夢の城
― 登場人物 ―
桜の里（五）
― 2. ―
主要登場人物
- 藤野の美那
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玉井の市場町に住む少女。十六歳（数え年、他の登場人物も同じ）。事情があって、市場の老舗の葛餅屋「藤野屋」に預けられ、育てられている。徳政（債権放棄令）に名を借りた柿原党の策略から同門の銭屋の元資を救うために、浅梨治繁の門下の兄弟子の隆文と、銭屋で働く娘さわといっしょに、牧野郷に借銭の取り立てに来ている［何をなすべきか（二）］。柿原党の一員として村に来ている長野雅一郎の策略で村人から水盗人疑惑をかけられている［桜の里（二）下］。
- 長野雅一郎
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玉井郡で町のすぐ北に隣接する中原郷中原村の地侍（零細地主 兼 武士）。わがままな名主の中原克富の命で、克富の息子 範大とともに、村西兵庫を援助し、町の銭屋衆による取り立てを失敗させるために牧野郷に来ている。村に来る途中で村西兵庫からこの企てが柿原党のものであることを打ち明けられた。藤野の美那とは玉井川の水の利用権をめぐって悶着を起こしたことがあり［春の朝］、それを理由に藤野の美那を水盗人だとしつこく言いつづけている。
- 中橋渉江
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牧野郷の人びとから知恵者として信頼されている牧野郷川中村の住人。二郷（牧野、森沢）七村合同の寄合の司会進行役を担当している。
- 鍋屋の隆文
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市場の鍋屋で働いている。美那や元資とともに浅梨治繁に剣を習っており、現在の弟子のなかでは一番上である。藤野の美那とは意地を張り合うことが多い。髪を伸ばして髯を生やし、異様な風体をしている。藤野の美那、さわといっしょに取り立てに来ており、三人のなかではいちおうこの隆文がリーダー格である。
- （銭屋の）さわ
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市場の娘。市場の銭屋で働いている。駒鳥屋のあざみ、宿屋のさと、鋳物屋のみやなどと友だち。藤野の美那、鍋屋の隆文といっしょに借銭の取り立てに来ている。［桜の里（四）下］
- 村西兵庫助（兵庫）
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牧野郷川上村の村人。村のなかでは大きな屋敷を持っているが、そのぶん借銭も多く、借銭の取り立てを逃れるために中原範大・長野雅一郎らを村に招き入れた。柿原党と関係がある。「村西一党」というのは、この兵庫助に大木戸九兵衛と井田小多右衛門を加えた三人。
- 中原範大、安芸守
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中原郷の名主 中原克富 の一人息子。まだ元服したばかりで若い。長野雅一郎とともに柿原党の企てた工作のために村に来ている。
- 安総（安総尼）
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川上村の村長 川上木工国盛の娘で出家して尼になっている。俗名は「お総」。まだ若く、ぽっちゃりした丸顔の娘である。中橋渉江に仕えているらしい。
- 井田小多右衛門
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村西兵庫助の仲間になっている村人。藤野の美那、鍋屋の隆文、さわが川上村にやってきたとき、村西兵庫・大木戸九兵衛といっしょに田圃にいた［桜の里（一）］。
- 村長たち
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牧野郷の川上村と川中村、森沢郷五村（村名は出てこない）の村長。川上村の村長は安総の父親 川上木工国盛。他は名は不明。
- 範大と雅一郎の小者たち
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二人に従って中原村のそれぞれの家から来た従者。
話題としてのみ登場する人物
- 中原克富、造酒
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玉井郡で町のすぐ北に隣接する中原郷中原村の郷名主。長野雅一郎の主人。村西兵庫助の要請に応じ、息子の範大とともに雅一郎を牧野に派遣している［桜の里（二）上］。
- 「師匠」、浅梨治繁、左兵衛尉
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藤野の美那と隆文の剣術の師匠。正興・正勝に仕えた春野家の旧臣で、「牧野の乱」事件にも反乱側に参加した。現在は隠退し、仕官していない武士や市場町の町人の子弟に剣術を教えている。非常に荒っぽい教えかたをする。
- 榎谷の志穂
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藤野の美那が長野雅一郎に水汲みの件で絡まれたとき、美那を救ってくれた娘。雅一郎と小者たちを飛礫で打ち倒した［春の朝］。
- 春野定範、越後守
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現在の守護代。要するに玉井三郡の守護大名である。正興の息子。兄正勝の没後、正勝の息子の正稔が守護代の地位を継ぐことが決まったが、定範は正稔とその姉妹を捕えて守護代の地位を奪った。藤野の美那は、植山平五郎を案内して安濃社に参詣したとき、この守護代に会っている［安濃詣で（三）］。
- 市場の長者
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市場町の自治組織の世話役。
- 杉山信惟、左馬允
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春野正興のころからの旧臣。「牧野の乱」事件のときは挙兵に参加しなかった。現在も定範に仕え、評定衆（家老）に参加している。定範の突発的安濃社詣でに随行した場面で登場している［安濃詣で（二）］、［安濃詣で（三）］。
- 春野正興、民部大輔
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玉井春野家初代。もとは京都に住んでいた貴族で、玉井三郡を領地としており、自ら領地経営のために下ってきて三郡を平定した。現在の守護代越後守定範の父親でもある。
- 桧山興孝、織部正
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港の名主で、「牧野の乱」に首謀者として参加し、捕らえられて処刑された。息子の桃丸は現在も港の名主を務めており、藤野の美那や養い親の薫と知り合いである。
- 牧野興治、治部大輔
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牧野郷の名主。定範が守護代の地位を奪ったとき、その定範に対して決起し、「牧野の乱」を起こしたが、桧山興孝らとともに捕らえられて処刑された。牧野郷の村人たちはいまでもこの興治を慕っている。
- 森沢為順、判官
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牧野の隣郷 森沢郷の名主。「牧野の乱」に参加。為順の名はここが初出で、ここに出てくる以外のことはまだわからない。