2006年にリリースされた新録、
もしくは、ここ2〜3年の新録リリースで2005年に落穂拾いしたもの
の中から選んだ10枚。
#1
Lucía Pulido, Fernando Tarres & La Raza
Songbook II (Prayer)
(BAU, BAUCD1158, 2006, CD)
ブエノスアイレス (Buenos Aires, Argentine) の
jazz/improv のミュージシャン達による
guitar や saxophone の間合いを生かした音空間に、
在ニューヨーク (New York) のコロンビア (Colombia) 系の女性歌手が深い声で歌う、
汎ラテンアメリカ (Latin America) の未来の folklore。
自作曲 "Raza" での抽象的な音世界が美しい。
#2
Savina Yannatou - Elena Ledda
Tutti Baci
(Lyra, CD1095, 2006, CD)
Primavera En Salonico と Mauro Palmas による
伝統的な楽器を使いつつ自由な演奏をバックに、
ギリシャ (Greece) とサルディーニャ (Sardinia, Italy) の女性歌手2人が歌う
汎地中海の未来の folklore。
単なる顔合せ以上の意欲的な試みを感じる。
#3
Curtis Hasselbring
The New Mellow Edwards
(Skirl, 003, 2006, CD)
John Hollenbeck の叩き出すギクシャクした improv 的な展開や
反復感を強調したIDM的なビートにのって、
飄飄として少々ユーモラスな Hasselbring と Chris Speed の2管の演奏が、
とても楽しい。
#4
Lola Lafon & Leva
...Grandir À L'Envers De Rien
(Bleu Electric / Label Bleu, LB4010, 2005, CD)
accordion や percussion に東欧 folk の雰囲気を漂わせつつ、
音色を生かしつつ電子的に加工した立体的な音空間をバックに、
ベラルーシ (Belarus) 生まれでフランス (France) を拠点にする
女性歌手 Lola Lafon が、軽いメリスマや呟きにも緊張感を含ませ歌う。
Maria Tanase や The Rolling Stones, "Paint It, Black" のカヴァーに、
彼らのコンセプトがよく反映されている。
#5
Nik Bärtsch's Ronin
Stoa
(ECM, ECM1939, 2006, CD)
残響を抑えて鍵盤を感じるような高音域や華やか目に響かせる中音域の piano の音、
リズムを刻むような contrabass/bass clarinet のアタック音、
金属音などの硬質な音を多用する打楽器など、
個々の響きが反復を通して粗目のテクスチャとなっていく、人力 IDM だ。
#6
Sinesi-Moguilevsky
Sólo El Río
(Los Años Luz, LAL050, 2006, CD)
Sinesi の bass 的な低音の響も生かした guitar 演奏に、
Moguilevsky の弱い音や無音の間合いのニュアンスの生かした
clarinet の柔和な音や saxophone の明朗な音が絡む、
folklore 風味の jazz/improv だ。
そっと緊張感を忍ばせた掛け合いが気持ち良い。
#7
Zuzana Homolová
Tvojej Duši Zahynúť Nedám:
Ancient Slovakian Ballads
(Slnko, SZ0017 2 332, 2005, CD)
楽器音のテクスチャをさりげなく強調するような音加工や、
アンバランスさを強調したり間合いを感じさせたりする音作りによって、
スロヴァキア (Slovakia) のアンダーグラウンドな folk が甦っている。
(Chief Inspector, CHHE200605, 2006, CD)
bass、drums、electronics により IDM 的なビートを組み立て、
その上で Yobert の trombone の響と Elise Caron のスキャットか詠唱が
電子的に加工されながら掛け合い、
経済学者、精神分析医、財務分析専門家、哲学者の4人の発言が散りばめられる
「日常オペラ」だ。
#9
BassDrumBone
The Line Up
(Clean Feed, CF065CD, 2006, CD)
lost jazz 最盛期に結成されたアメリカ (US) の trio による、
来年で結成30周年とは思えない壮快な作品だ。
Mark Helias と Gerry Hemingway の繰り出すパワフルなリズムに乗って、
Ray Anderson がファンキーなフレーズからアウトな展開まで
自在に trombone を吹きまくっている。
(Chonta, CHON006, 2006, CD)
ハイトーンながら強く深みを感じる Lucía Pulido、
さらっと甘味を感じる Yarimir Caban、
folklore に映える渋い Joana Santos、
3人の女性歌手の特徴を巧く使い分けた、
ニューヨーク (New York) のコロンビア (Colombia) 系ミュージシャンたちによる
jazz 的な folklore の歌物だ。
次点
Matson Jones
Matson Jones
(2004; Sympathy For The Record Industry, SFTRI757, 2005, CD)
コロラド州フォート・コリンズ (Fort Collins, CO, USA) の学生バンドによる
2本の cello と doublebass の弓弾きのドライブ感に導かれる
女性歌手の歌声が凛々しい US indie rock だ。
番外特選
Konono No.1
live @ 六本木ヒルズアリーナ, 2006/08/25
アフリカ、コンゴ民主共和国 (DR Congo、元ザイール (Zaire)) の
DIY電化 likembe をフィーチャーしたグループの来日は、
日比谷公園野外音楽堂での 渋さ知らズ と Rovo と共演によるお祭りノリも悪くなかったが、
こちらの単独公演の方が素朴に楽しめた。
聴くというより淡々と踊っているうちに気持ちよくなるような音楽だった。