最近、すっかりエスニック・フェスティバルから遠のいていたのですが、 東南アジア旅行が思いのほか楽しかったので、久々に行ってみようという気分に。 そんなわけで、土曜の18時過ぎに、日の暮れた代々木公園へ。 ベトナムフェスティバルを覗いてきました。
このフェスが始まったばかりの2008, 9年に行きましたがが、 タイ料理の屋台が多かったりステージにも「メコン枠」があったりと、 タイフェスティバルに倣ったものの独自色を出せておらず、 ベトナム人で盛り上がっているという程の印象はありませんでした。 今回もそんなものだろうと思ってたのですが、 会場を歩いていてもあちこちからベトナム語が聞こえ、ステージ前はベトナム人だらけ。 日本にこんなにベトナム人がいたのかと。 会場規模や観客動員数はタイフェスに及ばないものの、 ステージ前の盛り上がりとアウェー感はタイフェス並になっていたような。 屋台にはまだタイ料理のものが混じっていましたが、ベトナム料理の屋台もずいぶん増えていました。
今年で6回目ということで、ベトナムフェスティバルも定着してきていることを実感。 もちろん、日越外交関係成立40周年ということで企画に力を入れ、 ベトナムの人気歌手や人気サッカー選手を呼んでいたということも、 この賑わいの一因かもしれません。 しかし、後で調べて気付いたのですが、 在留外国人統計 によると、タイ (40,130人) よりベトナムの (52,364人) の方が多くなっているのですね。 これを知って、ステージ前のあの盛り上がりも納得。 というか、今後、もっと盛り上がるポテンシャルを持っているとも言えるかもしれません。 ちなみに、米国が48,357人、ヨーロッパ全体で56,891人ですから、 国の規模を考えても、タイやベトナムから来ている人は多いのだなあ、と。
ちなみに、東南アジアで最も多いのは、フィリピンの202,974人。 ブラジル (190,581人) より多いんですね。 代々木公園では開催していませんが、横浜・山下公園で、 在日フィリピン・コミュニティー主催、フィリピン大使館の後援で、 フィリピン・バリヨ・フィエスタ が去年、始まりました。今年は9月28、29日。 これは、一度、在日フィリピン人の盛りあがりの様子を観に行きたいような……。
この連休初日の土曜は、昼前には日比谷公園へ。 日韓交流おまつり2013 をのぞいてきました。
一番の目当ては、世界無形文化遺産にもなった韓国の伝統芸能の綱渡り、 줄타기 (チュルタギ)。 野毛大道芸などで度々来日しており観たことはありますが、 天気も良いことだし、屋台料理でのランチがてら、公園でのんびり観るのも良いかな、と。 丸木を組んで高さ3mほどに渡した太綱の上での、綱渡りパフォーマンスです。 はじめはそろそろと静かに、次第に綱上での跳躍のようなダイナミックな技も。 単に綱渡りの技を見せるだけではなく、地上にいるもう一人の芸人とユーモラスな掛け合いも楽しめます。 今回は、장구 (チャング [杖鼓]、鼓形の太鼓)、피리 (ピリ [觱篥]、ダブルリードの縦笛)、금 (グム [笒]、横笛)、해금 (ヘグム [奚琴]、二胡に似た楽器) という4人編成による伝統音楽 (ジャンルはよく判りませんが衣裳からして宮廷音楽なのでしょうか) の生演奏付きで。 今回、のんびり観ていて気付いたのですが、基本的に掛け合いは韓国語なのですが、時折混ぜる日本語がいわゆる関西弁でした。 こういうユーモラスなやり取りに使う日本語は標準語ではなく関西弁、ということなのでしょうか。
日韓交流おまつりは 日韓国交正常化40周年の2005年以来毎年開催されているイベントですが、足を運んでみたのは、実は初めて。 2000年代後半によく足を運んでいたタイフェスティバルやブラジルフェスティバルとは、 日本との交流という面を出している点で、少々色合いの異なるフェスティバルではあります。 そんなことだけでなく、タイやブラジルに比べて他でも接する機会が多いということもあって、 優先度が下がりがちということもありました。
今回、自分が行ったときの人出がそれほどではなかったのは、初日の開会直後ということもあるのでしょうか。 しかし、屋台の数もそんなに多くは無かったので、夕方にもなると大いに盛り上がる、という程では無いのかもしれません。 このご時世か、残念なことですが、タイフェス等と比較しても警備が厳しめだったのも気になりました。
お彼岸ということで日曜は朝から墓参など実家方面の諸行事でしたが、 夕方には一段落ついたので、六本木ヒルズへ。 インドネシアフェスティバル 2013 へ行ってきました。 2008年以来、夏に代々木公園で 日本インドネシア市民友好フェスティバル [関連発言] が開催されていますが、 こちらは2010年からインドネシア大使館主催で開催されているフェスティバルです。 (この2つのフェスティバルの関係がよくわからないのですが、 2010年にNGO主催のフェスティバルを大使館主催へ移管したものの、 NGO主催のものも別に復活したということなのでしょうか。) 前に行ったのが5年前ということで、以前の会場の雰囲気がどうだったかもかなり忘れていて、新鮮に楽しむことができました。
17時頃、六本木ヒルズ・アリーナに着いたら、 沢山の観客が地べたに車座になってステージを楽しんでいました。 9月上旬のインドネシア・ジョグジャカルタへ行ったときに [関連発言]、 ジョグジャカルタの空港のロビーやその前のタクシー乗り場等の通路の地べたに沢山の人が座っているのを見て驚いたのですが、そのことを思い出しました。 いつものイベントであれば椅子が並べられているのに、それが撤去されていましたから、 地べたに座ることを想定してのセッティングなのでしょう。 これがインドネシアのスタイルなのかなあ、と、つくづく。 そんなスタイルということもあってか、ステージ前の観客はほとんどインドネシア人のようでした。
ステージではバリ島往復航空券などが当たる抽選会などをやっていて、 その時こそ日本語混じりでMCをしていました。 しかし、来年の大統領選挙の日本での投票方法に関する告知をしたり、と、 明らかに在日インドネシア人向けの内容もあったり。
で、17時半頃から、女性歌手 Kikan Namara のコンサート。 Cokolat という1996年結成のインドネシアのロックグループで2011年まで女性ボーカリストで活動していたとのこと。 Wikipedia によると Cokolat は Frente, Alanis Morissette and The Cranberries に影響を受けていたとのことですが、 今回のバンドを従えての Kikan のステージも、歌詞こそインドネシア語でしたが、 音楽は1990年前後の英米の indie/alternative 色濃い pop rock という感じでした。 そして、そんな音楽で観客も大いに盛り上がっていました。 ステージ前はちょっとしたモッシュに近い状態。 2008年の時はインドネシア人に交じって dangdut を踊ったりしましたが、 今回はステージ前に突入することが躊躇われるほどでした。これはすごい。 にもかかわらず、途中でバラードになったとたん皆下に座り出したという事にも、驚きましたが。 もちろん、途中のMCもインドネシア語のみで、日本語通訳は一切無し。 最後はインドネシアの国歌 “Indonesia Raya” の斉唱を繰り返して盛り上がっていました。
2008年の時も盛り上がっていたと思いますが、それ以上の盛り上がりを感じるフェスティバルでした。 インドネシアフェスティバルでもここまでアウェー感が堪能できるとは予想していませんでした。 ステージ前の盛り上がりだけなら、タイフェスティバルや先週のベトナムフェスティバルにも負けていなかったように思います。 さすが、東南アジアではフィリピン、ベトナム、タイに次ぐ規模の在留者がいる国です。
負けている点を挙げるとしたら、やはり屋台でしょう。 今回出ていたインドネシア料理の屋台はちゃんと美味しいものでしたが、数が圧倒的に少ないのです。 六本木ヒルズが会場ということで代々木公園のようには屋台を並べられないという事情もあると思いますが、 タイ料理やベトナム料理ほどには日本に根付いておらず、東京近辺に料理店が少ないということもあるのでしょう。 インドネシア料理も好きですし、屋台と料理のバリエーションが増えれば、フェスティバルはもっと楽しくなるだろうなあ、 なんて思ってしまいました。
日曜は最高気温30℃の暑さだったのですが、翌月祝日は最高気温が25℃に達しない涼しさ。 昼に近所を出歩いたときも長袖にしたほど。 疲れが溜まっていたところに急な気温の変化がきて、体調を崩してしまいました。 そんなこともあって、月曜は大人しく休養に努めたのでした。
土曜は、午後少し遅め14時半頃に横浜山下公園へ。 フィリピン・フェスティバル (Philippine Festival - Barrio Fiesta) 2013 に行ってきました。在日フィリピン・コミュニティーの主催、大使館後援で去年から始まったフェスティバルです。 在留外国人の数では約20万人 (2012年) とブラジル人に匹敵する規模にもかかわらず、 東京近辺にフィリピン料理店も少なく、その存在が見えないのが気になっていました。 (この背景について自分は疎いのですが、 河原 俊昭 「言語とアイデンティティ―日本に住むフィリピン人を中心に―」 (『接触場面・参加者・相互行為 接触場面の言語管理研究 vol.9』, 千葉大学大学院 人文社会科学研究科, 2011) など、参考になります。) そんなこともあって、足を運んでみました。
会場は在日フィリピン人おぼしき人が圧倒的で、日本語より英語やフィリピン語での案内が多く、 確かに、アウェー感はあるのですが、 他の東南アジアの国のフェスティバルとかなり雰囲気が違いました。 年齢層が高め、それも、女性が圧倒的に多いのです。 屋台/ブースもフィリピンへの送金ブローカーや電話・通信会社のものが半分近く。 会場作りにあまり金がかかっておらず、手作り感が強い雰囲気。 屋台/ブースの装飾にアジアを感じるな意匠も使われておらず、 集まる人々のファッションにしてもむしろラテン風を思わせるものでした。 Club Filipina Magazine という在日フィリピン人向け女性雑誌(?)らしきもののブースがあって、 その表紙の女性のセクシーな写真に、内容はいったいどんなことになっているのかちょっと気になったのですが、 「モデルと一緒に記念撮影、どうですかー」という声に引いて、サンプル版を貰い損ねてしまいました。 こんな感じで、1時間余り会場をふらふらしつつその様子を眺めながら、 装飾や服装のセンスにしても、料理にしても、 スペイン〜アメリカ植民地時代の影響は強かったのかな、と。
ステージではフィリピンの様々な民族の舞踊のようなものもやっていましたが、 男性ラッパーのライブ、女性コメディアンのトークなど。 これはフィリピノ語がわからないとかなり厳しい……。
料理の屋台の数が多くないうえ、オペレーションもイマイチで、行列ができて買うのに待たされがち。 昼過ぎちょっと遅めに行ったことももあって、 Abodo など狙っていた料理が軒並み売り切れで、残念なことに。 言語・民族はマレー系と言われるものの、マレー系風らしい料理はほとんど無く、 炒め春雨や揚げ春巻、空芯菜炒め物など中華料理の影響を感じるものか、 バーベキューやシチュー様の煮物などスペイン〜アメリカの料理の影響を感じるもの。 大味な後者より前者のほうが美味しく感じてしまうのは、舌が慣れていることもあるかも。 屋台を出している店を見ると、料理店というよりケータリングをメインに営業してる所が多め。 なるほど、それではフィリピン料理店をあまり見かけないわけだ、と。 ちなみに、自分が食べた屋台の一つは、六本木の New Nanay's という店のもの。ネットの口コミを見ると、フィリビン人客中心のかなりディープな店そう。 一度、足を運んでみるか……。
この秋、ベトナム・フェスティバル [関連発言] や インドネシア・フェスティバル [関連発言] へ行って タイ・フェスティバル同様に若者が男性も女性も元気に盛り上がっている様子を見て、 日本人向けに文化や観光資源をアピールするためのイベントとしてだけでなく、 留学や就労で日本に在住している人たちが自分たちの文化を楽しみエスニック・アイデンティティを確認するためのフェスティバルとして この手のフェスティバルも定着しつつあるんだなあ、と感じていました。 そして、正直に言えば、このフィリピン・フェスティバルにも、それに連なるようなものを期待していた所もありました。 しかし、実際に行ってみると、こちらはかなり雰囲気が異なり、 自分たちの文化・アイデンティティのプレゼンテーションも控えめ、もっと生活感のあるフェスティバルでした。 日本に在住している東南アジアの人たちといってもこういうあり方もあるんだなあ、と、そんな発見もあったフェスティバルでした。