2005年から取り組んでいる不安定な摺動接点と揺らめく電球の光を使った作品の展覧会だ。 新作「Point Of Contact 3」は、 去年のプラザ・ギャラリーでの「Point Of Contact 2」の改良版だ。 電球の壁面への規則性を排する配置は「Point Of Contact 2」を引き継いでいる。 しかし、変わったのは摺動接点の設置箇所だ。 電球を配置した壁の前に、10cm角ほどの角材を10字に組み、そこに摺動接点を設置している。 それも角材の上面ではなく電球光の陰となる前面で火花が散るようにしている。 武骨な角材の作る十字の逆光シルエットに火花が散っている。 光揺らめく電球ではなく火花を散らす接点が主役であると、その配置が主張している。 接点火花が目立たなかった「Point Of Contact 2」は コマーシャル・ディスプレィ的な美しさがあったが、 接点火花を前景に持ってくることにより 武骨さ不穏さと美しさが均衡した作品になった。そこが良い作品だ。
一方、旧作を展示したスペースでは、床面にはトタン板を敷き詰めていた。 一個の電球の瞬きを部屋いっぱいに増幅させただけでなく、 飾り気の無いトタン板の質感も、作風に合っていて良かった。
また、今年11月に『接点』シリーズの作品を出展した Liverpool Biennial 2008 内の展覧会 Pop Up (by Jump Ship Rat) の映像を観ることができた。 St James' Cemetry 内の Huskisson Monument に設置されたインスタレーションだ。 Huskisson Monument は、リバプール (Liverpool, UK) 出身のイギリスの政治家にして、 広く報道された鉄道事故の最初の犠牲者として知られる William Husskison の霊廟だ。 石造りのドームの中、その像が置かれていた台座上に、 レールを接点に仕立て床に電球をランダムに配置した『接点』作品が設置されていた。 日暮れ後、入口や窓の格子越しに、石造りの建物の中が瞬き光って見えるのは、 ギャラリーでのインスタレーションには無い趣きを感じる。 鉄道の普及に尽くしつつ鉄道事故で死んだ Husskisson へのオマージュを感じさせる作品だ。 摺動火花や電球の不安定な瞬きそのものを堪能させるミニマリズムから、 サイトスペシフィックなコンセプチャリズムへ突き抜けた瞬間を見るような気がした。 そういうコンセプトを感じさせる所はアンチ=コンセプトという面が強かった タムラサトル らしく無いと思うところもある。 しかし、タムラをしてそういう作品を作らせてしまう所に ヨーロッパの街の凄みがあるのかもしれない。 それに、『接点』シリーズは、 こういうサイトスペシフィックなインスタレーションにも十分映える美しさがある。 日本国内でも近代化遺産となっているようなサイトを使って こういうインスタレーションを繰り広げていくと面白そうだ。