入手が困難になりつつありますが、 まだあちこちのオンライン・ショップでみかけるように思います。

あと、この頃の Clastrier の参加した録音で忘れてはいけないのは、 Michael Riessler の一連のリーダー作。 昔にもレヴューしてますが、共同リーダー名義の Valentin Clastrier / Michael Riessler / Carlo Rizzo, Palude (Wergo J, WER8010-2, 1995, CD) は特にお勧めです。まず一枚といったら、これでしょう。 Heloise (Wergo J, WER8008-2, 1993, CD) と Tentations d'Abelard (Wergo J, WER8009-2, 1995, CD) も悪くはないですが、他が気に入ってからでいいように思います。 あと、参考までに、Riessler がらみの他のレヴュー


vielle がらみとは少しズレますが、以前の発言で言及した Yves Robert, In Touch (ECM, ECM1787, 2002, CD) が届きました。予想以上に室内楽的で、うーむ、という感じです…。

そうそう、3rd アルバム Nude For Love (Tot Ou Tard, 8345 10501 2, 2002, CD) をレヴューした Bumcello の1stアルバム Bumcello (Comet, 008, 1999, CD) を、中古ジャンク盤漁り中に見つけて、750円で入手してしまいました。 IDM っぽいリズムパターンに1999年という時代を感じてしまいます。 Nude For Love の方が面白いかしらん。 ちなみに、Frence の abstract hip hop のミュージシャン Doctor L との共同制作で、 Doctor L のレーベル Comet からのリリースです。 他にどんなリリースがあるんだろうって、見ていたら、 Psycho On Da Bus が、とても気になりました。ふむふむ。

ちなみに、Bumcello の2ndアルバム Booty Time (Signature, SIG11016, CD, 2001) をリリースしているのは、 Radio France のレーベル Signature。 カタログを見ていると、他に Noel Akchote (レヴュー)、 Thierry Jousse (レヴュー)、 Luc Ferrari (レヴュー) の作品もあって、このシリーズも大変に気になります…。 あまり手を出す余裕ないんですけどね…。